経験値が足りないから 貧弱ステータスになるのです☆
「まぁ、とりあえずは徹底指示なのです☆ ほら、ガンガン書くのですよ! とりあえず量を書いていればそこそこ上手になるんじゃないですか? たぶん☆」
妖精はとにかく量を書くことの大切さを汪真に教えました。
「おい待ってくれよ! こう、テクニック的なコーチとかじゃないのか?」
「ハァ? キャラクター表100選とか、最強プロットがナントカというヤツですか?」
妖精のやり方に、汪真は疑問を持って問いかけていきました。
勉強熱心な汪真の思いに胸を撃たれた妖精は、汪真に向かってニッコリと笑いました。
さすが妖精です。小柄で華奢な身体であり、柔らかな微笑みが似合っています。
「死んでも教えるかよ屑め。1本くらい長編を完結させてから言いやがれ☆」
妖精特有のほにゃほにゃしたあたたかみのある声で、妖精は助言をわたしました。
「アンタは書き方以前に物書きとしてのステータスが超絶的に不細工なのですよ☆ 貧弱レベルの村人職の癖に、勇者を気取ってるんじゃねぇーですよ☆ 凡人なら努力くらい我慢しとけよ この駄目人間めっ☆」
そして妖精が笑顔で説明していきます。ゲス顔じゃなくて、笑顔です。おそらく。
「マジメな話ですが、『20時間の法則』というのがあるのですよ。これは気になる人がいましたら、あとでネットで調べれば詳しく分かると思います。実際に本にもなっているものなのです。興味があったら買ってみると良いですよ」
妖精が真摯に話していきます。本当に真面目に話しています。ビックリです。
「内容は要約すると、20時間程度の鍛錬があれば、他人に見せられるレベルになれるという訳なのです。もちろん、大きく日にちを空けないで継続して勉強した方が良いですよ」
「へぇ、それは面白いことを聞いた。だけど、20時間って毎日1時間だとして、たまに休んだらだいたい1ヶ月かかるのか。もっとこう、裏技みたいなやつはないの?」
「ハァ? そんなのがあったらすぐに流行ってみんながやって、みんながアンタと同レベルになって意味が無いじゃないですか。差がつくから価値があって、だからこそ努力するべきなのです。努力の大切さすら分からない アンタなんか生きてる価値が無いですね。今度から食べ物を食べないでください。むしろ食われる側の食べ物に失礼なのです。せいぜい、駅で配ってるポケットティッシュだけ食って生きていればいいです」
妖精はそう言って、20時間以上の鍛錬の必要性を、とても優しく諭しました。
「とにかく20時間をやること。解釈は色々とありますが、わたし的には努力で他人と差が出るのは20時間程度なのかなと思ったわけなのです」
「だけど20時間で本当に上手になれるのか?」
妖精は、優しく笑いました。ひたいにピキリとムカムカマークが浮かんで見えたのは気のせいです。
「はぁ……。なんとなく感覚で分かりませんかねぇ。ゲームのプレイ時間を数えたことがある人なら分かると思いますが、例えば小型ゲーム機のプレイ時間は30時間あればストーリーでラスボスを撃破できる程度の時間です。その計算だと20時間あれば7割程度をクリアしているので、それだけクリアしていれば かなり操作を覚えていますよね。操作するのに手馴れた感が出るのはそれくらいの時間のなのです」
「下手をしたら20時間でクリアもできるしな。できない人はもっと長くなるかもしれないけど」
うんうんと妖精が頷いて同意します。2人の心が通じ合った奇跡の瞬間でした。
「まぁ、ぶっちゃけ個人の感性による部分で時間の前後はありますよ。でも、最低でもそれくらい頑張らないと芽が出ないと分かっていれば、初心者でつまづくことは無くなるはずなのです。2、3日書いて、アクセス数で嘆いて才能が無いなと欝になる必要は無くなります。だって、ゲームをクリアできる時間に達していないのですから」
「じゃあ投稿するよりも先に、20時間くらい名作の模写をするとかそういうことをすればいいのか?」
「アイディアとしては悪くないですが、初心者の回答としてはハズレですね。模写は非常に力がつきますが、手慣れた作家でもモチベーションが潰れやすい苦痛な作業なのです。模写から執筆に入るとモチベーションが下がりますので、個人的には勧めづらいですね」
「でも、力がつくならやりたいな」
「ぶっちゃけ、初心者の頃は何をやっても経験値になってレベルアップしやすいのです。テキトーに短編を書くのがおすすめですね。そこそこ書いて成長が伸び悩んで困ったときに模写を練習するかどうかを意識するくらいで調度よいと思います。最初ですので、まずは継続することが大切なのです。感覚論ですが、好きな物語を20時間分ほど書いていればそれなりに身につくと思いますよ」
◇◇◇
『まっちーの助言②』
20時間くらい書いてみよう。