感想を書けないから見る目が弱いのです☆
汪真くんが今日も小説を書いていました。それを妖精は優雅にお茶を飲みながら見守っています。
「う~ん! シェイクプリンの缶ジュースは革命的なのです☆ これからのプリンは食べ物でもあり、飲み物でもある。認識を改めなければならない時代になったものですねぇ~」
本当はお茶ではありませんでした。自動販売機の端にたま~に売っているプリンのジュースでした。
「前から思ってるけどさ、どうやってそれを買うお金を稼いでるんだよ」
「企業秘密なのです☆」
良い女にはミステリアスな秘密が付きものと言われています。妖精はモチロン素晴らしいですので例外ではありませんでした。
「今日は気分がよいですので、特別に教えちゃいますよ。小説が短期間に上手になる方法です☆」
「マジかよ!?」
汪真は異常事態に戦慄しました。基本的には面倒くさがって教えないまっちーです。しかも、短期間的なハウツーはいっさい嫌っているのを感じていましたので、それを教えるという意味でも二重に衝撃を受けていました。
「小説を上手に書くコツです。それは……《感想を書く》ことなのです☆」
「トレーニングとかじゃないのか?」
「感想を書くことがトレーニングになるのですよ」
まっちーがパチンと指を弾くと、オウマの目の前に半透明の黒板が現れました。いきなりの近未来設定にオウマは目を白黒させました。
「な、なにこれ?」
「電子妖精黒板ですよ☆」
よく考えてみればコイツは何やっても不思議じゃないというフリーダム過ぎる設定だったことをオウマは思い出しました。オウマは何も指摘せずに、ただ疲れた息を吐きました。
「はぁ。別に驚くことでもなかったな。驚くことなんだけれども。それで、なんか書いてあるぞ。え~と……」
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感想を書くメリット
①客観性が身に付く
②ボキャブラリーが増える
③交友の幅が広がる
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どうやら、まっちーが3つのポイントをおさえて説明してくれるようです。
「この①の客観性は本当に身に付くのか?」
「感想の書き方によりますがけっこう力が付きますよ。もっと解りやすく言うと、小説を書く側と、小説を見る側がいてそれぞれ目線が違います。書く側は常に書いているのでなんとなく感情移入できますが、見る側に関しては書くのに時間を取られすぎて感情移入がおろそかになっていることが多いです。なので見る側に意識を向けてみたほうが良いというおはなしです」
「だけど何冊も小説を見てきたから書こうと思ったんだ。だから今さらに書く側の心を知るなんてどうかと思うけど? けっこう見る側の自信はあるぞ」
「書き始めて小慣れた人なら分かるお話だと思いますが、書いてからはハッキリと書く側と見る側の視点が違うことに気付いたのではないでしょうか? 両方を知っている感性で見る側にまわってみると良いという意味です。アンタのいう何冊もなんて楽しさを感じることしか考えてなかったでしょ? 勢いだけで見ているだけなのにテクニックが身についていると信じているなんて自惚れすぎですよ☆」
書いていると面白さを表現するにはどうすれば良いのかと考える書く側の感性が身についてきます。なので書く側の感性を持った状態で、見る側にまわるとその作品の違った側面が見えてくるということをまっちーは説明していきました。
「そのためには感想を書く小説の《良い点》と《悪い点》を考える必要があります。これは、小説を見る目を養うためのトレーニングにもなるので《一石二鳥》なのです☆」
「自分の小説の良い点と悪い点を見直す力が得られるってことか?」
「その通りです! 続けて②はボキャブラリーが増えるです」
「これはどういうことだ?」
「自分が感じたことを文章として落とせるのは意外と難しいのです。言葉を生み出す力を得られるということですね」
感想を書くためには感じたことを言葉で表現する必要があります。なので、その感情を文章で表現するにはどうするべきか。また他人へ伝わるように加工するにはどのような単語を使えば良いのかなど考える力が身に付くので、結果的にボキャブラリーの量が増えていきます。
「誉めるにしても、注意するにしても、ニュアンスの細やかな違いなどがあります。なので感想トレーニングで何回も誉める言葉を書いていけば、例えば自分の書いたキャラクターを誉める描写がほしいときはスムーズに書くことができますよね」
「魅力を伝えるには地の文章でキャラクターを誉める描写が必要だし、誉める力というのも大事なんだな」
「その通りです☆ ボキャブラリーが増えますし、キャラクターの魅力を引き出す描写も上手になってくるのでこれで《一石四鳥》ですね。最後に③の交友の幅が広がるというおはなしです」
「なんとなく分かるかもしれない。メッセージのやりとりみたいなものだから、コミュニケーションみたいだからね」
「丁寧な人だと感想返しをしてくれますよ。こういったことが繋がるきっかけになりますので、積極的に感想を書いた方が良いということですね。ずっと書いていると自分の世界に入りすぎて客観性が無くなってきている人もたまにいますので、そこらへんのバランス調整もできます。繋がりができて、感性のバランス調整もできて、《一石六鳥》の良いこと尽くめなのですよ☆」
感想を書くことが良いことだと分かったオウマですが、渋い顔をして悩み始めました。
「だけど感想の書き方って分からないんだよなぁ。知らない人にいきなりメッセージを送るってことだからちょっと不安だし」
「あなたは自分の小説に感想がほしいですか?」
「ほしい」
「じゃあ、分かってるじゃないですか。あなたの周りのユーザーも基本的に欲しがっているのです。よっぽどの苦情じゃないかぎり、基本的にはウェルカムです☆」
「失礼の無いように丁寧に書きたいけどどうすればいいのか分からないうえに、何を書けばいいのかも分からないんだよなぁ……」
「最初の一歩は怖いうえに感想を書きたいと思った作品でしたら大切に扱いすぎて躊躇するかもしれませんからね」
「そもそも型が分からないから書きようが無いんだよな」
「そこで、妖精クオリティーのテンプレートを紹介です☆ 特に難しい良い点と悪い点《今は気になる点になっています》の書き方を紹介しましょう☆」
「それは便利だな! そのままコピーペーストしてもいいか?」
「結局は自分で感じたことですので、最終的には自分で編み出した方がラクだと思いますよ。なので、いつか捨てる日が来る練習用として考えて使ってみてください。補助輪みたいなものですよ」
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感想の書き方
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《良い点》の例
軽快なテンポで読み心地が良く、描写がとても胸にきて素敵でした。○○のキャラが××のシーンがとても可愛くて好きになりました。また最後の○○のシーンは最初の××と繋がっているところにプロットのセンスが感じられて衝撃をうけました。
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解説します。描写を誉めるとひとくちに言っても詩的なセンスの上手さもあります。軽快なテンポが心地良い意味での上手さもあります。それがどのようにあなたの心が刺激させたのかを書いてみてください。またキャラの魅力、ストーリーのプロットあたりは書きやすいかもしれません。
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《悪い点》の例
テンポが悪かったので詰まった文章に見えて読みづらかったです。
また誤字がありました。
《なろうのルールを無視するからボッチになるのですよ☆》にて、
『~(略)~ここは日本だから さっさと靴を脱げファッ○ン!』→《ファ○キン》の誤りではないでしょうか?
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解説します。だいたいが良い点の逆でしょう。あえて言うのなら《小説家になろうのルールを守ること》、《誤字脱字の指摘》あたりが良い点とは違った書き方ができるかもしれません。
注意すべきは、《誤字がありました》と言うだけなら、作者はどこに誤字があるのか分からないためまた一話から読み直さなければなりません。何話のどこの部分と書いてくださると丁寧で好感がもてる指摘になります。
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「誤字脱字って指摘しても失礼じゃないのか?」
「全員ではありませんがだいたいの人が喜んでいますよ。というよりも悪い点《気になった点》に関しては特に重要なのが誤字脱字だったりしますしね」
特に重要なのは《誤字脱字の指摘》です。これは書いている側にはとてもありがたいメッセージだったりします。たったひとつの誤字でせっかく小説に感情移入できていたのに現実に戻って途切れてしまうのはとても惜しいことです。
例えばこの話の執筆は6時間以上かかりました。6時間分の労力をたった一つの誤字で失うのは書いている側としては非常に悲しいことでしょう。
「自信がなくて勘違いの指摘をするかもしれないけど、指摘してもいいのかな?」
「実は、それはそれでありがたいのですよ。勘違いしやすい文脈を作っていたということなので、修整する必要があるということが分かりますからね。弱点が補強されるきっかけになるのでわりとそれはそれでオッケーなのです☆」
「指摘されたら嫌な人はいないかな?」
「もちろん、指摘されて嫌がる人もいますよ。でも、体感的にかなり少数ですのであまり気にしないほうが良いかと思います。気になるようでしたなら、メッセージ機能で感想を送ってあげると良いかもしれませんね。指摘されて怒る人は感想欄という外から見える場所に残るから嫌がるようです。なので、外から見えないメッセージ機能も選択としては有効かもしれませんね」
「いろんな書き方があるんだな」
「あとは感想の返信を見るのも鍛錬のポイントですね。自分の書いた文章が相手にどのように伝わったのかが分かるというのは物書きとしてはとても参考になります。一石七鳥ですね☆」
「かなり良いことがあるんだな。じゃあさっそくどこかに書いてみようかな」
「ぜひトライしてみましょう! 感想を書くのに自信が無い人は、この作品。《読みやすいストーリー形式! 考えずにスラスラ読める小説講座》で練習の感想を書いて送ってみても良いかもしれませんね」
さすが妖精です。世界観をぶっ壊す 素敵な捨て身のオチでした。
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『まっちーの助言⑪』
感想を書いたことがある人は気になる作家へ感想を送ろう。書いたことが無い人は実際にこの小説に感想を書いて送って練習してみよう。