表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神の詩7 - 嵐雨の銀鈴  作者: 白楠 月玻
七章 霧雲
PR
39/79

七章五節 - 龍鱗と炎狐

「はぁ……」


 しばらくにらみ合って、先に目をそらしたのは与羽(よう)だった。


「萎えるわ」


 大斗(だいと)辰海(たつみ)に対して使う単語を口にする。辰海といるとやる気をそがれる気がする。闘争心が萎える。


「そう? 僕はかなり本気で言ってるんだけど……」


「だからだよ」


 辰海の大げさな言葉を聞くと、自分の悩みが非常に些細なものに思えてしまう。


「かなり悩んどったはずなんだけどなぁ……。まぁ、あんたが言った言葉は『逃げ』よね。何の解決にもなってない」


「そうだね。本当にどうしようもなくなった時の――、最後の手段だよ。僕じゃ、今の君を慰められないから。

 確かに、物見遊山気分で君を見ようとしている人や君の見た目に驚いたり、変って思ったりする人もいると思う。いや、思うじゃないね。確実にいる。本当は、そういう人たちを片っ端から叱り飛ばして、改心させて、謝罪させるべきなんだと思う。でも、ここは中州じゃないから、あまり騒ぎ立てて対立を招くべきじゃないし、そうでなくても人の心を変えるのは難しい。幼馴染ひとり、うまく元気づけられないしね」


 辰海はそっと与羽のほほに手を伸ばした。龍鱗の跡がある左ほほだ。


「辰海?」


「別に君を責めてるわけじゃないよ。全部僕の力不足。逃げ道しか用意できなくて、ごめん。でも、何があっても、僕は君の味方だよ。それだけは信じて欲しい」


 そうわずかにかげのある笑みを浮かべて、そっと与羽のほほをなでる。

 親指の爪大のかすかなへこみを一つ一つ親指の腹でなぞった。

 与羽は辰海から視線を()らした状態で、それを受け入れている。

 辰海はもう片方の手を与羽の腰に回して、やさしく抱き寄せた。心のうちにある熱い思いをできるだけ排して――。乱舞が与羽にするように――。兄が妹を、もしくは友人を慰めるようなつもりで――。


 そのかいあってか、与羽は素直に辰海に身をあずけてくれた。

 どこかぎこちなさは残っているが、先ほどよりは格段に落ち着いている。

 辰海は最後の仕上げに、与羽の耳元に唇を寄せた。そっとやさしい言葉を吹き込むために。


「前にも言ったかもしれないけど、君の髪も目も龍神の血もとってもきれいだよ」


 その言葉を理解したらしき与羽が、かすかに辰海の着物を握った。縋り付くように。助けを求めるように。単に辰海がそう感じただけかもしれない。頼ってほしいと。


 ――まぁ、頼られなくても、一方的に守るつもりだけど。


 そんなことを思う自分に苦笑しながら、辰海は与羽の体に回した腕に少し力を込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ