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英雄にはならなかったとある冒険者  作者: 二月 愁
第一章 英雄の帰還
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幕間 多様な英雄像:笑わない少年

昨日のPVが1000を超えた記念の幕間です。

物語にはたいして関係のない話です。

 冥王が人界を支配し始めたころ、少年は生を受けた。

 しかし少年は独りだった。誰からも愛情は注がれず、むしろ存在を認識されないかった。暗黒街――――少年はそこで独りで生きていた。誰にも助けられず、生きるために必死だった。

 この時から少年の心は破綻し始めていた。それでも人間らしい感情は持ち合わせていた。


 それから人間には悠久ともいえる時間が流れた。

 人界では、人族と冥王の手下たちの熾烈な戦いが起こっていた。各地で大なり小なりの争いが起き、大地は荒廃の一途をたどっていた。

 激しい戦闘の最中さなか、とある冒険者の噂が流れる。曰く、神々しい姿となり悪鬼羅刹を討ち勝利へ導く救世主。

 各地の戦場に現れては冥府の者どもを討ち、血の雨を降らせていた。人々はかの者をいつしか勇者と呼んでいた。

 勇者と呼ばれる少年は、常に最前線で武器を振るい、血に塗れ染まっていた。その姿を見た者は"冷血な勇者"や"無常なる勇者"と恐れを抱いた。少年の身なりのくせに命を奪うことに些少の躊躇いもせず、顔色一つ変えない姿が人には見えなかった。あどけなさが残る顔には感情が無くなっていた。ただ分かるのはあどけなさが残るということだけで、顔が思い出せない。

 勇者とは謎の存在にもなっていった。


 それはともかく、少年に感情が無かったわけではない、ただ運命さだめが少年の感情を奪った。

 愛情が与えられず、血を嫌というほど浴び、命をひたすら奪った。少年は優しいが故に笑顔を失った。

 少年は笑っていたと話すかもしれない、だが実際は笑っていなかった。その顔に笑みがこぼれることは決してなかった。旅の相棒ですら笑顔を見ることは無かった。

 

 笑わない少年――――それは後に英雄と呼ばれる者の一面である。

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