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【第2章 ここって、異世界ですか?】

なんてことだろう…。目が覚めたら、目の前に、というか私の部屋の前に朱夏がいた。

昨日まではいなかったはず…。というか、年頃の娘の部屋になぜ男性をあげているの、お母さん!


「ゆいー。朱夏君待ってるわよー。早くしなさいー。」


いやいや、早くしろとかそういう問題じゃないでしょ!なんで、いるの!


「結衣。早くしろ。遅刻するぞ。」


我に返って時計を見れば、時計はすでにあさの5時半になっている。

私の高校は遠いうえに、無駄に進学校の為、朝5時50分には家を出ないと電車に間に合わない。


「あーー!!!もう!!とりあえず、着替えるから出てって!!」


「おう、んじゃ外で待ってるぜ。」


寝起きであまり回らない頭で、とりあえず支度をする。学校の準備は前日にしてあるから、着替えて、歯をみがいて、とりあえず頭は電車の中で結ぼう。


「おかあさーん、おむすびとお弁当は?」


「台においてあるわよ。気を付けてね。」


お母さんはいつも5時にはおきて、おむすびと弁当を作ってくれている。いつもありがとう。あたしは将来できるだろうか。

そんなこと考えても仕方がない。とりあえず、自転車に乗ろうとすると、目の前に朱夏がいた。


「おー。準備できたか。早いな。」


「なんで、あんたも当たり前のように自転車持ってんのよ!とりあえず、行くわよ!」


とりあえず、朱夏と2人で駅へ向かう。駅までは下り坂ばかりなので、飛ばせば10分ほどで着く。ただ、ほぼノーブレーキの私の運転はかなり危うい。まぁ、慣れた道なので、どってことないが、さすがの私も話す余裕はない。


駅について、自転車を置く。私達がつく時間帯はまだあまり人がいないので、ぎりぎりでも近くに停める事が出来る。


改札に向かいながら、私は朱夏に話しかける。


「ちょっと、何であんたがあたしの家に迎えに来たりしてるのよ。」


朱夏も一緒に改札に向かいながら、返事をしてくる。

夏だが、まだ朝早いのでそこまで暑くはない。それでも学校に着くころには暑くなっているだろうが。


「昨日夢の中で話しただろ?覚えてないのか?」

「覚えてるけど、あんな説明でわかるわけないでしょ。」


あんな短い説明で分かる方が無理という話だ。しかし、ここは本当に異世界なのだろうか。

異世界というと、ファンタジーみたいにドラゴンが飛んでいたり、ヨーロッパ風のお城があったり、妖怪とか、魔法とか、何か色々あるというのが、通説だが、私の目の前には全くそれがなく、いつもと同じ駅の風景が広がっているだけだった。

違うのは、隣に朱夏がいるという事だけ。その他には家も、駅に向かう道も、通る改札、学校に向かう時間、友達、いつも駅で見かける駅員さん。全てが同じだった。


「さて、さゆみとともはいつものところに座っているかな?」


元の世界では、私たちは大体いつも3両ある電車の2両目の出口に近いところに座っていて、今日も同じところにさゆみが座っていた。ともはこちらでも相変わらずぎりぎりらいい。もし、いつもと違う席に座ることになったらお互いで、携帯にメールを入れていた。

こちらにも携帯があり、入っているアドレスも一緒、使い方、昨日まで使っていたクラスメイトとのメールも入っている。この状況で一体どうやって、ここが異世界だと信じればいいのか、全く分からなかった。

私は元の世界にいたようにさゆみに声をかける。

「さゆみー、おはよ。」

「あ、ごんち、朱夏君、おはよー。」

さゆみは、朱夏がここにいるのは違和感がないようで、普通に挨拶をしている。なぜ、私だけ朱夏がいることにこんなにうろたえなければいけないのか。私の性格上人にうろたえることは見せたくないため、表面上は普段と同じように笑顔で返しているが、内心、口から心臓が飛び出そうなくらい緊張している。

座るときは、朱夏は私の隣に座るらしい。私は携帯をメモ画面に設定して、朱夏に説明を求めた。


「朱夏、これはいったいどういう事なの?」


朱夏は一瞬めんどくさそうな顔をしたが、その顔に私が嫌そうな顔をして、怒ろうとすると、突然指を鳴らした。


パチン


朱夏が指を鳴らした週間、世界が突然止まったようになり、他と空間が切断されたようだった。


「朱夏、あんた一体何したの?」


「結衣に説明するのに周りを気にするとしゃべれないだろ?だから、一度周りと空間を遮断した。漫画好きのお前が理解するように言うには、『結界』を作ったというと、分かりやすいか?」


「あー、よくでてくるやつね。で、この場合はどういう結界?結界と言ってもいろいろ種類があると思うんだけど?あんたが言うように周りと遮断するもの、または相手を閉じ込めたりするものとかね。」


「お前、本当に色々読んでるんだな。まぁ、それだと説明が早くて簡単なんだが。というか、ここまで、すんなりと受け入れられると逆に不思議さもあるな。」


「だって、あたしはずっと他の世界に行きたいと思っていたのよ。元の世界が退屈過ぎてね。」


そう、私にとっては元の世界は退屈過ぎた。学校に行って、勉強して、友達と笑って、家に帰って、勉強して。ただ、それだけだった。特に何か特別な事があるわけではない。特別な才能があるわけではない。わくわく、ドキドキするものなど何もなかった。自力で見つけようとした。それが私の場合漫画だった。しかし、それでは、周りは受け入れてくれない。そのため、その事を隠そうとした。でも、世界はつまらない。ただ、平凡に毎日が過ぎていく。何も、ない。他と違う事をする。すると、それは不適合者となり、社会から外される。他と同じ事をする。すると、それは流されているだけだと、意思がないといわれる。いったい、何を楽しめばいいのか。


「だから、私は異世界に他の楽しみを見つけようとした。ただ、それだけ。それだと、ピーターパンシンドロームとか何とか言われるんでしょうけどね。」


「全く、お前は本当にはっきりというな。まぁ、それもいいことだが。まぁ、まずこの世界だが、お前も気づいていると思うが、お前がいた世界と全く同じだ。おれがいる以外は。

それは、お前の意識がこちらの世界を中心にしているからだ。」


「こっちの世界に意識を中心にしてるって、どういうことよ。普通、異世界とか言うんだったら、身体ごと他の世界に行ったりするでしょう。てか、それが定番でしょう。何か、パソコン使って異世界にとんだりとか、曰くつきの井戸を通ってタイムスリップとか。」


私は、少し語気を強めた。折角、異世界に来たと思ったのに、以前と同じ世界だなんて、退屈過ぎる。


「まぁ、待て、落ち着け。ここが同じ世界だとは言っていない。ただ、意識をこちらの世界に中心にしていると言っただけだ。例えば、元の世界が1の世界だとする。すると、今はおれの力で2の世界に意識を中心に向けている。簡単にいえば、チャンネルを変えたようなものだ。だから、お前の体もそのまま元の世界にあるから心配することはない。

大体、漫画のようにもし、元の世界からいなくなったら、大変だろうが。死んだという事になるぞ。」


朱夏は私を納得させるように説明した。まぁ、確かに元の世界からいなくなっていたら大変なことになる。それならば今朱夏が言ったような状況だと、私の方も家族の方も何も心配がいらないから、その心配もいらなくなる。


「大体、この世界が元の世界と同じだというのは、まだお前がこの世界の事を知らないからだ。この世界はお前がいた元の世界とは全くの別物だ。特にお前のようなものにとってはな。お前はこちらの世界では、特別な存在となる。だから、大変だ。今までの前の世界とは打って変わる生活になる。」


朱夏は私の顔を見ながら、真剣に言った。しかし、私にとってはその方が都合がよかった。


「要は、普段の生活の中に色々なありえない事が起こるんでしょう?だったら、それはそれで好都合。そっちの方が助かる。それで、平凡が平凡でなくなるなら、私はそっちを取る。」


「お前にその覚悟があるなら、俺は特に何も言うことはない。では、この結界を取るぞ。」


「なんか、結局この世界の説明されてないんですけど。」


私が不服そうに言うと、朱夏が困ったような顔で答えた。


「俺は、あまりこういう話は得意じゃないんだよ。恐らく、後で得意なやつが来るから、そいつにもっと説明してもらえ。


他にも朱夏のような人がいるのか、と不思議そうな顔で朱夏の顔を覗き込み、ある事に気付き、私は朱夏に質問をした。


「ねぇ!!今、結界で他の空間と遮断したっていったけど、時間はどうなってるの?」


「時間?それも同時に止めている。じゃないと、色々支障が出るからな。」


当たり前のように答える朱夏に、私は勢いよく聞いた。


「じゃぁ、それを使えばいくらでも好きな時間いつでも寝れるの!?」


自分でも、あほな質問をしている自覚はあるが、この時間を止めることが、できるというのは大事だ。だって、普段宿題とか予習とか、色々合って、4時間くらいしか寝てないし。

そんな質問をした私に、朱夏は一瞬驚いた様子だったが、すぐに怒ったような口調になった。


「お前はあほか!そんなことに、ほいほいいつでも結界使えるわけないだろ! 大体、睡眠時間くらい自分で、管理しろ!」


朱夏の言うことはもっともだった。が、そんな事を言われても、私には睡眠時間は大切だ。まぁ、漫画を読むほうが私にとっては睡眠時間より、さらに大切なんだけど。

まぁ、とりあえず。ずっと時間を止めたままにしておくのも、なんだか、めんどくさく感じるので、結界をといてもらう。


「朱夏のケチ。まぁ、いいや。おいおい話しは聞く事にする。とりあえず、結界をといて、学校に行きましょ。」


朱夏は結界を作った時と、同じように指をパチンと鳴らして、結界をといた。モノクロだったような世界が、色づいていく。

確かに、朱夏がいるだけで、他は何も変わっておらず、異世界とは感じない。ただ、朱夏がいるだけで、すでに異世界に来ているとわかる程、普通の人にない、力がある。私はここで何かできるのか、分からないけど、とりあえずいつものように過ごすことに決めた。

カバンを見ると、前日にした数学のプリントが入っていた。こんなところまで、同じにしなくていいのにと思うと、前日にメモした英語の小テストの範囲も記入されていた。電車の乗り換えまで1時間あるし、30分寝ることに決めて、残りの30分でテストの範囲を覚えることに決めた私は、とりあえず、寝ることにした。

電車の上に漂う、黒い雲には気づかずに。


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