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M-1決勝

作者: fukuoka_elk
掲載日:2013/11/13

何年か前に、某雑誌の企画に投稿したのを少し書き直しました。M-1もうないけど、まぁいいや。ちなみに何の賞も貰えませんでした。

その日、俺たちは夢の舞台、M-1の決勝にいた。


「はい、はい、はーい!どーもー!ヒロシ・コウジでーす!いやーついに来ました、M-1の決勝!ここまで来るのにどんだけ苦労したか!初めて舞台で漫才したとき、お客さんはたったの3人でした。それが今やテレビに出れて、何千、何万の人の前で漫才ができるようになって、優勝したら1千万円も貰える!これはチャンスです!大きなチャンスなんです!これをきっかけに上へのし上がってやりますよ!なっ!ヒロシ!・・・」


とヒロシの方を見るとなんだかヒロシの様子がおかしい。


「(小声で言う)おい、おいっ!どうしたヒロシ!なんだその暗い顔は!M-1の決勝だぞ!張り切っていこうぜ!」


「いや、実はちょっと話があるんだけど・・・」


「なにっ!な、なんだ?こんな時に話ってなんだ!?」


客がざわついている。


「俺、芸人辞めようと思ってるんだけど・・・」


「えー!なにー!なんでー!なんで、こんな時にー!」


「俺、才能ないと思って・・・」


「いや、いや、あるよ!多少はあると思いますよ!M-1の決勝まで来てるんだから!俺たち才能あるよ!自信持てよ!それに、今は大事な決勝なんだから、漫才の事だけ考えよう!優勝する事だけ考えよう!なっ!なっ!」


ヒロシ、黙り込む。


「おい!ヒロシ!」


「そ、そうか、そうだよな。今は漫才だけに集中しよう」


「そうだ!その調子だ!」


「え、えーっと、何のネタやるんだっけ?」


「さっき、あのネタやるって裏で決めたじゃねーか!ほら、あの、学校の!」


「な、何だっけ?何だっけ?えーっと・・・」


「学校で、遅刻して、怒られたりする、あれだよ!あれ!」


オロオロするヒロシ。


「わ、わかんねー、全然わかんねー!わかんねーよー!ああーーー!!」


俺たちは3分ももたずに舞台を降り、出場8組中、最下位になった。最高の舞台で、最低な結果を残してしまった。






楽屋でヒロシは責任を感じて落ち込んでいた。


「すまん・・・」


とヒロシは言った。


「・・・お前、本当に辞めたいのか?」


「ああ・・・」


「辞めて何やるんだ?」


「宇宙飛行士になろうと思って・・・」


「う、宇宙飛行士?そんなもんお前みたいなバカがなれるわけねーじゃねーか!なに言ってんだ!」


「いや、なれる。絶対なれる!俺、才能ある!俺、泳ぐの得意だから宇宙でもうまく泳げる!宇宙はスゴい!かなりヤバい!俺は宇宙のスゴさをみんなに伝えたいんだ!もう誰も俺を止められないんだ!俺は行くんだ!宇宙に行くんだ!うぉーー!うちゅう!うちゅう!うちゅう!」


とヒロシは騒ぎだした。


「ダ、ダメだ。こいつ。ちょっと頭おかしくなってる」


その後、俺はヒロシとコンビを解消した。






一年後、新しい相棒を見つけた俺は、またM-1の決勝にいた。


「トオル、チャンスだぞ!M-1の決勝だぞ!芸人辞めるなんて言うんじゃねーぞ!」


と舞台裏で俺はトオルに言った。


「なんだ、それは!あたりめーじゃねーか!バカヤロー!なに言ってんだ!俺の実力見せつけてやるんだ!バカヤロー!」


俺はトオルのギラギラした目を見て、今度こそいける、そんな気がした。





「はい、はい、はーい!どーもー!トオル・コウジでーす!・・・んっ?」


とトオルを見ると、トオルの顔が青ざめている。


「おい!トオル!おい!どうした!」


俺は悪い予感がした。


トオルは何かを訴えるような顔をして俺を見ている。


「あ、あの・・・ちょっと、うんこ出そうなんですけど・・・」


今度もダメだ・・・俺はそう確信したのだった。


おしまい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コウジがかわいそうで逆に面白いです。
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