誠ー3話
蒼は幼なじみの僕からみても悪いと思う。悪いというのは罪を犯すという意味の悪いじゃなくて……。
「何考えてるの?」
「蒼のことだよ」笑いながら答える。
蒼は嬉しそうに僕の肩を叩いた。
蒼はたまにすべて見えてるように云う。それは桜家にいたときに学んだことなどの経験が関係してるのかもしれない。
それが関係して僕と同い年のくせに大人びたところがある。
「どうやって『天刀』の持ち主捜すの?」
「漁那さんのところに行ってみよう」
僕は蒼の提案に賛同した。
「と云うことは……」
蒼は苦笑いした。
また、横浜に行かなければならないということだ。道は真っ直ぐだから迷う心配がないけど……。
「あれっ?」
横須賀へ行ったときよりも簡単に着いた。
行く途中で興味深い話を蒼としたからかもしれない。
話は兄弟について。僕が初めに戦った「狂」について。
「狂樹が長男なんて云ってたけど、狂がいたとき、狂樹は次男だった。それを兄弟は忘れてる。でも僕は忘れてない」蒼がそう呟いたことから始まった横須賀から横浜まで行く途中の話。
「『殺』が云ってた。狂は自我が壊れてるって」
蒼は少し寂しそうな表情を見せ「刀の声が聞こえるんだね」と呟いた。
「久しぶりだナ!」
漁那さんが僕らに気付き声をかけた。
駒須さんは漁那の声に驚いていた。隣で大声出されて驚かない奴はあまりいないだろ。
「どうしたの、2人とも。横須賀に行ったんじゃ……」
「僕ら『天刀』の持ち主を捜してるんです」
僕は蒼が云おうとしたことを云った。
「『天刀』……。どこかで聞いたことがあるゾ。ちょっと待ってナ」
漁那さんはまた海に入ろうとした。でもその前に蒼が待ってる間に野壯さんのところに行くと伝えた。
山に入ってしばらくすると声が聞こえた。
「誰だ。オレ様の極楽時間を邪魔する者は」
「極楽時間ってなにさ」
声からして野壯さんと華耶さんだろう。
「野壯さんに用があります」蒼は2人の方を見ながら(実際には葉で見えない)云った。
「そこの2人、もしかして前に野壯を訪ねて来なかった?」
「はい、駒須さんと来たことがあります」
「やっぱり!ほら、前話した2人だよ。刀を集めてる2人!」
僕は疑問に思ったことを聞いた。
「あの、何故僕らが刀集めしていると知ってるんですか?」
「鳥たちが教えてくれるんだよ。あと、漁那さんからもね」
「漁那さんは海から離れられないはずじゃ」
「あの声はここにも届くんだよ」華耶さんが答える。
「蒼、誠!戻ってこい!」漁那さんの僕らを呼ぶ声が聞こえる。
「呼んでるよ?」
「さっさと行け!あの妖の大声を聞くと動物が逃げるからな」
「あの、戻る前にひとつだけ良いですか」
「なんだ?さっさと云え」
蒼は決意するように深呼吸してから聞いた。
「2人は『天刀』をご存知ですか」
「神が持ってるとかいう噂だな、神の場所は知らない」
「そうですか……ありがとうございます」