蒼ー4話
碧をその助けてくれたという人が持っているという『天刀』を借りに行くため走らせた。
「悪い幼なじみだね、蒼は」
僕の顔をのぞき込み、ため息をつきながらながら誠は云った。
「悪い幼なじみって。そんなことないよ」
「いいや、悪い、とても悪い幼なじみだよ。蒼はこの場にいる刀をまだ持ってる妖から借りる…取るために碧を遠ざけた」
「奪い取るとか悪いこと云うなよ。借りるんだよ」
どうだか……と誠は疑ったように云った。
誠も疑り深いよね。
「『天刀』借りてきたよ!その代わり來蘭さんからお願いされたんだ」
「……お願い?」
面倒なことを持ってくると思ったからここから離したのに、逆に持ってくるとは……。
「うん。『天刀』を持ってる妖は來蘭さん含めて5人いるらしいんだ。來蘭さんは他の……『天刀』を持った4人に会いたいって」
「……それがお願い、だと」
碧は静かに頷いた。
全く、会いたいなら自分から動けばいい。
「蒼、來蘭という妖は海の女神らしい」
「…女神は動けないってことか?」
「そう。他の『天刀』の持ち主もそういう神らしいよ」
面倒だな
「……って、他の妖もその場から動けなかったらどうすんだよ!」
「知らないよ、そんなこと。とりあえず行ってみたらどうかな?」
ああ、行かなきゃいけないのか……。
僕は知らず知らずのうちに舌打ちとため息をしていた。
それに気づいたのか碧はすまなそうに「自分がお願いされたことだからボクが行ってくる」と云ってきた。
まあ、当たり前のことだ。お願いされた本人が行かなくてどうするんだって話だ。
「いや、ちょっと待て。僕が行こう」
僕の発言に皆が驚く。
隣にいる誠が僕の服の袖を軽く引っ張った。
「いきなりどうしたのさ、突然行くなんて」
「気になることがあるんだ。それを確かめに行きたいしね。……それに、また碧が厄介事持ってきてもね」
誠は碧を見て、なるほどと云わんばかりに頷いた。
やはり誠も思っていたか。碧は行った先や、寄り道した先で何故か高確率で厄介事を持って帰ってくる。その場で片付けてくれると有り難いが、自分では解決できないことが多いため持ち帰る。
今回の來蘭という妖のお願いもそうだ。
「蒼、もう厄介事持ってこないから行かせて。『天刀』集めるのはボクの仕事でしょ?」
もう持ってこないというのは信用できない。
頼まれたことを拒否できないことは利用出来る奴として使われるだけ使われて最後には棄てられるのがオチだ。
「駄目だ。そう云って何回も持ってくるからな。他の持ち主のところに行ってまたお願いされたら困る」
ふぐっ、と碧は小さく云った。図星だったのだろう。うなだれた。
「……解ったよ、蒼の云うとおりだ。ボクはいつも行った先々で蒼の云う厄介事を持って帰る……しかもそれを自分の力で解決できなくて頼ってる」
誠はうんうんと頷いている。
「それともう一つ、僕が行くと云った理由がある」
「「理由?」」
「碧は狂海、狂芽たちと約束したはずだ。刀を手放す代わりに守ると」
碧は思い出したように顔を上げた。
「そう、そうだね。守るよ、『手』と一緒に」
僕と誠は頷き、兄弟は碧の手を握ったり服の袖を掴んだ。
「行ってくるよ。碧、兄弟を宜しくね。誠、行くよ!」
僕はその『天刀』を持っている妖たちの下へ行くため横須賀を出た。
その後を誠が追う。「蒼~待って~」と呼びながら。
僕は自然と笑みがこぼれていたようで追い付いた誠に「どうしたの?嬉しそうに笑って」と云われた。