夢オチの期待と階段
そして、ユリアの紋章は今まで村で見たどんな術師のよりも鮮明に浮き出ている。
乾いた笑いを浮かべるユリアにロッドはさらに説明を加える。
「深淵との境界は神々が守っていたので、彼らを見つければ幻魔が増えることは無くなります。アナタの安全のためにも探して頂けませんか?」
「……はぁ…神様を見つければいいんだよね?さっさと見つけて普通の旅するんだから!!」
半ばやけくそで叫ぶユリア。それを満足げに聞いていたロッド。
「――それはよかったです。では頑張って下さい。運が良いことに一人目はココにいますよ。これも運命ですかねぇ」 そう言いながら指を鳴らす。するとユリアの意識が一瞬遠くなり、気が付くと祭壇の前に立っていた。 「…ここは…遺跡の中……?疲れて夢でも見てたのかな」
期待を込めてそっと右手を見るが夢オチではないようだ。
「はぁぁ……。別に夢でよかったのに。っていうかさっきの人…ロッドだっけ、は一人目はココにいるとか言ったけど、こんな何にもない所のどこにいるのよ」
ロッドに会う前と後で変わった様子は無さそうだ。
「でも何かさっきまでと違うような気が……」
辺りをよくよく見渡すと背後の壁が少し近くなっていた。祭壇が壁際に移動しているようだ。反対側に回ってみると、そこには地下に続く隠し階段があった。結構長いようで、階段の先は闇に包まれている。
「うわ、地下があるんだ。……これは降りろーっていう事か」
そう呟くと、荷物から夜光石という光る石を取り出して取っ手の付いたガラス瓶に詰める。簡易ライトは火種が要らないのが売りなのでどこででも使うことが出来るようになっている。辺りを柔らかく照らす光を見ていると、ある事実に気付き愕然とした。 「そういえば発動詩全然知らない……」
物凄い勢いで顔が青ざめる。
「さっき訊いとけばよかった……!」
激しく後悔するが、もはや後の祭。術を使うために必要な発動詩を知らないと術師は何も出来ない。一般的に知られている四つの属性ならば発動詩が広く知られていて、それらをまとめた本なども出回っている。
しかし、ユリアの属性は光。おそらく存在と同様に発動詩も知られていないだろう。
「はぁ……。しょうがないか。取り敢えず降りてみよう」
そしてユリアは地下へと続く階段に足を踏み出した。
読んで下さっている方、本当にありがとうございます。長さも投稿日もまちまちですが、頑張って続けていきます。誤字脱字があれば是非教えて下さい。すぐに直します。






