表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/14

第5話 中庭の邂逅:氷の騎士とメイドの微笑

いつも応援ありがとうございます!


お待たせいたしました、いよいよアステルの登場です。

「氷の騎士」と呼ばれるにふさわしい、彼の冷徹で美しい剣舞をお楽しみください。


メイド姿のロミナと、若き騎士アステル。

800年の時を超えた、最初の「再会」の瞬間です。

 翌日の昼下がり。


 太陽が高く昇り、世界を気怠い熱気で包み込む時間帯。

 私は言いつけ通り、洗濯籠を抱えて中庭へと足を運んだ。


 洗い立ての白いシーツが、幾重にも連なって風にはためいている。


 石鹸の清潔な香りに混じって、場違いな音が鼓膜を打った。


 ヒュン、ッ――。


 空気を切り裂く、鋭利で硬質な風切り音。


 私は、視界を遮る純白のシーツを、ゆっくりと手で払いのけた。


 その白い幕の向こう側に、はいた。


 降り注ぐ陽光を一身に浴び、溶けた銀細工のように煌めく髪。

 極北の氷河を切り取ったかのような、透き通るアイスブルーの瞳。


 無駄な装飾を削ぎ落とした黒の軍服が、引き締まった長身を包み込んでいる。


 彼は一人、目に見えない敵を相手に剣を振るっていた。


 その所作は武術というよりは舞踏に近い。

 筋肉の躍動、踏み込み、刃の軌道――すべてが完璧な黄金比を描いている。


 額から顎へと伝う汗の雫さえ、汚らしさは微塵もなく、まるで聖なる宝石のように美しかった。


(……間違いないわ。あの子ね)


 視覚情報よりも先に、魂が震えた。


 彼から滲み出る魔力の波長。

 懐かしく、そして愛おしい、肌を刺すような冷気。


 八百年の時を経ても少しも損なわれていない、私の騎士。私の所有物。


「……あの、アステル様。お水を……」


 その聖域に、おずおずと踏み入る影があった。


 新入りのメイドだ。

 彼の美貌に当てられたのか、頬を薔薇色に染め、震える手で水差しとグラスを差し出そうとしている。


 その瞬間。


「――止まれ」


 空間ごと断ち切るような、低い声音。


 アステルの動きがピタリと止まり、絶対零度の視線がメイドを射抜いた。


 物理的な温度さえ奪うような眼光に、中庭の空気が凍りつく。


「近寄るな。……匂いが移る」


「っ、も、申し訳ありません……!」


 それは拒絶というより、生理的な嫌悪だった。


 メイドは顔面を蒼白にし、涙目でその場から逃げ出した。


 残されたアステルは、眉間に深い皺を刻み、まるで汚物でも見たかのように不快げに鼻を鳴らす。


 その時だった。


 彼の氷のような視線が、ふと、風に揺れるシーツの隙間に佇む私を捉えた。


 目が、合う。


 射殺すような鋭い眼光。

 普通の娘なら、その殺気に腰を抜かし、悲鳴を上げてうずくまっていただろう。


 けれど、私は――ロミナは、逃げなかった。


 怯えるどころか、私はその凍てつく瞳を真っ直ぐに見つめ返し、唇の端を優雅に持ち上げてみせた。


(久しぶりね、アステル。相変わらず不機嫌そうな顔をして)


 音のない挨拶。艶然とした微笑み。


 アステルの眉が、ピクリと反応した。


 一瞬、その冷徹な瞳の奥に、さざ波のような動揺が走る。


 既視感か、あるいは本能が何かを感じ取ったのか。


 数秒の沈黙が、永遠のように感じられた。


 だが、彼はすぐに興味を失ったようにふいと視線を逸らし、剣を納めた。


 私という存在を記憶から消去するように、彼は冷たい背中を向け、足早に屋敷の中へと消えていった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


「近寄るな、匂いが移る」……。

アステル様、他の女性に対してはこれ以上ないほど塩対応ですね。

そんな彼が、ロミナの微笑みを見た瞬間に見せたわずかな「揺らぎ」。


今はまだ気づいていないようですが、彼が真実に直面した時、どれほど劇的に崩れるのか……今から楽しみです(笑)。


次回、第6話『夜襲:真紅の口づけと忠犬の跪き』。

いよいよ魔王様が、愛しい下僕を「分からせ」に行きます。


――――――――――――――――

【読者の皆様へのお願い】


「アステル、不器用だけどかっこいい!」

「ロミナ様の不敵な笑みがたまらない」

「早く二人を再会させて!」


と少しでも思っていただけましたら、

ぜひ下の【☆☆☆☆☆】をポチッと【★★★★★】にして応援してください!

ブックマーク登録も、作者の執筆の魔力になります。


皆様の応援が、アステルの氷を溶かす糧になります!

よろしくお願いいたします。

――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ