表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/52

第49話 玉座の肉塊:お父様、さようなら

いつもお読みいただきありがとうございます!


 ついに玉座の間へ到達。そこにいたのは、父としての情愛も王としての誇りも失った、醜悪な肉の塊でした。

 

 自分を「養分」と言い放つ父に、決別の言葉を突きつけるマーガレット。

 そして「偽物の魔王」を自称する不届き者に、ロミナ様が本物の絶望を教えます。


 最上階、玉座の間。

 重厚な扉が左右に開かれた瞬間、腐臭と熱気が奔流となって押し寄せた。


 その先に広がっていたのは、異界の胎内だった。


 帝国の威信を象徴していた黄金の玉座は、見る影もない。

 代わりに鎮座していたのは、ドクン、ドクンと不快なリズムで脈打つ、巨大な「肉の塔」だった。


 中央――かつて玉座があった場所から、歪んだ歓喜の声が轟いた。


「遅かったな、我が愚息どもよ!」


 皇帝ゲオルグの上半身が露見している。だが、その肌は紫色に変色し、過剰な魔力に耐えきれずに人の輪郭を無惨に崩していた。


「見ろ、この溢れんばかりの力を! 私はついに、魔王さえも超越した『神』となったのだ!」


 醜悪。

 その光景を表す言葉は、その二文字に尽きた。


 対して、扉の前に佇む私たちは、ドレスの裾ひとつ汚さず、優雅に、そして冷ややかにその怪異を見据えていた。

 

 膨張した醜い肉塊と、研ぎ澄まされた美貌の群れ。

 その対比は、残酷なほどに鮮明だった。


「マーガレットか。……相変わらず、影の薄い役立たずの娘め」


 濁った眼球がギョロリとマーガレットを捉えた。


「光栄に思え、お前も私の『養分』にしてやる。来い!」


 ズリュッ、と湿った音が響く。

 肉の壁から、血管の浮いた触手が数本、飢えた蛇のように伸びてきた。


 だが、マーガレットは一歩も引かなかった。

 彼女は、腕の中に抱いた黒猫――キバを強く抱きしめる。


「……お断りします」


 落とされた言葉は、氷の雫のように静かで、鋭かった。


「貴方はもう、私の父ではありません。貴方が捨てたのは人間性だけではない。家族としての絆も、王としての誇りも、すべてドブに捨てた……ただの『醜い怪物』です」


 その声は凛として透き通り、腐臭漂う玉座の空気を切り裂いた。


「エリザ様の爪の垢でも煎じてお飲みになればよろしいのに。……実の娘すら喰らおうとするその浅ましさ、生理的に不愉快です」


「き、貴様ァァァッ……!」


 屈辱は瞬時に沸点を超え、その矛先は、私へと向けられた。


「貴様だな! 貴様が、伝説に謳われる『魔王の器』か!」


 卑しい欲望。


「素晴らしい……なんて芳醇な魔力だ! 寄越せ! その極上の力を私が取り込み、真の永遠を手に入れてやる!」


 ヒュンッ!

 無数の触手が弾丸のように射出された。


 だが、その切っ先が私の領分テリトリーを侵すことは、未来永劫あり得ない。


「……下郎が」


 アステルが音もなく一歩、前へと踏み出す。

 彼が剣の柄に手をかけた刹那、玉座の間の湿気が一瞬で凍結した。


「その汚らわしい触手で、あの方を指差すな」

 

 銀の一閃。

 私の鼻先まで迫っていた数十本の触手が、瞬時にして硬質な音を立てて静止する。


 カシャン、カシャン……。


 氷の結晶となり、砕け散って床に降り注いだ。


「神? 魔王を超えた? ……笑わせないで」


 私はゆっくりと扇子を開いた。

 路傍の石ころを見る目ですらない、冷徹な光を宿して。


「分を弁えなさい、哀れな紛いフェイク


 言葉と共に、私の背後から闇が噴き上がった。

 漆黒のオーラは、巨大な「翼」の形を成して天井を覆い尽くし、ゲオルグの肉塊を影で飲み込んでいく。


「ひ、ひぃ……っ!?」


「本物の『魔王』というものがどういう存在か――その身に刻んで、教育してあげるわ」

第49話をお読みいただき、ありがとうございました。


 マーガレット様、本当にかっこいいです!

 「生理的に不愉快」という一言は、かつての彼女からは想像もできないほどの強さと、ロミナエリザ譲りの気品を感じさせますね。


 そしてロミナ様、ついに「魔王」としての真の威圧感を解放しました。

 偽物の力が、本物の深淵を前にどれほど無力なのか……。


 次回、帝国編の最終決戦。

 面白いと感じていただけたら、ぜひブックマークや評価での応援をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ