第47話 帝都侵入:死都の静寂と別働隊
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ついに帝都へと乗り込んだロミナ様一行。しかし、そこはもはや人の住む都ではなく、街全体が皇帝の野望のための「餌場」と化していました。
押し寄せるキメラの群れを「最高のお飾り」エリザと「腹黒神父」ライルに任せ、物語はいよいよ本丸への突入を開始します。
因縁の対決が迫る第47話、ぜひお楽しみください!
車輪が軋み、重苦しい音を立てて再び回転を始める。
窓の外を流れる景色は、彩度を失った灰色の荒野と化していた。
その淀んだ空気を切り裂くように、ライルが馬を寄せてきた。
「分析が終わりました。……予想以上に深刻です」
彼は窓枠に手をかけ、押し殺した声で告げた。
「先ほどの怪物たちは、単なる端末に過ぎません。帝都の地下深くにある『発生源』から、血管のように張り巡らされた魔力供給によって動かされているのです」
「つまり、親玉である皇帝を叩き潰さない限り、この国は終わるってことさ」
私の膝の上で、黒猫の牙が鋭い眼光を光らせて補足した。
「奴は今この瞬間も、国民を薪のようにくべて、炉の火力を上げ続けてる。放っておけば、この国中の人間が、あの醜い肉塊に変えられるぞ」
私は扇子を閉じ、窓枠をコツコツと硬質な音で叩いた。
「……急ぐわよ。私の美しい世界が、これ以上汚されるのは我慢ならないわ。――害虫駆除の時間よ」
◇
地平の彼方に帝都のシルエットが浮かび上がった。
だが、その光景に安息の色は微塵もない。
天蓋を侵食するように展開された巨大な魔法陣が、どす黒い光を放ちながらゆっくりと回転している。
街の通りからは、蛍火のような淡い光の粒子――人々の生命が吸い上げられ、帝都全体が断末魔の喘ぎを上げていた。
帝都の大通りへと足を踏み入れた私たちを迎えたのは、圧倒的な「沈黙」だった。
建ち並ぶ家々の窓ガラスは砕け散り、道路にはコールタールをぶちまけたような、粘着質の黒い液体がへばりついている。
「……生体反応が、ありません」
ライルが手に持った杖の先で、足元の黒い粘液を突いた。
グチャリ。
「街全体が、一つの巨大な胃袋の中にあるようなものです。すべての生命をエネルギー源として吸い尽くしたのでしょう。……実に効率的ですが、品性というものが欠落している」
「空気が、腐っているわ」
私はレースのハンカチを鼻元に押し当てた。
かつて栄華を極めた帝国の都は、いまや住人を喰らい尽くした抜け殻――巨大な墓標と化していた。
「元凶を掃除しなくては。……綺麗さっぱり消毒しないと、私の気が済まないわ」
◇
ズシン、と巨大な跳ね橋が大地を叩いた。
同時、城の暗がりから、吐き気を催すような濁流が溢れ出した。
肉と骨の津波。無数のキメラたちが、飢えた獣の咆哮を上げ、互いの身体を踏みつけにしながら雪崩れ込んでくる。
「エリザ、ライル」
私の声は戦場の喧騒を切り裂き、凛と響く。
「貴方たちはここに残り、この雑魚どもを食い止めなさい。一匹たりとも、外へは逃すな」
エリザは王宮の舞踏会に招かれたかのように、優雅に膝を折った。
「承知いたしましたわ。わたくしのこのドレスが汚れない程度に……少々、遊んで差し上げますわ」
隣でライルも無言で杖を構え、絶対の防壁となる意思を示す。
私は彼らに背を向け、残るメンバーへと視線を巡らせた。
「では、私たちは本丸の『大掃除』に向かうわよ。行きなさい、ルーカス、マーガレット。……長い悪夢に、落とし前をつける時が来たのよ」
護衛のアステルが銀閃となって道を切り開き、牙が影のように跳躍する。
私たちはエリザたちの奏でる殺戮の旋律を背に、諸悪の根源が待つ深淵――城内へと突き進んだ。
第47話をお読みいただき、ありがとうございました。
帝都の描写、かなり凄惨なことになっていますね……。住民すべてをエネルギーとして吸い上げる魔法陣。これには美学を重んじるロミナ様も「品性がない」とご立腹です。
そして、ついに別働隊としての役割分担が決まりました!
足止めを担当するエリザ&ライル組の「舞踏会のような殺戮」も気になりますが、次回からはルーカスとマーガレット、それぞれの決着をつける城内編が本格化します。
いよいよクライマックス間近。
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