第34話 断罪の証拠:民衆の暴徒化と聖女の悲鳴
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逃げ場のない「録音」という物理的な証拠を前に、ついに聖女の化けの皮が剥がれます。
数万の信者が一瞬で「暴徒」へと変わる絶望的な光景。
宝石を引きちぎられ、泥にまみれて這いずる。
ライルが用意した「最高に無慈悲な舞台」のクライマックスをお楽しみください。
「彼女は、皆様から集めた浄財を……あろうことか私利私欲のために浪費しました。慈愛の仮面の下に隠された、その醜悪な本性が記録された証拠が、こちらです」
ライルの告発は、冷徹な刃のように静寂を切り裂いた。
彼が高々と掲げた指が乾いた音を立てて鳴らされる。
ざらついたノイズが、張り詰めた空気を撫でた。
一瞬の空白の後、厳かな回廊に、毒々しい高笑いが響き渡る。
『すごいわ! これで新しいドレスも宝石も買い放題ね!』
それは、昨夜のキャスリーンの声そのものだった。
聖歌が流れるべき空間を、欲望に塗れた歓喜の声が冒涜していく。
『孤児なんてどうでもいいのよ、チョロいもんだわ!』
『ライル様も抱いてあげるから、私と共犯になりましょう? うふふ!』
剥き出しの強欲と、下品な誘い。
聖女として崇められていた女の口から放たれた言葉の数々が、冷たい石床に反響し、信者たちの鼓膜を打ち据える。
信じていた慈愛は幻影であり、自分たちはただの養分でしかなかった。
絶望的な理解は、やがて煮えたぎるような熱を帯び、どす黒い殺意へと変貌を遂げた。
「う、嘘よ! これは偽造よ!」
キャスリーンが悲鳴のように叫んだ。
だが、必死に潔白を訴えようと広げたその腕には、最高級の絹が纏われ、首元には大粒の宝石が、皮肉なほど美しく輝いていた。
その煌めきこそが、彼女の罪の証明だった。
「ふざけるな!」
「俺たちの金を返せ!」
「この魔女め!」
誰かが上げた叫びが堰を切った。
聖堂を揺るがすほどの爆発的な怒号が、四方八方からキャスリーンへと降り注ぐ。
不意に、視界の端をどす黒い影が過ぎった。
ごっ、と鈍く重い音が、彼女の頭蓋を揺らす。
「きゃあああッ!?」
一拍遅れて襲ってきたのは、焼きごてを押し当てられたような鋭い熱と痛みだった。
額から溢れ出した温かい液体が視界を赤く染め、頬を伝って純白の聖衣にぽたぽたと落ちていく。
タガが外れたように、無数の殺意が形を成して降り注ぐ。
腐敗した野菜の強烈な臭気、肌を容赦なく切り裂く石礫、汚泥の塊。
「殺せ!」「偽聖女め!」「悪魔を追い出せ!」
かつて彼女の足元にひざまずいていたその手は、今や拳大の石を握りしめ、鬼のような形相で振り上げられている。
反転した信仰ほど、恐ろしく残酷なものはない。
キャスリーンは床に崩れ落ち、逃げ場を求めて無様に這いずった。
最高級の絹糸で織られたドレスは泥と汚物にまみれ、重く濡れた雑巾のように彼女の手足を拘束する。
首元を飾っていた宝石は、粗野な手によって皮膚ごと乱暴に引きちぎられ、首筋に赤いミミズ腫れを残した。
「いやぁ! 痛い! やめてぇ!」
痛みと屈辱にまみれた悲鳴が、かつて栄華を極めた彼女の世界の終わりを告げていた。
第34話をお読みいただき、ありがとうございました。
信じていたものに裏切られた民衆の怒り、凄まじいですね。
かつてプロポーズだと勘違いしていたライルの言葉通り、彼女の醜悪な本性は一言一句、国中に響き渡りました。
ボロボロになり、宝石を皮膚ごと剥ぎ取られるキャスリーン。
ここから彼女に、さらなる絶望の「仕上げ」が待っています。
物語はいよいよ、王国編の最終局面へ。
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