表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/52

第21話 断罪の宴:公開処刑の招待状

いつもお読みいただきありがとうございます!


 王家を掌握し、優雅な日々を過ごすエリザ様(ロミナ様)。  一方で、居場所を失った第一王子ノースは、味方だと思っていた連中からも見放され、ついに臨界点を突破してしまいます。


 静かなティータイムに近づく、破滅の足音。  物語はいよいよ、一つの大きな山場を迎えます。

エリザとライルの婚約発表から数日。  王城の空気は、まるで腐った果実のように劇的に変質していた。


 かつてはノース王子が歩けば道が開け、阿諛追従あゆついしょうの言葉が飛び交っていた回廊。  だが今、そこにあるのは冷ややかな沈黙と、背中を向けられる屈辱だけだ。


 貴族たちはノースの姿を認めると、疫病神でも見るかのように露骨に顔を背け、あるいは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく。  視線の端に映るのは、哀れみと蔑みが混じり合った、針のような眼差しのみ。


「くそっ! どいつもこいつも! 僕を見ろ! 僕こそが、選ばれた王太子だぞ!」


 執務室に、磁器が砕け散る激しい音が響き渡った。


 ノースは高価な花瓶を壁に叩きつけ、肩で荒い息をついていた。  床に散らばった破片は、粉々に砕けた彼自身のプライドそのものだった。


 孤独と焦燥が、胃の腑を焼き尽くす。  縋るような思いで呼び出した友人の賢者スーラ、そして愛玩具ペットのように侍らせていた聖女キャスリーン。


 彼らだけは味方だという妄想も、扉を開けた瞬間に打ち砕かれた。


「スーラ! キャスリーン! どこだ、早く僕を慰めろ! あいつらが僕を無視するんだ!」


 絶叫するノースに対し、入室した二人の反応は氷のように冷たかった。


「落ち着け、ノース。……感情論は聞き飽きた。客観的に見て、これは分の悪い賭けだ。教会という巨大な後ろ盾を得たエリザ王女を敵に回して、我々に勝ち目はない」


「そうよぉ。ねえ、ノース様。もう無駄な足掻きはやめて、エリザ様に土下座でもしたら? 私、負け馬に乗って泥を被るのは趣味じゃないの」


 キャスリーンは爪の手入れをしながら、甘ったるい声で毒を吐く。  その瞳には、かつて向けていた媚びなど微塵もなく、あるのは敗北者を見る底冷えするような侮蔑だけ。


 味方だと思っていた者たちからの、容赦ない切り捨て。  ノースの中で肥大化しきっていた自己愛ナルシシズムが、音を立てて決定的な亀裂を入れた。


「謝る……だと? この僕が? ……あんな無能な女に頭を下げろと言うのか?」


 ギリ、と奥歯が砕けそうな音を立てる。  視界が真っ赤な怒りで塗り潰されていく。


「そうだ……違う、僕は悪くない。全ては、あの生意気なエリザと、役立たずのマーガレットのせいだ! 無能なゴミどもが、優秀な僕の邪魔をしているだけなんだ!」


 ノースの瞳から理性の光が消え、狂気じみた濁った光が宿る。


 彼は腰に帯びた剣の柄を、指が白くなるほど強く握りしめた。  暴力。それが、追い詰められた愚者が縋れる最後の万能感。


「排除してやる……僕の正しさを、わからせてやる……!」


 ノースは獣のような低い唸り声を上げ、執務室を飛び出した。  その足取りは、破滅へと向かう断頭台への階段を、自ら駆け上がっていくかのようだった。


 ◇


 一方、離宮のサロンは、外界の殺伐とした空気とは無縁の、蜂蜜を溶かしたような午後の陽気に満たされていた。


 豪奢なテーブルセットを挟み、エリザとマーガレットが向かい合う。  私とアステルは壁際に控え、その絵画のように美しい光景を見守っていた。


 数日前まで幽霊のように蒼白だったマーガレットの頬には、今や薔薇色の血色が戻っている。  もっともそれは、健康的な生気というよりは、熱病に冒された少女のような危うい艶やかさだった。


「美味しい? マーガレット」


「……はい、エリザ様。とても」


 エリザに勧められたスコーンを、マーガレットは小鳥が餌をついばむように、小さな一口で口に運ぶ。


「味が、します。……貴女様が傍にいてくださる時だけ、私は自分が生きていると感じられるのです」


 恍惚とした表情で紡がれる言葉。  エリザは慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、テーブル越しに手を伸ばすと、マーガレットの亜麻色の髪をゆっくりと撫でた。


「いい子ね。ずっとそのままでいて。……私の可愛いお人形」


 撫でられるたび、マーガレットは目を細め、快楽に身を震わせる。


 完璧だ。  完全に依存している。  彼女の精神こころは今や、エリザという支柱なしでは立っていられないほどに脆く、作り変えられた。


(……さあ、仕上げの時間よ)


 私は銀のポットを持ち上げ、紅茶の温度を確認しながら、サロンの扉の向こうへ意識を向けた。


 静寂を切り裂くように、ドタドタと品のない足音が近づいてくる。  荒く、乱暴で、破滅を急ぐ愚か者の足音が。

第21話をお読みいただき、ありがとうございました。


 スーラとキャスリーン、実に「なろう」らしい手のひら返しの速さですね(笑)。  追い詰められたノースが、反省するのではなく「自分以外が悪い」と狂気に走る姿は、まさに自業自得といったところ。


 そんな中、すっかりエリザ様の「お人形」になってしまったマーガレット様。  彼女がこの後の修羅場でどんな行動に出るのか……。


 続きが気になる!という方は、ぜひブックマークや評価での応援をお願いします!  次回の更新もどうぞお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ