第15話 殺意の執事:触れてはいけない逆鱗
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今回は、勘違い王子ノースがもっともやってはいけない「地雷」を踏み抜きます。
ロミナ様に触れようとしたその瞬間、氷の騎士アステルの理性が……いえ、殺意が爆発。
「なろう」名物(?)、室内を物理的に凍りつかせるほどの殺意の奔流をお楽しみください。
逃げ出す王子の無様な姿は必見です!
その瞬間、浮ついた二人の視線が、不意に絡め取られた。
エリザの背後、影のように控えていた私たち――絶世の美貌を持つ青年アステルと、侍女姿の私に気がついたのだ。
「ほう……?」
ノースの瞳から、理性という理性が抜け落ちる。
私の顔、首筋、そして身体のラインをねめ回すその視線は、まるでナメクジが這うような粘着質な不快さを伴っていた。
彼は唇の端を歪め、品定めをするように目を細める。
「随分と……極上の上玉を拾ってきたな。おい、君」
ノースが私の元へ大股で歩み寄ってくる。
彼は私の目の前で立ち止まると、あろうことか、その薄汚い手を私の顎へと伸ばしてきた。
触れられる距離まで、あと数センチ。
「こんな場所で燻っているのは惜しい。僕の側室にならないか? エリザのような無能に仕えるより、次期国王の僕に愛される方が、女としての幸せというものだろう?」
一方で、キャスリーンもまた、獲物を見つけた肉食獣のような瞳でアステルを見つめていた。
「まあ! 貴方、なんて素敵なお顔……!」
彼女は頬を紅潮させ、うっとりとアステルに擦り寄る。
安っぽい香水の匂いが鼻をつく。
彼女は遠慮も躊躇もなく、アステルの鍛え上げられた腕にその身体を押し付けようと手を伸ばした。
無遠慮。無作法。
そして何より――致命的なほどの身の程知らず。
二人の手が、私とアステルに触れようとした、その刹那だった。
――ジャリッ。
室内の空気が、物理的な音を立てて凍りついた。
いや、それは比喩ではない。
実際に、目に見えない氷の刃が空間を切り裂いたのだ。
「――――気安く近づくな、下郎共が」
地獄の底から響くような、低い、重い声。
アステルの全身から、どす黒い殺気が爆発的に膨れ上がり、部屋中の空気を塗り潰した。
カチン。
涼やかな音が響く。
アステルの親指が、腰の剣の鯉口を弾いていた。
抜刀こそされていない。
だが、その切っ先は既に精神的な次元で、ノースとキャスリーンの喉元を確実に貫いていた。
アステルの瞳は、もはや人間を見る目ではない。
汚物を、あるいは即刻排除すべき害虫を見る目つきで、二人を射殺さんばかりに睨みつけている。
「その汚い手を、あの方に……そして私に伸ばすな。手首ごと切り落とされたいか?」
明確な「死の宣告」。
部屋の温度が一気に氷点下まで急降下し、窓ガラスがピキピキと音を立てて白く霜に覆われていく。
「ひっ、あ、あ……!?」
生物としての格の違い、圧倒的な「死」の気配を突きつけられ、ノースとキャスリーンの思考は白に染まった。
二人は悲鳴を上げることすら忘れ、糸が切れた人形のようにその場にへたり込んだ。
ガチガチ、ガチガチと歯が鳴る音が、静まり返った部屋に虚しく響く。
殺意の臨界点を超え、アステルの指が剣の柄に力を込めた、まさにその刹那。
「――おやめなさい、アステル」
氷の薄片のような静謐な声が、熱り立った空気を一瞬で冷却した。
私は手にした扇子を閉じ、それでアステルの腕を、パン、と軽く叩いた。
まるで、悪戯をした子供を諭すような軽い音。
だがその一撃は、狂犬と化していたアステルの意識を瞬時に私へと引き戻した。
「……ロミナ様?」
「洋服が汚れてしまうわ。それに、このサロンを鉄錆と血の臭いで満たすつもり? 汚物を撒き散らすのは許しませんよ」
私は扇子で口元を隠し、優雅に目を細めた。
「大変申し訳ありません、殿下。少々血の気が多いもので。……どうもウチの犬は、『品性のない人間』の匂いには敏感に反応して、よく吠えるものですから」
「な、な、なんだと……!?」
ノースの顔が、恐怖から屈辱の赤へと染まる。
王族である自分を「犬が吠える対象」と同列に扱われたのだ。
だが、彼の膝は笑い、身体は床に張り付いたままだ。
「お、お、覚えてろ……! ち、父上に! 国王陛下に言いつけてやるからな!」
震える指で私たちを指差し、ノースは裏返った声で喚き散らした。
彼は這うようにして出口へと殺到した。
バタンッ!!
逃げるように閉められた扉の音が、廊下に虚しく響いた。
嵐のような騒音が去り、サロンには再び、穏やかで上質な静寂だけが舞い戻ってきた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ノース王子……腰を抜かして、最後は「パパに言いつけてやる!」状態。
まさに小物界のサラブレッドといった無様な逃げっぷりでしたね(笑)。
そしてロミナ様。
アステルを「犬」と呼びつつ、王子を「品性のない匂い」と断じる余裕。
これぞ魔王の風格。扇子でアステルの腕を叩いて鎮める姿も、もはやどちらが主人か一目瞭然です。
さて、この騒動が王宮にどう響くのか。
そして、ついに三人目の部下「参謀ライル」の行方も判明しそうです。
彼は一体、どんな「化けの皮」を被っているのでしょうか?
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