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第1話 プロローグ:崩落する玉座と、氷の騎士の涙

はじめまして、作者です。

本作を見つけていただきありがとうございます!


この物語は、かつて世界を支配した最強の「魔王」が、800年後の世界で不遇な「村娘のちにメイド」として目覚め、腐敗した国や生意気な王子たちを圧倒的な力でねじ伏せていく爽快・逆ハーレムファンタジーです。


かつての部下たち(騎士、軍師、スパイなど)からの愛がとにかく「重い」のが特徴です。

理不尽な現状を魔王様がサクサク解決していく「ざまぁ」展開がお好きな方は、ぜひお楽しみください。


まずはプロローグ、800年前の「別れ」のシーンから始まります。

 世界が、紅蓮に溺れていた。


 鼻孔を焼き尽くすほどの濃厚な血の臭気と、勝利に酔いしれる人間たちの卑俗な咆哮。


 かつて大陸全土を恐怖のとばりで覆った「魔王城」は今、断末魔のような軋みを上げ、その栄華を灰燼へと帰そうとしていた。


 豪奢を極めた天井が砕け、火の粉が雪のように舞い落ちる。

 焼け焦げていく深紅の絨毯の上を、死の気配が這い回る。


 しかし、広間の最奥。

 そこだけは、時間が凍りついたかのような静寂に包まれていた。


 崩れゆく世界から切り離された玉座に、一人の少女が座している。


 月光を織り込んだようなプラチナブロンドが、煤ひとつない白磁の肌に影を落とす。

 その瞳――宝石すら霞む鮮烈な碧眼アクアマリンは、眼前に迫る破滅さえも、どこか退屈な余興であるかのように冷ややかに見下ろしていた。


 魔王ロミナ。


 この世のすべての「悪」を統べ、恐怖の象徴として君臨した絶対なる女帝。


「……時間がないようです。魔王様」


 玉座の足元、その聖域にすがりつくように、一人の男が膝を折っていた。


 月光の如き銀髪に、氷河を思わせるアイスブルーの瞳。

 漆黒の軍服は赤黒い鮮血に濡れそぼり、それが皮肉にも彼の彫像のような美貌を際立たせている。


 魔王軍最強と謳われた騎士、「翼」のアステル。


 常に冷徹な仮面を被り、敵を屠ってきたその手が、今はロミナの純白のドレスの裾を、指関節が白くなるほどの力で握りしめていた。

 まるで、その布切れ一枚が、彼をこの世界に繋ぎ止める唯一の命綱であるかのように。


「嫌です……! 私は、私はここで貴女様と共に果てたい! 貴女のいない未来など、私には永劫の地獄に等しい!」


 喉の奥から絞り出されたのは、騎士の忠誠というより、親に見捨てられようとする幼子の絶叫に近かった。


 普段の彼を知る者が聞けば耳を疑うだろう。

 氷の騎士が、なりふり構わず涙を流し、主君の足元で慈悲を乞うているのだ。

 その瞳に宿るのは、忠義を超えた、重く、深く、狂おしいほどの愛執だった。


 だが、ロミナはその懇願に揺らぐことなく、ゆっくりと首を横に振った。


「お往きなさい、アステル。これは命令よ」


「ロミナ様……ッ!」


「『キバ』の術式で、魂の座を未来へと飛ばすわ。……たかだか八百年。私にとっては、ほんの少しのお昼寝に過ぎないけれど」


 ロミナは優雅に手を伸ばし、涙と血で汚れたアステルの頬に触れた。


 ひやりとした指先の感触。

 それはアステルにとって、崩壊する世界の中で唯一確かな「救い」だった。


 彼は感極まったように瞳を潤ませ、彼女の手のひらに自身の頬を擦り寄せる。

 猫が飼い主に甘えるように、あるいは信徒が神に触れるように、その体温を貪る。


「生きなさい、アステル。未来で私を見つけ出し、またその剣を捧げなさい」


 それは、命令という形をとった、呪いのように甘美な愛の契約。


 アステルは喉を震わせ、嗚咽を噛み殺した。

 今生の別れを魂に刻み込むように、彼はロミナの手を取り、その甲にうやうやしく口づけを落とす。唇に触れる肌の冷たさが、彼の心臓を締め上げた。


「……御意。必ず、必ずお迎えに上がります。私の魂は、永遠に貴女様だけのもの……!」


 誓いの言葉と共に、術式が発動する。


 視界が、暴力的なまでの白光に塗りつぶされていく。


 意識が溶け出す直前、ロミナは最期に、愛おしい下僕の姿を目に焼き付けた。

 崩落する瓦礫の音も、人間たちの喧騒も遠のいていく。


 そして彼女は、微かな微笑みを浮かべたまま、八百年の孤独という名の深い闇へと落ちていった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


第1話はプロローグでした。

最強の騎士アステル、この時点ですでに愛が重たいですね……(笑)

彼が800年待たされた反動で、再会後にどれだけ拗らせているか、ぜひ楽しみにしていてください。


次回、いよいよ本編スタート。

800年後の世界で、虐げられていたロミナが「魔王」として覚醒します。

ここから一気に形勢逆転していく爽快な展開になりますので、ぜひお付き合いください!


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