5.同業者
5.同業者
「司令長官!報告です!先程新たな殺し屋の情報が入ってきました。コードネーム“華狐”。狐の面を被り袴姿の殺し屋です。殺した人数は2人とまだ少ないですが現場の状況的に能力者である可能性があります」
はぁ……。また新しい殺し屋か。写真を確認するが、まだ若い女性のように見える。こんな歳からどうして殺し屋なんかになるんだ。私には理解できない。
「殺された2人が発見された辺りの警戒を強めろ」
「はっ!」
もう殺し屋ばかりで嫌になる。署長にも報告するために私、秘密警察司令長官神代八重は重い腰を上げた……
次の日。いつも通りに朝起きて学校に向かう。帰りは別だが、朝は毎日瑞月と登校しているので一緒に学校へ向かう。季節は夏になろうとしていた。桜の花は散り葉桜になっている。気温も上がり立っているだけで汗が出てくる。学校に着き下駄箱を開けると、手紙が一通入っていた。その場で手紙を開ける。どうやらラブレターのようだ。アニメとかでよく見るラブレターのようにハートのシールで止めてある。「昼休みに校舎裏に来て欲しい」と書かれている。中学の時はよく入っていたが高校になってからは初めてだ。
「はぁ。名前書いてないし…」
横を見ると瑞月の方にも入っていたようだ。手紙を見ながら考え込んでいる。
「ねぇ紗月。時間と場所は?」
焦ってる?瑞月の方が慣れていると思うのだがどうしたんだろうか?
「昼休みに校舎裏」
「一緒に行こ!お願い!」
「いいよ」
焦っている理由は気になるが、聞くほどの事では無いので聞かないことにした。午前中の授業が終わり、昼休みになった。
「紗月ー!行こ」
瑞月がわざわざ私のいる教室まで呼びに来た。校舎裏の近くで合流すると思っていたので正直驚いた。瑞月と一緒にそれぞれのクラスのことや、習い事のことなどを話しながら校舎裏に向かう。まぁ話すと言ってもほぼずっと瑞月が話していて、私は聞いているだけなのだが瑞月が楽しそうなので良しとする。校舎裏に着くと2人の男子の話し声が聞こえてきた。
「ねぇ。これ入れたのあなたたち?」
瑞月が2人に話しかけると男子2人は嬉しそうに返事をした。
「はい!僕たちです!」
とても元気な返事だ。
「紗月さん。僕と付き合ってください!」
「瑞月さん。僕と付き合ってください!」
2人は友達で、先に打ち合わせでもしていたんだろうか。2人同時にそれぞれの前に立って告白してきたが……
間違えている。私は瑞月ではない。
「私たち2人の区別もついてない人とは付き合えない!行こ!紗月」
瑞月は私の手を引いて走り出した。少し走って校舎裏まで声が届かないところまで来ると、瑞月は走るのをやめて私の方を見た。
「ふぅ。良かったぁ。断る理由ができて」
瑞月は心からほっとしているようだ。
「ね。ほんとに良かった」
今まではどうやって断ろうかと毎回結構悩んでいた。最終的に考えるのをやめて同じ言葉を言っていたのだが、今回は楽だった。教室まで戻る時は相変わらず瑞月ばかり話しているのだが今回は愚痴が多い。だんだん瑞月と話す機会が減ってきているような気がしていたので、私は瑞月と話すことができて嬉しく思っている。教室までの廊下を歩いていると、私の教室の方がいつもより騒がしかった。1人の男子の周りをクラスの女子たちが取り囲んでいるようだ。
「あれ2年生の立花新先輩じゃない?イケメンだって有名だよ」
「へぇーそうなんだ」
私は興味が無いので学校の中の有名な人とか今人気のアイドルとか全然知らないが、瑞月は陽キャで色んな人と関わっている分やっぱり私より詳しい。むしろ学年で一番詳しいのではないだろうか?新がこちらを向き私と目が合う。
「あ、いたいた。君が紗月さん?」
人気者の新先輩が私に話しかけてきた。目立つ人に話しかけられたら私まで目立つではないか。と思ったが周りの女子達は先輩しか眼中に無いらしく問題なかった。
「そうですけど」
「ちょっと着いてきて欲しいんだけど今大丈夫かな?」
私に用事?なんで?初対面だし先輩に話しかけられるような事をした記憶は無い。
「行ってきなよ」
瑞月に言われて私は断ることが出来なくなってしまった。仕方なく先輩について行く。旧校舎の階段まで来たあたりで先輩は立ち止まった。
「初めまして紗月さん。いいや華狐」
一瞬反応が出来なかったが、すぐに警戒モードに入る。
「華狐?」
とりあえず何も知らないフリをする。それ以外にやることもない。下手なことを言ってもまずい。なぜバレている?バレるはずがない。バレるようなことはしていない。
「とぼけなくても大丈夫ですよ。僕のコードネームは『鬼灯』。君と同じ黒だよ」
先輩が殺し屋?そんな情報は私には入ってきていない。ピロン。仕事用のスマホに通知が来た。なんでこのタイミングで?と思ったが先輩を警戒しながら確認することにした。「コードネーム鬼灯との合同任務だ。相手の指示に従え」というメッセージが優弥から届いた。
「仲介人の仕事が少し遅いみたいだ。君の仲介人は誰かな?」
「言うわけないでしょ」
仲介人の名前を相手に出してはいけない。相手に自分の仲介人がバレて殺されでもしたら自分の仕事が無くなる。仲介人だって命がけだ。
「今日は顔合わせだけだ。連絡先繋いでくれるかな?」
仕事だから仕方ないと割り切り連絡先は繋いだ。
「僕は異能力者じゃない。君は能力は持っているのかな?作戦を立てるために教えて欲しい」
相手の事を信用していないから能力を教えるのは抵抗があるが、優弥からの指示に逆らいたくはない。
「信用できません」
「探って悪かったよ。僕の仲介人は東雲優弥。君と同じ所属だ」
じゃあなんの能力か聞いてるでしょ。いや、優弥だから言ってないかもしれない。
「はぁ。テレポートです」
そんな細かいところまで聞いてるなら最初から言ってくれればもっと早く話が進んだのに。ここまで言われてしまったもう相手を信用するしかない。
「そっか。作戦とか決まったらまた連絡するから。今日は付き合ってくれてありがとう。じゃあまた」
そう言って鬼灯は教室のある校舎の方に戻って行った。まさか同じ学校の中に私以外の殺し屋がいるとは思わなかった。合同任務なんて出来る気がしないが、相手の指示に従うだけでいいとの事なので私は何も考えないことにした。




