3.道
「あー、社長帰ってたんですか」
本社の扉を開けると、椅子に社長が座っていた。だがどうしてだろう。とても深刻な顔をしている。
「優弥か。紗月、どうしたものかね」
社長はとても深いため息をつく。
「あぁ紗月か。初めての人殺しですもんね?」
そう、紗月は人を殺すのは初めてのはずだ。どうしてあんなに淡々と殺せるのだろうか。俺には出来そうもない。
「紗月は狂っているかもしれない。というか感情が全くないと言っても差し支えないだろう」
「紗月ー!ご飯よ!」
自分の名前が呼ばれて目が覚める。もうそんな時間かと時計を確認すると、午後7時を丁度回ったところだった。なんだか疲れた。重い体を起こしてゆっくり立ち上がる。下の階に行くと、既に瑞月が食卓に座っていた。
「紗月今日早かったねぇ。ん?寝てた?」
「寝てた」
瑞月と話しながら食卓につく。私の顔を見ただけで、感情や様子を当てれるのは瑞月ぐらいしかいない。やっぱり双子だからだろうか。その辺は分からないが、まぁ何か瑞月にしか分からないコツがあるのだろう。そんなこんなで、母親も食卓につき食事が始まる。
「明日って2人とも懇談だったっけ?」
「そうだよー」
母親が問い、瑞月が答える。そうだったっけ?と私は考える。ふと瑞月の方を見る。
「なんか瑞月変」
「え?本当?熱でもあるのかしら?」
なんか瑞月の様子がいつもと違う。何が違うかは分からないが、しっくりこない。
「いや、熱は無いよ。今日は練習がいつもよりキツかったのー」
まぁ疲れてるだけならいっか。そう思って私な食事を再開する。
「もう!なんで2人はわかるのよ!紗月は無表情だし、瑞月はいつも笑ってるし」
そういえば瑞月が笑顔を絶やしているところは見たことがない。でも、私は瑞月以外の人の感情を当てられたことは無い。瑞月しか分からない。これも双子なからなのだろうか?まぁいいか。私が興味をなくしたところで母親が話題を変える。
「そうだ、明日の懇談で将来何になりたいか話すでしょ?先に聞いておこうかしら?」
将来かぁ。なんて答えようか。私はもう殺し屋の道からは出られないだろう。辞める方法なんて秘密警察に捕まるか、死ぬかしか思いつかない。
「私は母さんみたいな秘密警察になりたいな」
やっぱり。瑞月は秘密警察になるんだ。なりたいとは思っていないが、もう一生なれないのかと思うと重い扉で道が1つ閉ざされた気分だ。
「まぁ、瑞月がそう言ってくれて嬉しいわ。紗月はどう?」
なんて答えようか。殺し屋になってるなんて言えないし、バレるような嘘をつく訳にもいかない。殺し屋を言い換えるとどうなる?革命を起こそうとしているから、政治家?一般企業だろうか?言葉に詰まっていると
「ゆっくり考えればいいと思うよ」
と、瑞月が言った。
「そうね、今すぐ答えは出さなくてもいいわ。なりたいものが見つかったらまた教えてちょうだい」
今回は何とか誤魔化せたようだ。これからも乗り切る自信はないが、何とかなるだろう。バレた時は最悪の選択を迫られるかも知らない…




