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殺し屋としての革命  作者: 羽野 菖蒲


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1.謎の男

1.謎の男

「ではーこの問題の答えを、紗月さん。紗月さん?おい!紗月!」

 先生が紗月の名前を呼ぶが当の本人は窓の外をぼーっと見ていてなかなか反応しない。先生が隣の席の少女に目配せをする。

「ちょっと、紗月」

 少女は紗月の制服の裾を軽く引っ張りながら名前を呼ぶ。

「え?あっ…はい」

 やっと返事したかと思うが話を聞いていなかったらしくきょとんとした顔をしている。毎回こんな調子だ。先生は呆れた顔で問題を指さす。反応はしないが問題は完璧に解いてしまう。だからだろうか、クラスメイトの中には少しイラついているものいる。

 授業が終わり放課後、先程の少女夢鷹紡希(ゆめだかつむぎ)が紗月に話しかけてきた。

「今回は何を見てたの?」

「ん?あれ」

 紗月は教室の窓から見える大きな木を指さした。その木をよく見てみると、鳥の巣がありそこには3匹の小さな雛がいた。

「いや雛は可愛いけどさ。先生が呼んだときは反応してあげなよ。毎回私の方を見てくるときちょっと悲しそうなんだけど」

「?」

 紗月は本気で分かってない様子だ。相変わらず鈍い。他人のことに全く興味が無さそうだ。

「はぁ…もういいや。帰ろ、今日は弓道なんでしょ?」

 紗月がまた雛の方を向いて話を聞いていないので、無理やり鞄を持たせて手を引っ張った。

 紡希と別れた後に紗月は弓道場に向かった。正直めんどくさい。だが、行かないわけにもいかない。

「いないじゃん」

 弓道場に着くといつもはいる師範が見当たらなかった。一体どこに行ったのだろうか。仕方なく更衣室で着替えてから一人で自主練をする。私以外の門下生はいないため、私の弓を打つ音だけが道場に響く。しばらくすると道場の戸が開く音がした。一応見に行く。入ってきた男は師範では無かった。黒髪のサングラスをかけた男。背が高く、背の低い私が顔を見るためには少し上を向かなければならない。

「誰?師範は?」

 警戒しながら聞く。いつでも逃げれるように構えた。能力を使えば簡単に逃げれるだろうが、出来れば使いたくない。

「お前の師範は隣の部屋で待ってもらっている。お前に提案がある。殺し屋になる気は無いか?」

「は?」

 殺し屋?そんなのになろうなんて考えたこともなかった。いつも母親が愚痴を言っている。今日のやつはイカれてただとか、めんどくさかったとか。家には殺し屋のコードネームや殺した人数が書かれたノートがあり、将来の為に少しぐらい覚えとけと言われ見せられたが見ても面白いわけが無い。

「私の母親、秘密警察ですけど」

「そんなことぐらい知ってる。」

 こいつは馬鹿なのか?親が秘密警察なんだからこの男のことも言えば捕まえに行くだろうし、私が殺し屋になったらすぐバレる。

「なぜ私が?」

「お前の能力は殺し屋として最高だ。おまけに剣道と弓道を習ってる。いい殺し屋になるぞ。」

 私は一瞬言葉も出ずに固まった。なんで私が能力者だって事を知っているんだ?誰にも言っていないのに。

「俺の能力は相手の能力を知ることが出来る。お前はテレポートと空間把握だろう?便利な能力だ。殺し屋にならないならお前の能力を母親に言う。もう一度聞こう。殺し屋になる気は無いか?」

 相手の能力を知ることが出来る?本当に困った。すごく迷惑だ。殺し屋になるか秘密警察になるか。私の人生の中で最も重要な選択だと言われても過言ではないだろう。特に将来やりたいこともなかったが、当たり前だが殺し屋になりたい訳なかった。でも、秘密警察も嫌だ。

「はぁ…分かった。殺し屋になろう。」

「理解の早いやつだ。明日また会おう。場所はこのスマホから伝える。」

 そう言って男に1台のスマホを渡された。

「依頼や同業者との連絡はこっちのスマホを使え。他のことに使うなよ。」

 そうして男は夜の街の中に消えていった。癪に障る男だ。乱暴すぎる。隣の部屋に向かうと部屋の中で師範が縄で縛られていた。縄を解く。縄はそこまできつく縛られていなかった。

「紗月!大丈夫だったか?さっきの男は?」

「さっきの男?」

「あぁ、俺をここに閉じ込めた男だ。見てないなら大丈夫ってことか。俺は警察に通報する。危険だから今日は親に迎えに来てもらえ。連絡は俺の方からしておく。弓道場から出るなよ。」

 そう言って弓道場に向かって走っていった。親が来るまで特にすることもないので私も道場に行って練習を再開する。

 改めて先程のことを考えるが、こうなってしまえば仕方ないと割り切るしかない。殺し屋になってやろう。この腐った社会を殺すことで叩き治してやる。社会のリセットだ。

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