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黒髪の魔女は優雅に魔術を詠む  作者: 緑乃ぴぃ
黒髪の少女は時(ものがたり)を紡ぐ(つむぐ)
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第28話 闇夜と私 -その3-


「おい、聞いたか?」

「もちろんだ、貧民街の外れを縄張りにしていたヤツらの話だろ?」

「すげー死に方らしいな」

「俺が聞いた話だと、身体が折れ曲がっていたり、首が反対方向とか、壁に叩き付けられた者もいるってよ」

「人間技じゃないな」

「ああ、検分に来た衛兵たちも同じ内容を言っていたそうだ」

「相手の目星とか付いているのか?」

「わかるわけねーだろ」

「そうだよな~、人間をそんな風にしちまうんだから」

「まっ当分の間、あの辺りは騒がしくて静かでもあると思うぞ」

「なんだそれ?」

「つるんでいた仲間たちは報復を考えるだろうから騒がしくなるのは当然。しかし、相手との力差を考えると無理な話さ」

「だな」



「数日分の酒の卸し、半分にしてくれ」

「旦那もですか?」

「他の店もそうなのか?」

「はい、旦那で六軒目でさ」

「俺の考えだと、半月くらいは客足が悪いと見込んでな」

「あんなのがあっちゃ夕方から訪れる客が減って当然でさ」

「まったくいい迷惑だ」

「まっ半月くらい迷惑でも、治安が少しでも良くなりゃ結果オーライだと思いますがね」

「それは俺も考えた。ただ、犯人が捕まらないとなぁ」

「ですよねー」



「旦那様はなにを考えてますか?」

「ワシか!?」

「はい」

「そうじゃな……たいして害はなかろう」

「う~ん……。僕的に、とっても呑気な考えだと思います」

「そうか?」

「街のうわさですと騎士や衛兵が束になって相手しないと勝てないって、もっぱら言われてます」

「惨状を見てきた、お前の上役の話だと、殴り合いがあったのではと報告を受けている」

「殴り合いって、その話を信じるのですか?」

「ワシは、虚偽(きょぎ)が入り交じった噂話より、実際に現場を観察してきたやつの言葉を信じる」

「そうですね……」

「それに、たいして害がないと考えるのも、報告を元にたどり着いた結果だ」

「どうしてですか?」

「なに、さほど難しい話ではない。賊が襲われる理由など勢力争いか、返り討ちのどちらしかなかろう?」

「たしかにその通りですが……」

「それに、襲われた相手らは賊。街にとっても都合が良いではないか?」

「はい……」

「賊らは剣を抜いたが、相手は打撲のみで勝利した。すなわち、相手は己の真の力量を隠したいのだろう」

「力量を隠す……」

「そうだ。剣技を使えば楽して相手を殺められるのに、それをしなかった」

「はい……」

「つまり、賊数人程度の相手なら、殴り合いの力でねじ伏せられる――と」

「すごいですね……」

「真に強き者ほど己の力量を知り得ており、むやみに技を披露するものではない」

「旦那様の経営する酒場やギルドには強くもないのに、偉そうにする者たちが多いですからねぇ」

「それは嫌味か?」

「えーと、事実をいったまでです」

「そんな口を叩けるのはお前くらいだ」

「お褒めいただき、うれしいです」



「隊長、本当によろしいのですか?」

「しかたなかろう、上からの命令だ」

「ですが、賊数人を片づけられる者となるともっと調査したほうが良いと進言します」

「では、お前に尋ねるが、調べ上げて犯人を絞り出し拘束して尋問する者はいると思うか?」

「それが我等、衛兵の務めでは?」

「調査の結果、相手は一人。しかも賊たちは魔石を飲み込み、拘束魔法を発動した痕跡がある。さらに魔力封じの魔導具さえ使った。それも、別国の強力な物を一つ使用している」

「その通りです」

「その上で炎系の魔法と、剣を振るった痕跡もある」

「はい」

「それでも勝てなかった」

「はい……」

「そんな相手を捕まえたところで――我々が無事ですむと思うか?」

「っ……」

「第一、捕まえられるか?」

「……」

「検分の結果、二個小隊で対峙しても勝てるかどうかわからぬ相手」

「二個小隊……」

「上層部は、お前たちに無駄に死なれては困るという判断、それは俺も同じ考えだ」

「……」

「一応に、形だけでも捜査をしている体を領民に見せていれば十分とのことだ。理解、したな?」

「はっはい!」

「しかし一つ気になることがある。さっきまで息をしていた男の放った言葉――」

「隊長、なにか?」

「いやなんでもない……。きっと私の勘違いだ」


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