[2]何でも屋の初配信
[3502年10月26日]
<冒険者協会 本部 協会長室>
「ーーという訳でして、そちらの冒険者協会、協会長直属の狐白様とお話だけでも、、、」
へっぴり腰で今にもゴマすりをしそうな男に対してコバルトブルーの長い髪と瞳が特徴の少女は堂々とした口調で言った
「無理だ。何度も言うがこの私とてアレを制御出来んと言っている。今は私との契約で制限しているが先代協会長が覚醒直後の状態を相手して重症を負ったのだ。それを完璧に制御できる?馬鹿馬鹿しい、そんなこと出来るのであればとうにしておるわ」
「そこをなんとかお願いしたいのですが」
「はぁ、狐白に聞いてみるが断られたら潔く帰れ」
「もちろんですとも」
1人になった少女は「はあ」とため息をした
「まったく、どいつもこいつも理解してない。狐白を、大志をなんだと思ってるんだ。大志......」
[3502年10月27日]
<冒険者協会 本部>
本部のホールに注目を集める2人の人物がいた。
「おい、あれ協会長か?」「珍しいな。ってあれは狐白さんじゃないか!」「協会長直属だもんなぁ」
「狐白は人気者だな」
「協会長もですよ」
「だな」
世間話をしていたら協会長室に到着した
「適当に座って置いてくれ」
「わかった」
「早速本題に入るが、龍仙ギルドが話したいと言ってきた」
「却下」
「だろうな。私の誘いすら断るお前のことだからこうなると分かりきっているんだがな」
ギルドは協会とは別の組織で冒険者が立てることが出来る組織で権力的に言うと協会より下となっている。
それにギルドが協会より仕立てに出るのは協会長の影響もある。協会長は『氷結の皇妃』と呼ばれるほどの強さを持っている。さらに冒険者ランクはなんとSSランクというSランク冒険者よりも上の実力持ちだから下手に手を出すと返り討ちにあうことで知られているんだが.....
「さて、狐白。結婚してくれ!」
「却下」
何故か俺に結婚を迫ってくる不思議な少女なのだ。強い男に惹かれるというのは聞いたことあるけど実際に惹かれるとは思わなかった。
「それ50回くらい聞いてる」
「いや、正確には58回だ」
「なんで覚えてるんだよ」
「何言ってるんだ。将来の旦那に告白する数くらい数えておくに決まってる」
「え〜」
このように回数も覚えてる。ちなみに人口が一気に減ったからと一夫多妻制になっているので同意があれば何人でも嫁にできるがするつもりは無い、、、、のだけど時々ドキッとするのは仕方ない。
なにせ協会長の〔二階堂 美花〕 は凛々しく、可愛い美少女だから。
「で、ギルド関連の他にも何かあるんですよね」
「ああ。SS級迷宮塔が発見された。それも地下へと続く隠し階層だ。」
「っ!!」
「そしてその攻略を配信したいんだと」
「配信....」
「そう、狐白が魔薬使ってんじゃないのか、とか色々言われてなんとか配信だけで済ませた。」
「いや、店どうすればいいんですか」
「ん?休めばいいんじゃないか?」
「え、いや、玲香にバレるかもしれないし、何より専用武器が完成してない」
「あー、あれか。ガントレットに短剣か」
「ああ、完成まで残り5日間だ」
「ダメだ。既にオーバーフローの兆候が見られている。それに隠し階層があったのがC級迷宮塔『蜘蛛の塔』だ」
「繋がってると?」
「ああ」
「・・・・・わかった」
「武器は私の権限でちょいと借りてるからそれを使うといい」
「分かりました」
ちょいと借りれるものだから耐久性に優れた武器かなと思っていた俺が馬鹿だった
「二階堂!なんてもの持ってきてるんだ」
「おっ、狐白が慌てるなんって珍しいな」
「これ超位アーティファクトだよな」
「そうだ。それくらいじゃないと耐えられないだろ」
「いやそうだけど、普通耐久性重視の中位か上位のだろ!?」
「驚いた?」
「驚いた」
「じゃあけっ」「やだ」
「しょぼん(´・ω・`)」
「それよりこれって…」
「ん?これは父のコレクションの一つだ」
「おい、今すぐ返してこい」
「やーだよ。ちゃんと紙に書いて置いておいたから」
「えー」
「よし、じゃあしゅっぱーつ!」
そう言って二階堂は俺の手を引っ張りC級迷宮塔『蜘蛛の塔』に連れていかれた。
<C級迷宮塔『蜘蛛の塔』>
「これで大丈夫です」
「よし、じゃあ始めるか」
「攻略開始です」
「はい、公式アカウントで配信してる理由はギルドのお偉いさん方に問い詰めてね。で、今回はランク外冒険者狐白と一緒にSS級迷宮塔を攻略していくことになりました。尚理由はギルドに聞いてね」
相も変わらず面倒事はギルド投げか、それにしても今回の武器は壊れないかな…
まあ、超位アーティファクトだから多少はマシか。このガントレットと短剣は少なくとも簡単に壊れないだろう。
ちょっと性能を視てもいいよね?
「《解析》」
これは俺が持っているスキル《天王の瞳》の機能のひとつで異世界小説とかで言うと鑑定というのと似ている。というかほとんど同じである
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銀狼のガントレット[超位]
『白銀の塔』で発見されたアーティファクト
*魔力伝導率 200%
銀狼の短剣[超位]
『白銀の塔』で発見されたアーティファクト
特殊効果なし
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ありがたい。特にガントレットは魔力伝導率が高いからとても助かる。
「狐白は配信は初めてだよな」
「はい」
「ま、撮ってるから好きに暴れとけばいいから」
「それはそれでダメですよね」
「じゃあ、撮って置いてくれ」
「了解」
「起きろ氷龍、来たれ氷剣《絶零の龍剣》」
刀身は少し薄めの青、柄には龍の紋様が刻まれた直剣。
俺は配信用のスマホを構えて二階堂について行った
「二階堂、来てる」
「わかってる。《氷花》」
二階堂の周囲が一瞬にして氷ついた。
{協会長ヤバすぎでしょ}
{協会長かっこいい!}
とかコメントがポンポン出てくる。
うーん、見慣れてるとなんとも思わないが、綺麗なのは確かだ。
「どうします?この魔力は....」
「オーバーフローは確実だ」
「・・・」
「少なくともボスだけでも倒して置かないといけない。ここのボスは最低でもS級パーティーを集めたレイドパーティーでないと無理だ」
「二階堂、カメラ頼みます。ちょっと行ってくる」
「行くってどこ、に、、、、ちょっと!」
「《加速》」
速く、もっと速く!
『お前には無理だ。諦めろ。なにせお前は.....』
「諦めるかよ。守る、今度こそ、必ず...」
狐白の目には焦りと悲しみ、そして怒りが渦巻いていた。