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召喚魔王と新米術師  作者: 五味
一章 新米術師
9/9

5 魔王様異世界に立つ

「お粗末な理論であるな。」


一先ず少年に語るがままにと任せて話を聞いては見たが、それを聞き終えた彼の感想はただその一言に尽きる。


「は。何がだよ。」

「まずは最も大きな部分であるが。」


そうして彼は少年の説明、その不可思議な部分を問い返す。

即ち、物質に根差す存在がマナを扱うために召喚を行い、その生物経由で魔法を行使する。

そこまでは良いのだが、それが何故召喚生物が存在するために必要な物を、召喚したものが供給しているのかという、そんなよくわからぬ発想が何処から生まれたのかと。


「いや、お前も召喚生物なら分かるだろ。」

「分からぬ故問い返しているのだが。」

「くそ。こんなことができるからあたりかと思えば、やっぱりはずれじゃねーか。 

 召喚生物と、召喚主の間には経路が作成されるんだよ。それを使って召喚生物がこっちに存在するのに必要な魔力を、召喚主が供給してるんだ。」


少年の説明に、彼はただ首をかしげる。


「そのような物は存在せぬ。そも、世界樹の術式にそのような物は含まれていない。」

「そんなの、お前が分かってないだけだろ。こっちではそれが当たり前なんだから。」

「ふむ。それが当たり前、一般に置ける基底概念となった、その経緯を話すがよい。」

「何言ってるか分かんねーよ。」

「召喚主が、召喚生物に何かを供給している、その証拠はあるのか。」


普段通りに話せば伝わらないため、あれこれと言い換えを行いながら、彼はどうにか少年と会話を進める。

しかし出てくる言葉はこぞってそう決まっている、そう聞いた、それが常識。

そのような意味のない言葉ばかりだ。そこに明確な論拠となる物は常に存在しない。


「一先ずは良しとするか。その方が何も知らぬ、それが分かったのであるからな。」

「は、言ってろよ。これでも座学ならこの学院でも上位なんだからな。つか、学年内ではトップだしな。」

「ほう、その程度でか。」

「貴族の、ただ運よく生まれただけの連中よりも、こっちは努力してんだよ。

 何の努力もせずに、ただ生まれただけで勝ち組とか、そんなふざけた連中に負けてられないからな。」


少年の言葉にどうやらそういう制度があるのだと、彼はただそれを記憶する。


「となると、この場は随分と程度の低い場であるとそういう事か。」


そう呟いて、さてこの少年を今後どのように育てようか、そんな事を考える。

その素性はいまだに解らぬが、どうにも鬱屈したものでねじ曲がっているらしい。それの矯正を行いながらもさて一先ずどの能力を伸ばしたものかと。

正直見どころが全くないため、彼にしても悩ましいところではあるのだが。


「それにしても、展開された魔方式も読めぬとは。」


世界樹の主導する召喚、それをどうやらこちらの者共は己の力によるものだと本気で考えているらしい、まぁ、それが分かったのは大きな収穫かと、彼は内心で考える。

だとすれば元の世界、そこで結界に刻んだ立ち入り禁止の文言、それも理解できていないのであろうし、世界樹経由の翻訳程度行えるであろう、そう思って放った言葉の数々も伝わっていないのかもしれない。

そんな事に気づかされる。

やはり旅は良い、2000年来の疑問、それに対して新たな仮定が生まれると、彼は大いにそれを喜んだ。


「っていうか、魔方式ってなんだよ。」

「マナを用いて物質界に影響を及ぼす、それに際して必要とされる変換式である。その名の通り魔法そのものとそう呼んでもいのだがな。」

「魔法は召喚生物に使わせるものだろ。」

「そういう発想が根底にあるからこそ、その方らは魔法が使えぬのやも知れぬな。」

「生意気言うな。」

「事実を述べられて、そう取るのはその方が卑屈にすぎる。」


向こうの人を名乗るものたちと同じく、あまりに物質ばかりで構成される彼らはマナの扱いを苦手としても仕方ないのだが、それにしても同じ程物質に依存する獣の特徴を持つ者達に比べて、物質強度も低い、マナの扱いも稚拙、そもそも種族としてほぼ行えない。どうしてそんな生き物が発生したのか、自然淘汰されていないのかと首をかしげてしまう。

こちらはどうにも世界樹に気に入られているかららしいが、元の世界では世界樹の花、その化身である精霊に毛嫌いされているわけでもあるし。

そんな事を考えたときに、転移が終われば連絡する、そう言っていた相手からの連絡が未だにない事に気が付く。

転移に際して起こったことについては、そもそも問題と呼べるほどのことは無く。特にこの世界にも、そもそもそれが存在する正解しか移動は出来ないのだろうが、世界樹がある以上、それを経由すれば問題は無さそうではあるのだが。


「良いか、俺は飯食ってくるから、かってはするなよ。」


彼がひとり考え事に没頭している間に、少年はどうやらそうなったようで、部屋から出ていく。

言われるまでもなく、そもそも動き回る必要もなく情報は集められるのだが。

せっかくだからと少年に目を引っ付け、彼の移動、その周囲から洩れる情報も集めながら、元の世界、そこに残してきたフィオレへと、世界樹を通して話すことができないかと思考する。


「陛下、聞こえますか。」


暫く、それこそ少年が部屋を出てから食堂らしき区画にたどり着くまでの間、あれこれと考えていれば、そう聞きなれた声が聞こえてくる。

彼が何かするよりも早く、彼女の方で対応を行ったらしい。

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