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召喚魔王と新米術師  作者: 五味
一章 新米術師
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2 魔王様異世界に立つ

「用ならあるって言ってるだろ。」


とりあえず緊急の要件はなさそうだ、そう判断した彼は、呟きに激しく反応する少年に少し意識を傾ける。


「ふむ。直答を許そう。」

「何を偉そうに。僕がお前を召喚したんだぞ。」


そう言われても彼としては首を捻るしかない。

そもそも必要な魔力は世界樹が供給している。彼以外の者たちは、流石に世界を超える様な召喚は行っていないが、一人は召喚ではなく、世界樹が精霊を作り、それを供出すると、そんな事も行っていたのだから。

何とも、こちらの世界樹は人に甘いものだと、彼はその様子を感心しながら見ていた。だからあまり成長していないのだろうと、そうも思うのだが。


「それについては定義を突き詰める必要もあるが、まぁ狭義として間違っているわけでもない。

 で、あればその方、何故我を呼んだのだ。」

「なんで、そんなに偉そうなんだよ。」

「偉いからだが。」


そう言われたところで、彼にはそう答えるしかない。

彼が卑屈に、下手に振舞えばそれを国民は悲しむのだ。そして彼がそう出なければならない、それほどに彼が己の国民たちを侮ることもない。


「は。」


そしてそんな彼の断言に、少年は鼻で笑って見せる。


「なかなかに礼を欠いた態度であるが、まぁ、良い。許そう。早く答えよ。如何なる由で我を呼んだのか。」


流石に子供が少々生意気に振舞ったからと、彼がそれを怒ることもない。

場合によってはそれを行うことも有るが、そもそもここに彼の国民はいないのだから、わざわざそれをすることを選んだりはしない。


「俺たちはこうして召喚した相手を使うんだよ。」

「ふむ。相変わらず要領を得んな。」

「お前の程度が低いだけだろ。くそ、最悪だ。なんでこんな弱っちい召喚生物なんか。」

「余の程度をその方が初見で見抜けるとも思えぬが。」


相変わらず少年の言葉は要領を得ない。

とかく異世界の事。何やら翻訳に問題でもあるのかと、かれはそんな事を考えているのだが、何やら世界樹の前、そこで現れた怪物に周囲からどよめきが起きる。

火トカゲを召喚した少女が何やら喜んでいるようであるし、周囲もそれを讃えている。

その声を拾えば、どうにも王族の一員であるらしいが、それにしてもあまりにその能力はお粗末。

幽体種の幼生体、それよりも遥かに劣る程度のマナしか持たぬというのに、その周囲の者、彼女より優れたマナを持ち身体能力など比べるべくもないというのに、その少女をほめそやす者たちもいる。

どうにも歪な関係性があるようだと、彼の感想としてはそんな物しか出てこない。


ただ、それを見て隣に立つ少年と、他にももう一人。世界樹からわざわざ誂えた要請を与えられたものが歯噛みをしている。そんな様子にとにかく疑問が募る。

成程、ここまで不合理な関係性、それを作る思考を持っているから、まったく意味のない突撃をあの世界の人も繰り返すのか、そんな感想を抱き、ただ一人で頷く。

そして、せっかくだからこちらに休暇でいる間に、存分にこの生き物たちを観察しようとも。

放った目でおおよそこの世界の観察は終えた。

彼の元居た世界と違い、こちらではこの弱弱しい人という種族が最大版図を築いているらしい。そして怪物たちと戦う人の姿を見れば、面白い工夫ではあるが召喚した対象、そこからマナを操る術を得て、ごくごく弱い魔法を使っているのが分かる。

物質に依っている彼らがマナを操り魔法を行使しようとすれば、確かにそれも一つなのだろうが。

なぜそんな無駄を好むのかと、どうにも彼の中には疑問ばかりが増えていく。


「よくわからぬことばかりだな。」

「何がだよ。」

「まぁ、よい。ここは騒がしい。後程くつろげる場所で説明するがよい。」

「くそ。」


そうして、未だに召喚を終えていない者たちが次々と召喚を行っていく。

そして最後の一人が終われば、何処かに向けて移動を始める。

直進するとすれば、小さな都市、そこに在る狭苦しい建造物に向かっているのだろう。

彼はそれについていきながら、こうして自らの足で歩くなど随分と久しぶりの事だと、そんな事を楽しんでいた。


「おい。」

「ふむ。何用か。」

「お前、種族は。」


歩きながら、少々先を行く一段とは距離を空けているが。どうにもこの少年を侮蔑する声が多い当たり、まぁそういう事であるらしいと彼は観察を終えている。

己がそう当たられて、自身よりも立場が低い、この世界では召喚生物は所有物、そう扱っている以上、そういった意識が働くのだろうが、そう取れる相手に己が不快と、そう感じる態度をとる。

そんな性根であれば、さもありなん。それ以上の感想もないのだが。


「見てわからぬか。魔族である。」

「なんだそれ。」

「こちらではどう呼ぶか分からぬ故な。

 生まれながらにマナに親しみ、その扱いに長けた種族、特徴としてマナを収集する外部機関、余の場合は角と羽だな、それを持つ生き物をそう呼んでいる。」

「精霊とどう違うんだよ。」

「構成要素にマテリアル、物質が含まれるかがまず大きいものになるな。加えて核、本体だな。それがこの姿とは別に存在するかで、同系統の生物とさらに分けられる。」


そこで言葉を切って、彼はため息をつく。


「幼子に対して皮肉を言うつもりはないのだが、余の質問に答えず、質問はする。

 それは流石に良くない振る舞いであろう。」


さて、せっかくの休暇。目的もなくだらだらとしてみるのもいいかと思っていたが、このどうにも見どころのない少年を育てる、それに使うのも悪くないかもしれぬと、そんな事を考えながら。

人材の育成、それは彼の趣味でもあるのだ。

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