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独転虐国  作者: 公人鴨三
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第0話 憧れた普通の暮らし

0話ですが1話目です。ぜひ読んでいってください。

 ベッドの上で目が覚める。眼前(がんぜん)に天井がある。また新しい一日が始まった合図だ。


 「起きたー?早く起きないと学校に遅れるよ!!」


 二階に上がってきた母親はそう言って、一階に下りて行った。その後、天井を数分間見続けた後、憂鬱(ゆううつ)な気分のまま、顔を洗い、歯磨きをして、一階へ降りた。

 玄関で父親が靴を履いている。毎日仕事に行って、自分より早く起きて、さぞ憂鬱(ゆううつ)なのだろう。


 「いってらっしゃい、気をつけてね」

 「おう。透一(とういち)も気をつけろよ。」


 いつも通りの何気(なにげ)のない会話を終わらせた後、リビングへ向かった。テーブルの上には朝食が並べられており、いつも通りにキッチンから見て左奥の椅子に座った。キッチンでは、母親が僕の弁当を作っている。


 「おはよう」

 「やっと起きた。いつも言っても言っても起きないんだから」

 「明日こそは早く起きるよ」


 別に早く起きてないわけではないが、いつも少しだけぼうっとしてしまう。憂鬱(ゆううつ)さを少しでも紛らわしたいのだ。そんなことを思いながら、朝食のパンを口に放り込んだ。味は、少し・・・そんなことはどうでもいい。学校に行きたい気分になってきた。

 別に僕は不登校とかではない。普通に学校に行って、普通に暮らしている。僕は普通の人生を普通に暮らしている。僕は普通が好きだ。普通であればあるほど良い。今制服を着ている。これは普通だ。高校に行く前に、制服を着る。これは僕の中の普通であるものの一つ。朝起きなければならないのも、父親が自分よりも早く起きるのも、母親が作った弁当を鞄に入れるのも全部普通だ。常にそう思っている。

 

 「いってきます」

 「いってらっしゃい、気をつけてね」


 さっきも見た流れだ。けれど、これこそ普通だ。玄関から外へ出る。そして広がる光景。何も変わらない。いつも通りの普通な光景。これこそ僕の求める普通だ。




 少し歩いて、学校に着いた。家から歩いて徒歩10分で着く場所にある。結構近い。学校に友達は結構いる。学校は友達と話していればすぐに終わる。そんな場所だ。下駄箱に靴を置き、三階の教室に向かっていると、


 「よぉ、透一!」


 いつもながらの声がした。同じクラスの友達、山田友則(やまだとものり)の声だ。山田は友達の中でも一番と言っていいほど仲が良い。


 「よぉ山田!今日は体育着持ってきたか?」

 「持ってきたわ。あんまし俺を()めんなよぉ」

 「()めてなんかないわ。心配だよ。心配。俺なりの心配。山田だからなっていう」

 「それを舐めてるって言ってんだよ」

 

 僕たちはたわいもない話に笑いながら教室に入っていった。

 

 「おはよ!今日も元気でええですなぁ」

 「それしか()()がないんじゃないの?」


 エセ関西弁の飯沢玲香(いいざわれいか)とことあるごとに僕たちを小馬鹿にしてくる小口恵奈(こぐちめぐな)だ。飯沢はすごくいいやつだ。小口は飯沢の対になるように冷たい部分が少しある。この二人はお互いがお互いを補っているように見える。だからこそ仲が良いのだろう。ところで小口に対して僕はどうも思っていないが、山田は少し気になっているらしい。

 

 「小口。今日もいい感じに冷たくていいなぁ。俺は悲しいぜ」

 「良くないじゃん」

 「これだから友則は。ろくに言語も扱えないのか」

 「まあまあ恵奈ちゃん、そんな冷たくならなくてええんやで。山田も少しは言ってくれはんな」


 山田は恋愛感情で気になっているのではなくて、心配の意味で気にかけているらしい。将来本当にやっていけるのか、と他人のことながら山田は小口のことを思っているらしい。正直、山田も本気で取り合えば冷たくなくなるのではないかと僕は思うが、真相(こたえ)は闇の中。そう話していると、


 「席に着け。ホームルーム始めるぞ。」


 先生の一言。この言葉で学校が始まっていく。

 ホームルーム、1時間目、2時間目とすぐに授業は終わっていき、昼も食べ、気づけば5時間目と6時間目の休憩(きゅうけい)時間だった。何事もなく終わる一日だ。そう思っていた。閉じられていた扉が開けられ、教室に先生が入ってきて、たった一言。


 「新野。少し話がある。」


 空き教室に呼ばれた僕は信じられない話を聞かされた。両親が捕まった。



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