プロローグ
「シャトルの切り離しを行います。無重力状態となりますので、今一度シートベルトをご確認下さい。また、貴重品等の浮遊にお気をつけください。」
シャトル内のアナウンスを受け、シートベルトとポーチの貴重品を確認する。
シャトルを運んでいた飛行機は、成層圏ギリギリからシャトルを発射する。
無重力を感じるのはこの切り離しから地球側のゲートウェイに入るまでのほんの数分だけ。
現状の地球外旅行における「宇宙っぽい」瞬間はほぼここだけと言っていい。
「皆様お疲れ様でした。間もなく、ゲートウェイ鳥船に到着いたします。お忘れ物にお気をおつけください。良い宇宙の旅を。」
ゲートウェイに到着したあとは、シャトル内にも重力が戻っている。ゲートウェイの重力圏に入っているためだ。
シャトルを降り、目的地向けのシャトル乗り場を探す。
エリシア、アポロタウン、マギシュタイン行き。
奥にトランジットの窓口が見える。
実は目的地は地球外ではあるが前出の3ベースと違い「外国」ではないため、パスポートの提示が要らない。
見回した案内板に目的地「輝夜之宮」を見つける。
さらに周りを見回せば、そちらに向う人の流れがある。案内板に気を配りながらもついていってみる。
窓のある通路に出る。外には、遠くの恒星が少しずつきらめく黒い海。ここはたしかに宇宙なのだ、とやっと実感する。
窓越しに大きく見える月。
あそこに目的地、日本の月サテライトベース「輝夜之宮」があるのである。