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アイドルの墓場(末っ子5)  作者: 夏目 碧央
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最後の晩餐

 訓練所への入所は、十二月と決まった。ユウキ兄さんは手術の前に一度退院した。このタイミングで、一度七人全員で集まろうという事になった。アメリカからシン兄さんとマサト兄さんが帰国して、あるレストランに集まった。

「シン兄さん!」

「レイジ!久しぶりだなぁ。」

いつも絡み合っていた(誤解のないように。殴り合ったりじゃれ合ったりしていたという意味だ)シン兄さんと、こんなに長い間会えずにいたなんて、今更ながら信じられない。俺とシン兄さんはガッシと抱き合った。

「シン兄さん、元気だった?」

「おうよ、もちろん元気だよ。お前は?ちょっと太ったか?」

一度痩せたけど、また最近太ったかもしれないが、言われるほどではないと思うが。「あははは、冗談だよ。相変わらず顔に出るなあ、レイジは。」

シン兄さんが笑った。俺、ますます仏頂面になる。そして、ふとテツヤと目が合った。あれ、なんか無表情?

「さあ、皆揃ったな。乾杯しよう。」

タケル兄さんが言った。そして、グラスを掲げて盛大に乾杯をした。全員でカチンカチンとグラスを当てて、それからシャンパンを飲み干した。このシャンパンは、とりあえずのユウキ兄さんの退院祝いだそうだ。

「皆、すまない。俺の怪我のせいで、グループ活動が長い間出来なくなってしまって。」

ユウキ兄さんがテーブルに手をついて頭を下げた。

「ユウキ兄さんのせいじゃないですよ。」

「謝らないでくださいよ。」

などと、皆が口々に言った。そしてその後、タケル兄さんが言った。

「俺たち、限界でしたよ。あのまま突っ走っていたら、潰れていたでしょう。」

「そうそう。そろそろ休みが必要だったんだよ。」

シン兄さんも言った。

「それに、多分疲れがたまっていたから、ユウキ兄さんは事故に遭ったんですよ。俺たちも、あのままだったら、どこかで事故に遭っていたかもしれない。」

マサト兄さんがそう言った。

 確かに、人気絶頂期だった俺たち。休みがなく、一日にいくつも仕事を掛け持ちしていた。グループの活動がめいっぱいある中で、ユウキ兄さんは曲作りまでしていたのだ。寝る時間だって全然足りていなかったはずだ。

「そうだな。本当は、もう少し早くに休みをもらうべきだったよな。」

ユウキ兄さんが言った。

「俺たちが訓練所に行くのも、会社が本気で厄介払いしたいわけじゃないと思うんです。だって、俺たちまだ人気あるでしょ?だから、本当に色々と実力をつけて、次のステップに繋げていけばいいと思うんだ。」

タケル兄さんが言った。

「俺たちはフロンティアですもんね。他のアイドルがやっていなかった事をやってきた。他のアイドルはみんな二十代で終わりだったけど、俺たちはこれからも、ずっとグループ活動をしていくんだから。」

カズキ兄さんが言った。

「活動を休んだら、ファンは減るかもしれない。その後、活動を再開してもファンは増えないかもしれない。でも、増えなくてもいいから、残っているファンの方々と、一緒に年を取って行きたいと思うんだ。」

ユウキ兄さんがしみじみと言った。俺も、確かにそうだと思った。だから、これからの訓練、辛くても頑張るんだ。そう、心に誓った。

 それからは、マサト兄さんやシン兄さんのアメリカでの失敗談に大笑いしながらたくさん食べ、たくさん飲み、笑いが絶えなかった。これが俺たちのグループだ。昔は喧嘩もしたけれど、それらを経て、本当の兄弟のように「家族」になったのだ。

「これからまたバラバラになるけど、それぞれの場所で頑張ろうな。」

タケル兄さんがそう言って場を〆た。皆は頷き、何となく立って円陣を組み、自分たちのグループ名を叫びながらグルグルと回った。


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