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まずい所に

 俺の兵庫とんぼ返りがあったものの、それ以降もカズキ兄さんの所作に変わりはなかった。いやむしろ、どんどんエスカレートしていく。一体どうしたらいいのだ。

 それから一か月くらい経った土曜日の午後。まだ雪深い網走の空は、どんより灰色の雲が垂れこめていた。

「ねえ、暇だし、しようよ。」

「何言ってんの、何もしないよ。」

「えー、だってほら、反応してるじゃん。」

「触るからでしょ。放っておけば収まるから。」

「えー、収めちゃうの?勿体ない。一回くらいいいじゃん。」

「ダメ。」

「じゃあ、してあげるよ。」

カズキ兄さんと俺がそんな危ない会話をしていたら、突然部屋のドアが開いた。びっくりして顔を向けると、何と、もっとびっくり、テツヤがそこに立っていた。一瞬幻かと思ったが、その驚愕した表情を見て、これは夢でも幻でもなく、現実にすごくまずいものを聞かれてしまった事に気づいた。しかも、今カズキ兄さんは俺の体にぴったりくっついて、手は俺の股間に。

「うわぁ!」

俺は思いっきりカズキ兄さんを突き飛ばした。カズキ兄さんはその勢いでベッドまで飛んでいき、ベッドの上で一回転した。

 テツヤは、それを見届けるとくるりと踵を返し、走り出した。やばい、これはやばいぞ。俺もすぐにコートを手に取って追いかけた。


 テツヤを追いかけて走って行き、橋の上で捕まえた。

「待って、テツヤ、待ってよ。」

「レイジ、お前、浮気……。」

ああ、テツヤが泣いてしまった。俺はなんて罪深いのだ。両手で目を押さえて泣くテツヤを、そっと抱きしめた。

 少し落ち着いてから、近くのホテルまで歩いた。とにかく二人で話をしなくてはならない。部屋に入ってコートを脱ぎ、向かい合ってソファに座った。

「お前、カズキと浮気してたのか?」

テツヤが、すごく怒った顔をしている。

「し、してない、してない。何もしてないよ。本当だって。」

俺、必死。

「テツヤ、俺に会いに来てくれたの?」

「この間来てくれたし、今度は俺がサプライズで会いに行こうと思って。」

ちょっとむくれてテツヤが言う。可愛い。思わずふふっと笑うと、

「そこ、笑ってる場合じゃないぞ。浮気してただろ。聞こえたぞ。お前、カズキに触られて、反応してたんだろ。」

「う……。いや、だから、触られたから反応しちゃったけど、いつも何もしないで収めてるし。」

「いつも!?いつもあんな事してるのか?」

まずい。ますます怒らせている。どうしよう。

「俺は、友達はたくさんできたけど、あんな風にベタベタする人はいないぞ。」

また、テツヤの目から涙が溢れた。俺はテツヤの隣に移動して、慰めようとした。でも、そんな俺をテツヤは押しのける。ああ、本当に怒らせてしまったようだ。

 それで俺は、考えた。もし、テツヤが誰か……タケル兄さんはちょっと考えにくいけど、まあ同室だからタケル兄さんだとして、そのタケル兄さんに恋しているわけではないと分かっていても、もしタケル兄さんに(考えにくいけど)触られて、テツヤが反応していたら……ありえない。いくら物理的にとか生理的にとか言われても、頭にくる。好きじゃない相手なら、なんの反応もしないはずでしょ、と言いたくなる。

 そうだよな。つまり俺は、カズキ兄さんが魅力的だと思っているから、反応してしまうという事なんだよな。自分でも気づいていなかった。

「ごめん。ごめんなさい。俺が悪かった。」

俺はテツヤの横で頭を下げた。そして、カズキ兄さんに好きになったと言われた事、色々と色仕掛けされている事を話した。

「そっか。そうだよな。レイジを攻めてばかりいてもダメだよな。ここは俺の決闘だな。行くぞ。」

テツヤが立ち上がってコートを掴もうとする。

「ちょ、ちょっと待った。決闘って何?」

「俺がカズキと話す。」

「それは分かったけど、せっかくここまで来たんだから、その、一回してからにしない?」

「は?」

「だって、ほら、ベッドあるし。二人きりだし。」

俺がベッドを指さすと、

「バカ!それどころじゃない!それは決闘の後だ!」

と、怒られてしまった。俺たちは、ホテルに入ったのに何もせず、また寮に戻ったのだった。トホホ。


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