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カオスの遺子   作者: 浜口耕平
第一部 エルマの町編 カオスの遺子
35/43

合同任務④ 宝物殿を守る者

 僕は宝物殿の扉の前で右往左往していた。


 扉が重すぎるのだ。片方の扉だけでも大岩のようにビクともしない。


 「兄さんでもこれは無理じゃないかな~?」


 どうしようかと途方に暮れていると、いきなり微動だにしなかった扉がゆっくりと開き始めた。


 「ど、どういうこと? 僕何にもしてなかったのに……」


 ともかく扉が開いたのだから、細かいことは気にせずに宝物殿の中へと入って行った。


 しかし、そこには宝物が一つもなかった。期待していた半面、何も宝物が無かったことに失望して涙が出てきた。


 涙を袖で拭っていると、後から兄さんたちもやって来て、宝物がないことに驚いていた。


 「どういうことよ! 何もないじゃないッ、軍は前もって調べたわけ!?」


 「ああまったく、せっかくここまでやって来たのにこの仕打ちは酷いぞ」


 メリナと兄さんはかなりご機嫌斜めの様子で部屋の装飾などに当たり散らしている。


 「待って! あそこに何かいるわよ!」


 ニトがそう指さす場所をよく見ると、そこにはほこりにまみれた大きなゴーレムが壁と同化していた。


 「うわわっ! 気づかなかった……あれって物語に出てくるゴーレム?」


 「おそらくそうだろうな。動いてないけど」


 「やったー!! ゴーレムだ!」 


 ダンジョン系の物語に出てくるゴーレムは、ほとんどの場面で宝物を守る守護者として描かれている。物語通りなら、ここにゴーレムがいるということは宝物が眠っている場所に近いということだ。


 「確かにゴーレムは宝物殿の番人として置かれているが、動かないなら意味ないんじゃないか? ちょっと触ってみろよ」


 「ええ~嫌だよー急に動くかもしれないじゃん」


 「大丈夫だって、絶対動かないからさ」


 「むぅ……兄さんがそう言うなら触ってみる」


 恐る恐る壁にめり込んだゴーレムに近づいて、大きく武骨な顔に脆いガラスを扱うように慎重に触れた。

 

 ……動かない、やっぱり死んでいるようだ。

 

 「みんな~! やっぱり動かないよ~」


 「そのようだな。昔は動いていたみたいだが残念だ……」


 兄さんはどういうわけか動かないゴーレムに近づいて右手で顔に触れた。


 「何をするの?」

 

 「俺の回復魔法を使えば生き返るかなーって」


 「あはははっ、回復魔法で死んだゴーレムを蘇生するなんて無理に決まってるじゃん」


 論理的で変なことを滅多に言わない兄さんがそんなおかしな冗談を吐くなんて笑えてくる。


 だが、僕を嘲笑うかのようにゴーレムの体に青い火が灯り生き返った。命を吹き込まれたゴーレムは、壁を打ち破ってその巨体の全貌を現した。


 五メートルはあろう巨体は頭が部屋の天井に当たりそうだ。そして、両手で持っている巨大な戦斧は一度奮えば壁を、二度奮えば屋根を、三度奮えば侵入者である僕たちを打ち砕くだろう。

 

 ゴオオオッ!と燃えるような咆哮をあげ、戦斧を構えた。


 「おーヤバいな。あんなの食らったら即死だ」


 「呑気なこと言ってないで早く倒してよ兄さん!」


 「ここまで俺が先導したんだ、コイツはお前たちで倒せよ」


 「無茶言わないでよ! こんな狭い場所であんなデカい相手とどう戦えっていうのよ!」


 「メリナ……お前はロードじゃないんだから自分で物事を解決できるだろ? ニトを見ろ、弓を構えて戦う気満々じゃないか」


 そう言ってから兄さんは入り口から外に出て重たい扉を閉めた。


 一番厄介なものを僕たちに押し付けて出ていった兄さんに怒りが湧いてきたけど、今は目の前のゴーレムに集中しようと怒りを抑え込んだ。


 相対した時、隙が大きいゴーレムに贈り物(ラッキーパンチ)で踏み込んだ。


 小さい部屋にあの巨体では小回りはきかないらしく、近づいてきた僕を足で跳ね返そうとしたが、今までの敵と比べたらゴーレムの動きなんか止まって見える。


 難なくゴーレムの後ろを取ると、贈り物(ラッキーパンチ)で魔力を吸い取るのに体に触れた。


 だけど、おかしなことにゴーレムの魔力を奪うことができなかった。


 「は? ど、どどどういうこと?」


 全ての魔物には全身を魔力が駆け巡っているとローズから学んだ。つまり、相手のどこを触っても魔力を奪い取るには十分であるということだ。


 僕は夢でも見ているのだろうか? 贈り物(ラッキーパンチ)が効かない相手を前に僕は呆然と立ち尽くした。


 「ゴオオオオオオオ!!」


 ついに時間をかけて力を溜めた強力な戦斧が、僕たちめがけて、部屋全体をぶった切った。


 「もう、こんな小さい部屋でデカいものを振り回さないでよ! みんなは平気?」


 「なんとかね、ロードも無事よ」


 ゴーレムの攻撃の寸前にメリナが決死の思いで僕を連れ出してくれたので、怪我をせずにすんだ。


 部屋の壁は攻撃であちらこちらで崩れてしまっている。あと何回持つか……一回かもしれないし、十回かもしれない。予測がつかない以上、早く倒さなければ崩れた部屋の下敷きになってしまうと焦りが顔に出てくる。


 「どうするみんな、僕の贈り物(ラッキーパンチ)が効かないのならゴーレムには魔力が無いってことになるよ」


 「そうねぇ……ロードの魔法が効かないなら本当に魔力が無いのかも。でもそれなら、一体どうして動いていられるの?」


 「………もしかしたらあの青い炎がゴーレムの魔力かもしれないわね」


 「どうしてそんなこと言えるの? 魔力は目で見えないってローズが言ってたよ」


 「よくゴーレムの体を見てみて、青い炎は人間でいう関節の箇所から噴き出しているわ。それに、リードが魔法で触れた時に動きだしたのだから、あの炎が魔力だと確信したわ」


 「わかんないよ、もっと分かりやすく説明してよ」


 「あのねロード、さっきアナタが触れた時にはゴーレムが動かなかったでしょ? でもリードが魔法を使った時には動きだした。これは魔法で蘇生したというわけではなくて、リードの魔力に反応したのよ。と言うことは、あのゴーレムが動いていられるのはリードの魔力のおかげで、あの青い炎が弱点ってわけ」


 「そう言うことか! わかったよ二人とも」


 二人の話はしっかりと筋が通っていてとてもわかりやすかった。ゴーレムの魔力を吸い取ることは兄さんの魔力を吸い取ることでもあるので、少し躊躇いが出てしまいそうだ。


 そう話している間に、ゴーレムは再び戦斧を構え始めた。


 「フン、もうお前なんか怖くないよ。弱点がわかったんだから、ここからは僕のターンだ」


 弱点が分かったらもう戦いは後の祭りだった。


 三人が弱点の青い炎めがけて一斉に攻撃する。ニトが言った通り、青い炎を失った箇所は体から分離して二度ともとに戻らなかった。


 何より目を見張ったのがニトの魔法黒星の五指(ファイブスター)である。


 最大五本の弓矢を放つことができ、それらをまとめて強力な一本の弓として使うことで強敵にも、集団相手にも対応できる万能な魔法だ。その上、その威力はメリナの風魔法でさえ傷一つ付かなかったゴーレムの体を粉々にできるほどである。


 だから、ニトが幻影を追う亡者(リアルミスト)でゴーレムの視界を奪い、次にニトが黒星の五指(ファイブスター)で体を粉砕し、再生する前に僕が贈り物(ラッキーパンチ)で魔力を吸い上げるという戦法を繰り返し用いることで、あっさりゴーレムを倒すことができた。


 「どうやら終わったようだな。だいぶ汚してしまったみたいだが」


 戦闘が終わったのを見計らって兄さんが部屋の中へと入ってきた。その表情はよくやったというものより、部屋を汚してしまったことに怒っているようだった。


 「いいじゃん別に~! みんなで協力して倒したんだからさ!」


 兄さんの元に走り寄って、機嫌を取ろうと笑顔で抱きついた。


 「ちゃんと俺の魔力を吸い取ったか?」


 「え? うん、ゴーレムの魔力は全部残さず吸い取ったよ」


 「そうか……それなら何も言うことはない」


 それを聞いて、心なしか兄さんの表情が柔らかくなったように見えた。まるで、あらかじめ僕が兄さんの魔力を吸い取ってもらいたいがためにゴーレムを起動したような言動だ。


 何かわけがあるのかな?と考えていると、「二人とも、ゴーレムの死体が消えて魔法陣が現れたわ!」とメリナが全員を呼んだので、考えていたことはどこかへと忘れ去って真っ先に魔法陣へと向かった。


 ついに宝物とご対面することができる! 散々嫌な目に遭った旅路ではあったけど、宝物を前に嫌なことは全部吹き飛んでスッキリとした気持ちで魔法陣の中へ飛び込んだ。

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