表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カオスの遺子   作者: 浜口耕平
第一部 エルマの町編 カオスの遺子
33/43

合同任務② ダンジョン

 ダンジョンに向かう道中、ウェインからダンジョンについての基本情報を聞いた。


 なんでもダンジョンというのは、頂上か地下に延々と繋がっている大きな建物のことで、中には得体の知れない魔物や侵入者を排除する魔法罠(トラップ)が至る所に仕掛けられているそうだ。


 しかし、それでも多くの人たちを惹きつけてやまないのは、ダンジョンの奥底に眠る宝物の存在が大きいからだ。ダンジョンに眠る宝物の価値は一地方の財政予算に相当し、ダンジョン物語は子供たちの間で人気の話しだ。


 そんな魅力的な場所であるがためにダンジョンへの侵入は軍の許可が必要で、尚且つダンジョン内の全ての宝物は国が徴収する。だから、物語で言われてるような宝物でバラ色人生を送ることはできない。


 それを知らないアレスは宝探しに躍起になっている。ウェインの口車にまんまと乗せられてかわいそうに……。


 「俺は宝を見つけたら、とっととエニグマを殺してでっかい家を建てるんだ! 公園の真ん中に俺の銅像を建てて俺の偉業をみんなに見せてやる!」


 もうアレスは宝物を独り占めしたい気持ちを隠さずに見つけた後の事を僕たちに力説してくる。そして、ついに馬が止まってダンジョンに到着した。


 馬車から顔を出して外を覗いてみると、それは打ち捨てられた古い遺跡のようだった。かつては高く聳えていたであろう石柱は破壊されていて、そこら中に苔が生えている。


 「ひょーッ!! 来たぜ来たぜ俺の夢の地に!」


 真っ先に馬車から飛び降りたアレスは、早くダンジョンの中に入ろうと出口を探している。でも、ほとんど瓦礫の山になっている状態で入り口を探すことは難しい。アレスも同じ場所を行ったり来たりして中々見つけることができない。


 「そんなことしたって見つけられねえぞ。ダンジョンの入り口は目で見えるものじゃないからな」


 「なんだよーウェイン、それならもっと早くに言って欲しかったぜ。で? どうすれば入り口にたどり着けんだ?」


 「どいてろっ、俺が見つけてやる」


 ウェインは砂魔法でダンジョンの外観を小さな砂の粒子で覆って、目で見えない入り口の位置を探した。

 

 しばらくすると、「あった!」の声と共に邪魔な瓦礫を吹き飛ばすと、大きな扉の輪郭が浮かび上がった。


 「おおっ見つかったか! ならとっとと御開帳するか~」


 入り口を見つけ出すと、待っていた言わんばかりにコルカスが扉の前に立って、両手で勢いよく入り口の扉を開けた。


 ヒューっと空いた扉の奥から風が吹く音が聞こえてくる。どうやら扉の先はかなり長い一本道のようで、バラバラになるより一本の蛇となって行動した方が良いと結論に至った。


 その結果、コルカスらローデイルの兵士を先頭に、後ろは僕たちエレイス王国の兵士がつくことになった。


 ダンジョンの中は入ってきた扉より上下左右共に大きく広がっていて、左右の両壁には誰が灯したのか分からない松明が廊下に続いて掲げらている。


 進むしか道はないので、罠や魔物に注意しながら代わり映えのない廊下を歩いて行く。


 「メリナ~この道どこまで続いてるの?」


 「うーん……無限に続いているんじゃない? 外からそんなに大きいダンジョンだとは見えなかったけど」


 「ええッ!? だったら僕たちもずっと歩かないといけなくなるじゃん!!」


 「そうかもね」


 先が見えないことを知ってしまい、僕はやる気を失って体が重くなるのを感じた。


 「あらどうしたのロード、足が動いてないわよ」


 最後尾にいるニトが歩かずに止まっている僕の肩を掴んだ。


 「もうずっと歩いているのに一向に景色が変わらないから、僕嫌になっちゃったよ! みんなも黙ってないでさッ、他の道を探そうとはしないの?」


 「おいおい勘弁してくれよ。何のためにこんなアホみたいに一列になってると思うんだよ、魔法罠(トラップ)を避けるためだろ?」


 ウェインは呆れた顔で言う。他のみんなも同様で、何も問題ないかのように僕を置いて歩き続ける。


 だから、苛立った僕はワザと右へと足を進め、壁に飾られている松明を取った。それに気づいたニトが、「何をしているの? 早くこっちに戻ってきなさい!」と大声で叫んだ。


 ずっと歩いていたみんなも、騒がしいことを理由に足を止めて僕に松明を置いて戻ってくるよう吠えている。

 

 まるで聞き分けのない子供を見守っている様子で僕の話なんかまともに聞いちゃくれない。その上、兄さんたち大人は戻ろうとしない僕に怒り、無理やり列に引き込もうと近づいてきた。


 「勝手な行動をするな! 早く戻るぞ!」


 兄さんが僕の右腕を掴んで引っ張る。大人しくなった僕の反抗期が再びぶり返したことにとてもイラついている様子で、抵抗する僕の体を力いっぱい引きずる。


 「痛い痛い! 離してぇー!!」


 腕が千切れそうな痛みに涙が出てきて悲鳴を上げる。

 

 「ちょっとリードっ、泣いていて可哀想よ。せめて抱きかかえてあげて……」


 見かねたメリナが苦言を呈すると、兄さんは無造作に手を離した。


 「仕事中は勝手な行動は慎め! 今度勝手な行動したら置いてくからな!!」


 兄さんは強烈な言葉を残して列に戻っていった。


 掴まれた部分が赤、そして青く変色した。回復魔法もしてくれないので、僕は被害がない左手で痣を優しく撫でながら黙って列に戻った。


 「落ち込まないでいいのよ。ただ運が悪かっただけよ」


 列に加わった僕は優しく迎え入れてくれたニトの背中に泣き顔を埋めた。メリナとはまた違う温かさがある背中のおかげで、僕は腕の痛みを忘れて歩いて行くことができた。


 それからも歩き続けたけど、やっぱり出口は一向に見えてこない。そのことで、次はアレスが愚痴を吐いた。


 「コルカスよぉ……お前んとこの国は前進することしか脳がないのか? もう歩いて二時間だぜ」


 ガロンは自分たちの隊長や国を馬鹿にされたことに怒って、アレスの方へとやって来た。


 「道は前にしかないんだからしょうがねえだろ。それともお前は他の道を知ってると言うのか?」


 「ハハハハっ、俺がそんなこと知ってるわけねぇじゃん。犬見てぇにボーっと歩きやがってよぉ……全然進んでねぇよ」


 「ならお前が先頭に立って俺たちを先導してみろよ」


 「ああいいぜ」


 そう言うと、アレスは列からはみ出して左の壁に歩いて行った。そして、壁を伝うように松明を壊しながら進み始めた。


 ダンジョン内の装飾を壊すことは、魔法罠(トラップ)が発動する可能性が高くなってしまう。それを知っているコルカスとウェインは松明の破壊を止めるよう命令したけども、アレスはそんな話最初から信じていなかった。


 「こんだけ破壊してんのに魔法罠(トラップ)が発動しないんだから大丈夫だって!」


 実際、これだけ派手にダンジョンを汚しても何も起こらないのだから、二人の忠告を僕たちでさえ疑っていた。だから、二人の忠告を無視して走っていくアレスを、僕たちはしょうがなく後を追うことにした。

  

 「ハハハっ、やっぱし何にも起こんねぇな! ここいらでちょっとぶちかますかー!!」


 調子に乗ったアレスは、前に広がる松明のドミノめがけてオメガブラストを放った。


 赤い氷が松明の火を覆って僕たちの周辺は一気に真っ暗闇と化してしまった。


 大人たちの激昂する声、メリナたちの悲鳴、何も見えない状況などで僕の頭は恐怖と混乱に冒されてしまい、パニックになった僕は誰かの体を掴んで離れないよう必死だった。


 すると、大混乱に紛れて一際大きい音が聞こえて僕たちは静まり返った。それは石がズズズッ!と動いた時の音だった。


 「ホラ見ろ! 俺のおかげで新しい扉が開いたぜ!」


 アレスは自信たっぷりにそう言うと、音がした方向へと走っていった。しかし、明かりがないために何か物にぶつかって地面と顔がぶつかった。


 「おいおい暗闇でむやみに走ろうとするなよ。怪我するぞ」


 「イテテ……ああウェインの言う通りだぜ。でも、ここら辺りなんだけどな」


 そう言って立ち上がった瞬間、足元に大きな魔法陣が現れた。


 「魔法罠(トラップ)だぞ!!」


 コルカスはそう叫んだが、暗闇に目が慣れてきた僕たちには、いきなりの魔法陣の光に目がくらんで魔法罠(トラップ)を避けることができなかった。


 魔法罠(トラップ)の恐ろしさはその威力もさることながら、真に恐ろしいことは罠に掛かってから発動するまでの時間の短さだ。


 魔法陣が収縮してその効果が無くなった後には、ロード達の姿はどこにもなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ