合同任務① ローデイルの兵士
町で待機命令を受けてから早一か月が経とうとしていた。
ザクレイはまだ王都から帰っていなくて、僕たちは暇を持て余していた。
メリナの部屋に僕とアレスがお邪魔してからメリナの誕生日の出来事で楽しく盛り上がっていると、ドアをノックしてウェインが入ってきた。
「暇してるんだろお前たち、今日はローデイルの奴らと合同任務が入った。すぐに準備しろ十分立ったらここを出るぞ」
「でも僕、待機命令が出てるんじゃ?」
「一か月経っても来ないから命令が変わったんだ。早く準備しろ、向こう側はもう門の前に来てる」
「チェ~せっかくの休みだったのによ。それに、あんな奴らと一緒に仕事なんて心証悪ぃな」
「文句を言うな文句を! それに嫌なら来なくたっていいんだぞ」
「じゃあ俺はお言葉に甘えて遠慮させてもらうぜ」
アレスはまだあの時のことを根に持っているのか、自分の部屋へと戻っていった。
「残念だな。今日はダンジョンに宝探しの予定なんだが、行きたくねえならしょうがないよな」
その言葉を聞いてすっ飛んできたアレスは食い気味に、「盗ってもいいんだよな!?」と脅迫まがいの勢いでウェインに詰め寄った。
本当はダンジョン内の宝物は国家の財産となることが原則ではあるが、アレスの迫力に負けたウェインは窃盗行為を黙認することにした。
こうして、僕たちは急いで身支度を済ませてから、コルカスらローデイルの兵士が待つ西門へと向かった。
西門にはコルカス、リリエラ、ガロンといつもの顔ぶれが並んでいるけど、初めて見る兵士の姿もあった。
アレスとガロンは目が合うと、互いにガンを飛ばし合い始めた。
「何ガン飛ばしてたんだお前、うぜぇからこっち見んなよ」
「はあ? てめえの方だろ、先にガン飛ばしてきた奴は。雑魚のくせにエラそうな口叩くんじゃねーよ」
「たった一回の勝負に勝ったぐらいでイキんなよ。喧嘩処女か?」
「なわけねえだろ。ただ俺と喧嘩した奴は二度と歯向かっては来なかったがな」
喧嘩腰に互いに挑発しながら歩み寄り、しまいに拳一個分の距離まで近づいて何かあればすぐ拳が炸裂するだろう。
ウェインが間に入って仲を保とうとしたけど、コルカスは「面白いから何もするな」と言って険悪な雰囲気を楽しんでいるようだった。
「じゃあ今が第二ラウンドのようだな」
「ああ」
そして、二人の喧嘩が始まった。お互い殺意がこもった喧嘩であるため、流血ぐらいじゃ止めることはない。
呆れてものも言えない僕は初めて会う兵士に挨拶と自己紹介をした。その初見の兵士であるニトグリフことニトは、僕を見るとすぐさま僕の体にすり寄ってきた。
「人形みたいでかわいいぃ~!!」
メリナみたいに細い腕なのに、混血であるニトの力は酔った時のアレスに匹敵する。
「く、苦しい……」
「やめてやれよニト、お前の力じゃロードを絞め殺してしまうぞ」
「はッ、いけないいけない。大丈夫ロード? どこか痛くなーい?」
解放された僕は身を低くして心配してくれているニトを差し置いて、真っ先にメリナの背中の影に隠れた。
むやみやたらに抱きつかれて痛い思いをするのは絶対に嫌だ。ニトはまた僕を抱きあげたいのか、両手を広げてジリジリと距離を詰めてくる。
「いやいやいやーッ!!」
「あーんどうやら嫌われちゃったみたい」
ニトは手を引っ込めて笑っている。何が面白いんだ? 僕はすっごく痛い目にあったというのに……他のみんなも微笑ましい光景を見ているようで誰も体の心配をしてくれない。
「これで全員見知った顔になったわけだ。おいアホども喧嘩は終わったか?」
「ダメだ隊長、二人とものびてやがる」
「しょんべんでもかけて無理やり起こせ。こんな所で道草食ってる暇なんてないんだからな」
リリエラが二人の体を揺すって先に起きたのはアレスだった。
アレスは両手を天高く突き上げて勝利の雄叫びをあげていると、その間にガロンが目を覚ました。
「はいざまぁ! 俺の勝ち、俺のが強い、俺が一番!」
重症の身でありながらも煽るときのアレスの機敏さは通常時より早く感じる。敗北したことを悟ったガロンは腸が煮えかえる思いでジッとアレスの煽りを耐えた。
「一勝一敗だアレス。次はぜってぇー俺が勝つ!」
たった数秒の差ではあったが、負けは負け。ガロンは悔しい思いを次の喧嘩にぶつけることを誓った。
いろいろあって出発予定時刻よりかなり遅れてしまったけれど、二台の馬車に乗り込んだ僕たちは目的地のダンジョンへと向かった。




