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カオスの遺子   作者: 浜口耕平
第一部 エルマの町編 カオスの遺子
17/43

ウェインとリードの休日

 休日は残すとこ後一日となり、全員が大慌てでやり残したことをしようと行動している。


 しかし、たった一人だけ、七日間のほとんどの時間を睡眠に費やしているリードだけは違った。


 疲れはとっくに癒えてるはずなのに、このぐうたらぶりときたらロード達も呆れて声も出なかった。


 子供たちはリードのことなんか忘れて外に行ったのに、ウェインだけは彼を食事に誘おうとベットの横に立っていた。


 「いい加減にしろよお前、いつまでそこに入ってるつもりだ。奢ってやるから飯行くぞ」


 「う~ん放っておいてくれよ~、俺はまだ寝たいんだ」


 「ダメだ今すぐ起きろ。それに、俺はお前が起きるまでずっとここにいるぞ」


 ウェインの言葉に嘘はないように思えた。だから、リードは重い体を起こして一緒に飯に行くことにした。


 好きなだけ食べてもいいと言うが、寝起きなのでそこまで腹は空いていない。それでも、ウェインは俺の意に反して大量の食事を注文した。


 やがてそれらの料理が運ばれてきて、その圧倒的な量に食べてもないのに胃もたれしそうだ。


 「おいおいこんなに食えねえぞ」


 「余ったら持ち帰ればいいさ。早く食おうぜ、飯が冷めちまう」


 半分以上持って帰ることになりそうだ。


 三分の一ほど平らげたところで、俺たちの腹の容量は既に限界の一歩手前まで来ていた。


 「まいったな頼みすぎた」


 「だから言ったのに、こんな大量の料理どうやって持ち帰るんだ?」


 ウェインは机に突っ伏してそうのたまうが、コイツには限度ってものがないのか? ガキみたいに食えない量を頼みやがって、少しは考えて欲しいものだ。


 口には出さないが、正直これ以上の飯を食べる気力はない。かといって、このまま店内で飯と睨めっこしていては店に迷惑だ。


 どうしたものかと苦慮していると、コルカスらローデイルの兵士たちが店に入ってきた。


 「また会ったなお前たち。どうだ俺たちとの賭けに勝った褒美は?」


 「おかげさまで楽しんでるよ。誰かさんはずっとベットにいたけどな」


 「休日をどう使おうが俺の勝手だ。それよりお前ら、食いに来たのなら俺たちの残り物食べていけよ。まだ手はつけていないからさ」


 「よっしゃ! おいリリエラ、ただで飯が食えるぞ!!」


 「食費が浮くので良かったですね。感謝するエレイスの兵士たち」


 話を終えてからコルカスら三人は同じテーブルに座った。しかし、俺にはまだリリエラという男は初対面だったので、自己紹介もかねて彼に話しかけた。


 「ところでお前は誰だ? まだ見ない顔だ」


 「俺の名はリリエラ、この町でローデイルの兵士たちの副隊長をやっている」


 「へえーそうなのか。俺はリード、弟の面倒を見ながら兵士をやっているものだ。これからよろしくな」


 「ハハハハ! 弟の面倒を見ながらって、兵士の仕事はついでかよ! 面白れえ奴だな」


 「あんまりリードを舐めんじゃねえぞリリエラ。なんたって件の魔人を倒したのはそこにいるリードなんだからな。それも一撃だ」


 ウェインの話を聞いて三人は驚いた表情で俺の方を見る。混血じゃない人間がそこまでの力を持っているのは見たことないかのような反応だ。


 「スゲーなそれ。俺もまだ一撃で魔人を殺したことはないな。この中で一番強いんじゃないか?」


 「そんなことはないですよ隊長! 俺は隊長が一番強いって信じてますから」


 「ありがとうなガロン。でもな、実力があるなら認めなきゃならないぞ。お前も今度コイツらの仲間にあったら謝っておけよ」


 「ですけど、俺とやりあったあの赤い奴は俺より弱いから謝りませんけどね」


 勝ったとはいえガロンも酷い傷を負って、今でも額に切り傷が見える。そのためだろうか、ガロンは実力が拮抗しているアレスを簡単に認めたくないのだ。


 「ククク、可愛くない奴だ。すまなかったなウェイン、お前たちのことを悪く言って」


 「もう誰も気にしてねえよ。お前らに勝ったことで逆にアイツら、今まで以上に自信をつけたんだ。それに加えて休日もくれるなんて感謝しかないぜ」


 「ったく、うちの隊長は勝手な事ばっかりしてくれる。通常の仕事に加えて、ウェインたちの仕事もやるなんて最悪の一週間でしたよ」


 「そんなに怒るなよリリエラ~。賭けなんだからスリルがないと楽しくないだろ?」


 「でも、勝手に決めないでください! 今度勝手にそんなこと約束したら、その分の仕事は一人でやってもらいますからね!!」


 リリエラはしたたかな口調で話しているが、目は充血して殺気に満ちている。コルカスを尊敬しているであろうガロンも、リリエラが怒っているのを見てだんまりしている。


 「ええー嫌に決まってんじゃん、賭けなんだからお前らも俺に付き合ってくれよな。ガロンは俺の味方だよな?」


 「……」


 ガロンは下を向いて黙ったままだ。


 何も反応しないガロンに戸惑いを隠せないコルカスの前に、怒りでブチギレてるリリエラが立ちふさがった。


 「おいウェイン逃げるぞ。このままじゃヤバそうだ」


 俺は食いすぎで動けないウェインを背中にのっけて金をテーブルに置いてから、そそくさと店を後にした。


 宿舎まで後ろを振り向くことはなかったが、店を出る際に拳と拳が激しくぶつかっているのがチラリと見えた。

 

 そして、店内から聞こえてくる怒号と悲鳴は店から遠く離れた場所からでさえ聞こえてきた。


 後日談として、実力者の混血同士の争いは町内兵士でさえ迂闊に手出ししたら負けてしまうので、町にいる各国の隊長たちが協力してようやく騒ぎを鎮めることができた。


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