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カオスの遺子   作者: 浜口耕平
第一部 エルマの町編 カオスの遺子
16/43

命の大切さ

 「怖かったよ~。もう! シールがあんな高く投げるからだよ!」

 

 「兵士ならあんくらいジャンプしたら取れるだろ」


 町内兵士にアレスが連行されてから、僕はボールを持ってみんなの所に戻った。そこで騒ぎの原因を作ったシールに文句を言った。


 新しくできた友達は十一歳の男子三人組。

 

 一人目は一番背が高く、プライドも高いリーダー格のシール。よく人を馬鹿にしたり、責任を擦り付ける姿はアレスに似ている。


 二人目は町一番の資産家であるテオの息子マイヤー。ちなみにアレスは、みんなに内緒でテオさんから多額のお金を借りている。


 三人目は村出身で二年前に市民権を獲得したばかりのダン。ダンはその出自のこともあって、よくシールに貧乏人と馬鹿にされている。


 「ロードの身長であんな高いの取れるわけないじゃん。お前のコントロールがクソなだけだったんだよ」


 「ほーんそうかそうか、貧乏人にしてはちゃんと栄養を取っているようだな。おいロード、ヤギから直接母乳を吸うやり方をダンから教えてもらえよ! 背が高くなるかもしれないぞ!」


 「てめえ、喧嘩売ってんのか? 喧嘩ならかうぞ」


 ダンは貧乏いじりをされて怒り心頭のようだ。一方のシールはそれでも挑発するような言葉を投げかけていたので、ダンはシールに飛びかかった。


 シールに馬乗りになって一方的に殴っているダン。そして、それを見ているマイヤーは楽しそうに笑っている。


 「マイヤーは何で喧嘩ばかりしている二人と一緒に遊んでいるの?」


 「見ていて楽しいだろ。小さいグループでも馬鹿騒ぎできるなら俺は幸せだ。お前もそう思うだろ?」


 「まあ……」


 マイヤーは不思議な人だ。家も裕福でそれなりの幸せを手に入れているはずなのに、僕たちと一緒に遊んでいる時間が一番楽しいだなんて。


 僕は友達とは空いている時間に遊んでくれる人たちのことだと思っていた節がある。でも、みんなと遊んでみるとそうではないことがわかった。


 例えば、家の予定をすっぽかして遊ぼうとやって来たマイヤーのように、家族のことよりも友達の僕らを優先したことは、友達の重要性を再確認させてくれる。


 「おっ、終わったようだな。やっぱりダンは強いな」


 考えている間に決着がついたようだ。勝ったのはダン、負けたシールは仰向けに倒れて顔を抑えておいおいと泣いていた。


 「はあースッキリしたぁ! なあ、今から爆竹でカエル殺しに行こうぜ!」


 「うん。道具は揃ってるからまずはカエルを探さないとな」


 二人はノリノリだが、僕はカエルを殺すことにとても抵抗感があったので、引き留めようと呼び止めた。


 「ダメだよそんなことしちゃー。カエルは可愛いんだから殺しちゃいけないよ」


 悪いことをしてないのに勝手に殺すなんていけないことだ。そう僕は正しいことを言ったつもりだったけど、二人にはピンと来てないどころか反論された。


 「お前だって魔物を見たらつべこべ言わずに殺すだろ? 俺だってゴキブリとか見たらすぐ殺すし、生き物を殺すのにどこに違いがあるんだよ」


 「ダンの言う通りだ。俺たちは他の生き物を殺したり利用したりする人間様だぞ。カエルなんか家畜と違って俺たちにほとんど価値がないのだから、殺したって誰も困らねえよ」


 「でもぅ……」


 タジタジになって言葉を詰まらせていると、二人は僕のことなんかお構いなしにカエルを探しに行った。


 「あ! ま、待ってよ~」


 置いて行かれないように僕はシールを起こして一緒に二人の後を追った。



 「ほら捕まえたぞ、早くマッチで火をつけろ!」


 シールが命令してダンがマッチを使って爆竹の導火線に火をつけ、カエルの口に放り込んだ。


 「そら逃げろぉおおお!!」


 カエルを地面に置いてみんなが一斉に距離を取る。数秒後、ボンっという爆発音と共にカエルの体が爆散して辺りに飛び散った。


 「成功だ! スゲーここまで勢いよく死んだのは初めてだぞ」


 「ああ! おいマイヤー次はお前が爆発させていいぞ。あとダンは次のカエルを見つけてこい」


 「おっけー、大きいのを捕まえて来てくれよダン」

 

 「安心しろ。シールのなんかよりデカい獲物を探し出してきてやる!」


 そう言って勢いよく駆け出していくダンを僕は、みんなから少し離れた木の陰で見つめていた。


 「何やってんだロードの奴」

 

 「なんかカエルを爆発させるのはダメだって。だから、ああして離れて見てんだよ」


 「はあ? こんなに楽しいあ遊びなのに何とち狂ったこと抜かしてやがる。おーいロード! お前もこっちに来いよ! 爆発させるのは楽しいぞ!」


 「いやッ! そんなことするなら僕は家に帰る!」


 「また変なこと言いだしたよ。わかったわかった、お前は今日はもう家に帰ってろ。俺たちはまだここで遊んでいくから」


 結局、僕の必死のお願いはみんなには伝わらなかった。シールに言われて、僕は鬱蒼とした気持ちで宿舎に戻って自分のベッドの中に入った。


 「さっきはよくもやってくれたなロード。あの後、俺がどんだけ怒られたか――」


 「ねえアレスはカエルを殺したことある?」


 「話を逸らすな、俺の――」


 「アレスはカエルを殺したことあるの!? いいから答えて!!」


 僕は何故か悔しくて涙が出ていた。


 カエルをあんな風に殺すことは残酷であることに疑いはない。だけど、僕自身も美味しいからと言って家畜や魚を殺したり、人を襲うという理由で魔物を殺してきた。


 そんな僕がシールたちを止めるのに罪悪感を抱かないわけがない。だから、何も言い返せずにこうして宿舎まで戻ってきたんだ。


 「ああたくさんあるぜ! 人間以外の動物はよく魔法で凍らせてから粉々にして楽しんでいたな! お前もようやくその楽しさに気がついたか! 今から俺が教えてやるぜ! ってあれ? ロード?」


 アレスに聞いた僕が馬鹿だった。もっとまともで頼りがいがある人に聞くべきだった。部屋を出て兄さんがいる一階へと向かった。


 僕は兄さんとの出会い頭に、「兄さんは生き物を殺すのと魔物を殺すのとどっちが抵抗ある?」と尋ねた。


 兄さんは戸惑っている様子だったけど、やがてゆっくりと話し始めた。


 「“すべての生命の命は平等”の考えに則るならためらいがあるだろうが、あいにく俺はそんな風に創られてないからためらいはない」


 「それじゃあ兄さんも子供の時、カエルとか小さい動物を遊びで殺していたの?」


 「ある程度ならな。お前も今まで特別なものと思ってなかったのに、急に怖くなって自分から見えないように遠ざけているんだろ?」


 「うん。でも、あんなの見たらどうしたらいいの? 今まで何の抵抗もなく生き物を殺したり、食べてきたのに、今になって僕が他のみんなに殺しちゃダメって言うのは一貫性がないと思うんだ」


 「ハハハハハ! 今は人間のお前が一貫性とか何の冗談だ! いいか人間ってのは情の生き物だ。情が揺れている限り、一貫性という言葉は人間にはないんだよ」


 「じゃあ僕が明日になったら、みんなと同じようにカエルを爆発させて遊んでいるって言いたいの?」


 「そんな極端な事言ってない。俺が言いたいのは、ある程度の妥協を持てと言ってるんだ。お前も兵士として魔物をすべて消すという道のりで犠牲者が一人もでないとは考えてないだろ? つまり、そこには、“魔物と戦っているのだから、誰かが死んでしまうのはしょうがない”と思ってるってことだ」


 「なら、僕はどうすれば……」


 「迷えばいいのさ。非力な人間は迷うことができるが、神は決して迷わない。迷うことでお前はより良い精神を育むことができる」


 「なんとなくわかったよ。ありがとう」


 僕は感謝を伝えて宿舎を出た。体は答え合わせするかのように自然とみんなと遊んでいた公園に向かっていた。


 まだみんなはカエルを爆散させているのだろうか? または、僕の言うことを聞いてやめてくれたのだろうか? 期待と不安を胸に僕はみんなを見つけた。


 「よかった! みんなボール遊びしている!」


 そうとわかったのなら、みんなと遊ぶほかない。僕は走って三人に近づいて行った。


 「おっ、いい子ちゃんが帰ってきたぞ。何やってたんだよお前、家でママと遊んでたのか?」


 「違うよシール、兄さんと大事な話をしていたんだ。それより、何でカエル殺しを止めたの?」

 

 「町内兵士に怒られたんだよ、『子供たちに悪影響を与える』って。俺たちも子供なのにな~」


 シールは不機嫌そうに唾を吐いた。


 「俺たちもなカエル殺しを散々やって来たのに、怒られて急に怖くなってきたんだよ。だから、もうあの遊びはやめだ。よかったなロード」


 「うん! じゃあボール遊びの続きしよ!」


 マイヤーがそう言ってくれてとても嬉しかった。動機は何にせよ、カエルを爆竹で殺すことは今後はやらないと誓ってくれたのはよかった。


 その代わりと言ってもなんだけど、僕は昔作っていた秘密基地の遊びを教えてあげた。すると、みんな食い入るように話を聞いていた。話し終えると、自分たちも秘密基地を作ろうとシールが言いだして、他のみんなも同調した。そして、みんなで材料を買いにでかけた。

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