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カオスの遺子   作者: 浜口耕平
第一部 エルマの町編 カオスの遺子
11/43

ロードとメリナの特別講習

 兵士になってから一週間が経った。


 この頃になると、仕事が体に染みついて初日みたいに寝坊することはなくなった。


 毎日多くの魔物を倒していても、僕はやりがいを感じず最初に持っていた熱い情熱は消えかけていた。


 なぜなら、僕とメリナは兵士になってからまだ一度も魔物を倒したことがないからだ。魔人を倒した僕なら魔物程度、簡単に倒せると思っていた。だけど、現実はそこまで甘くなかった。


 突撃して幾度となく兄さんたちに助けられて、ついぞ自分一人で魔物を倒すことはできなかった。


 なんで上手く行かないんだろう? 最初に魔物と対峙した時は魔法で一方的に倒せたし、魔人を相手にした時はアレスの奇策で勝つことができた。


 「ああ……今日もなにもできなかったなあ……」


 帰る道中なのに気分が落ちて元気が出ない。まるで沼に入っているかのように足が重い。


 「ハハハハハ! 今日も何にもできなかったなぁお前ら! そんなんで給料もらえるんだから楽だよな」


 「そんな事二度というなよアレス! 二人もコイツの言うことを真に受けなくていいぞ、最初の内はみんな倒せないものさ」


 「うん……」


 ウェインがフォローしてくれたものの、僕たちの気分は一向に晴れない。心臓が張り裂けそうなほど辛くて心が泣いている。そんな状態で宿舎に戻った。


 その日の就寝前に僕はメリナの部屋を訪ねてみた。


 「メリナちょっといい? 大事な話があるんだ」


 「ええいいわよ。大事な話って何かしら?」


 部屋にはメリナが机に座っていて僕はベッドに腰を掛けた。


 「あのね……僕兵士として向いてないかもしれない。いつもみんなに助けられていて嫌になっちゃった」


 「……そうね、私も一日でも早くみんなと一緒に戦うために魔導書で勉強してるんだけど成長が見えないのよ。だから、力になれないと思うわ」


 ふと目を机にやると、数冊の魔導書が開いて内容が見えていた。おそらくメリナは慣れない魔法を使いこなすために必死に勉強していたのが伺える。


 「そうだウェインに聞いてみましょう。ウェインなら私たちにいいアドバイスをくれるでしょうから」


 「そうだね! それじゃあ一緒にウェインのとこに行こう!!」


 僕たちは部屋を出てウェインの元へと向かった。


 ウェインは一階で明日の任務内容に目を通していた。


 「どうしたお前ら、二人そろって何か用か?」


 ウェインは手を止めて僕たちをソファに座るよう誘導した。そして、兵士として自分たちが役に立っていないこと、強くなるためにどうしたらいいのか分からないことなど、痛切な思いを正直に打ち明けた。


 「それは辛かったな。だが、前にも言ったように最初はみんな弱いものだ。そこまで焦る必要はない、戦闘を通して勉強して強くなっていけばいい」


 「いや! 僕たちは今すぐに強くなりたいの!! 何年も時間をかけてなんかいれないよ!」

 

 「実践以外にもっと効果的な方法はないの? このまま戦闘に参加できないなら学べるものも少ないわ!」


 僕たちは必死だった。ここでウェインにあしらわれたら、強くなる機会を永遠に失ってしまうかもしれない。


 縋るような気持ちでお願いしていると、「そこまで言うのなら、外の任務は当分の間お預けで、基地で座学でもしてみるか?」と提案してくれた。


 僕たちは秒で彼の提案を了承した。


 「よし! じゃあ明日俺が頼みに行くからお前たちも一緒についてこい」


 こうして、僕たちは二人で特別講習を受けることになった。


 朝になり僕たちはいつもより早く起きてまだ町が眠りから覚めない中、ウェインに連れられて基地にやって来た。


 基地の中は町とは違って既に人がいて活気に満ちていた。


 「おいローズちょっといいか?」


 「こんな朝早くから何の用? こっちは忙しくて死にそうなんだから面倒ごとはやめてよね」


 ウェインが呼ぶと、部屋の向こう側から優しいそうな綺麗な女性が出てきた。


 「新しく入ってきたこの二人に魔法の知識と戦い方を教えてやってくれ」


 「えー仕事が増えるのは嫌よ。それにそんなことウェインが教えればいいでしょ! こっちは忙しいの!」


 「頼むよお願いだからさ~。俺もそんな教えながら戦うほど器用じゃないから」


 「無理なものは無理よ」


 ウェインが何度もお願いしたけど、ローズは頑として首を縦に振らない。


 「う、うぅ……誰も教えてくれないよ~」

 

 強くなる手段を断たれた僕は悲しすぎて涙が出てきた。


 「ちょっと泣かないでよ。こっちにも都合があるんだから」


 「あーあ可哀想に、誰かさんがお願いを聞いてくれないから小さい子供が泣いてしまったじゃないか」


 ローズは僕が泣いているのを見てタジタジとなった。ウェインはその機を見逃さず、情に訴えかけて彼女の心を揺さぶった。そして、続くようにメリナも同じことをした。


 「ああわかったわよ! やればいいんでしょ! やればッ!!」


 「流石だなローズ。じゃあ後はよろしくな、二人もちゃんと言うことを聞くんだぞ」


 ウェインはローズが納得したのを見届けると、そそくさと基地から出ていった。

 

 特別講習が受けられることに歓喜して、涙も悲しさも吹き飛んだ僕はメリナと手を取り合って小躍りした。


 「ふーっ、受けてしまったのだからしょうがない。ほら二人とも騒いでないでついてきなさい」


 「はーい」


 僕たちはローズに案内されて、使われていない基地の一室に入った。

 

 部屋は整然と並べられた長机とそれぞれに椅子が均等に置かれていて、左右の本棚には魔導書、前には大きな黒板が設置されている。


 「好きな椅子に座っていいわよ。最初に魔物の行動について授業するから、準備している間この本を一通り見ていなさい」


 最前列に座った僕たちに“魔物とは何か?”という本をそれぞれ渡すと、ローズは教室から出ていった。


 配布された本を見ながら落丁や抜けている個所が無いか確認していると、ローズが多くの資料を抱えて帰ってきた。


 「それでは授業を始めます。私の名前はローズ、大学で六大元素について勉強した後にこの基地に就職しました。毎日多くの仕事を片付けても、次の日になったら溜まっているから、最近は仕事をやめようかなと思っていたんだけど、ここは給料がいいから簡単に辞められないのよね。それに――」


 授業が始まると思いきや、いきなりローズの身の上話と苦労話が始まった。


 かれこれ十分ほど経った後に、メリナが話を止めて授業をするようお願いした。そうしなければ、延々授業と関係ない話を聞く羽目になっていただろう。


 「そうねとっとと終わらせましょう、と言いたいのだけど、この授業は一か月程度を想定しているからすぐにどうなるってわけじゃないから悪しからず。それじゃあ始めましょう! まず6ページを開いて」


 思ってた以上に長丁場になりそうだ。二人とも勉強は嫌いだけど、この授業を乗り越えれば何らかの変化が僕たちに起こるだろうと信じて授業に集中する。


 そこから数時間後、一日目の授業が終わった。休憩もしながらではあるけど、何時間も座学する経験は初めてなので終わった時には疲れて呆然としていた。


 「はい今日はここまで! 明日、授業の初めに今日習ったことについてテストするから、きちんと復習しておくように!」


 ローズは教室から出ていく際に笑顔でそう言い残していった。


 「私、ついて行けるかしら……」


 今日習ったことは数十ページにもなる膨大な量だった。


 ローズは一週間おきに教材を一つ終わらせると言っていたから、この驚異的なスピードについて行けるか二人とも心配になった。

 

 でも、今はそんな事より復習して明日の試験に備える必要があるから、急いで勉強道具をまとめて宿舎に帰った。


 宿舎に帰ると、すぐにメリナの部屋に集まって勉強を開始した。


 夕食を食べる時も、移動する時も、絶え間なく勉強して知識を頭の中に叩きこんだ。途中、アレスが邪魔しに来ることもあったけど、兄さんが邪魔できないように空間魔法の中へと閉じ込めてくれたこともあって集中して勉強に取り組むことができた。


 テスト当日、僕たちは試験が始まる前まで教材に目を通していた。


 「じゃあ始めるから教材をこっちに渡してね。解答時間は私が終わりと言うまで、あと点数が低すぎれば追加試験もあるから気を付けるように。それじゃあ始め!」


 試験が始まった瞬間、ペンを取って分かるところを優先して解答していく。わからない問題も試験が終わるまで必死に考えて答えを書いた。


 試験が終わると、ローズはすぐさま答え合わせを始めた。


 僕たちは合格を祈りながら彼女が全ての答案を採点するのをジッと待つ。

 

 「おめでとう二人とも合格よ!」


 「やったー!」

 

 昨日、今日とで勉強してきた成果が出て苦労を共にした僕たちは合格を互いに祝福した。


 「ほらほら二人とも喜んでる暇はないわ、さっそく授業を始めましょう!」


 歓喜から一転、現実に引き戻された僕たちは再び苦学の門に入っていくのだった。


 それから、一週間僕たちは地獄の座学を耐えた。一人も試験に脱落することはなかったけど、僕たちの精神と体力は限界に来ていた。


 一日の休暇を挟んで今日からは町の外で魔法学が始まる。


 座学から解放された喜びと一日の休暇のおかげで、スッキリとした気持ちで次の授業を受けることができた。


 「次はいよいよ魔法学についての勉強よ! まず誤解しないで欲しいのは、魔法なんて魔導書読んでその通りにすれば誰でも使えると思わないでちょうだいね。市販で売られている魔導書は文字さえ読めればいいけど、兵士などが使う魔法はより高度で多くの経験と知識が必要だからしっかりと体と頭で覚えていってね!」


 「はーい質問いい?」


 「なにかしらロード?」


 「何で市販の魔導書と兵士たちが使う魔導書で内容が違うの? みんな兵士と同じような魔法を覚えたら、みんなで魔物と戦えるようになるのに」


 「いい質問ね。確かにみんな強力な魔法を使えれば、より魔物に対抗できるようになるでしょうね。だけどね、ウェインから既にカオスの遺子について聞かされたならわかるでしょう。奴らに襲撃されれば国家の秩序が不安定になって、多くの人々が日々の生活を失ってしまうの。その時、行き場を失った人々が強力な魔法を持っていた場合どうすると思う? 生活するために武力を使う人間が出てくる。だからこそ、人々には良識と使命を持った兵士たちがいるのよ」


 どうりで町の市民たちは魔法を使うことが少ないのかが分かった気がする。

 

 彼らは安全を僕たち兵士に任せているから、そこまで強力な魔法を使う必要性に迫られることがないんだ。逆に、僕やアレスと言った市民じゃなかった人々は、厳しい環境の下で生きていくために力をつける必要があったんだと。


 「ありがとう。よくわかったよ」


 「あ、それじゃ私もこの前から気になっていたことなんだけど、どうしてカオスの遺子の存在をみんなと共有しないの? 魔界の神だったら人々も遺子たちと戦うことを支持すると思うのだけど……」


 メリナはカオスの遺子の存在がなぜそこまで秘匿されているか疑問だった。事実、カオスの遺子の存在は軍関係者と有力な権力者にしか伝えられていない上に、故意に他人に吹聴すれば命を落とす誓約の儀式をしなければならない。


 「それはカオスが私たち人間の神でもあるからよ。もし、このことが人々に知れ渡ったら人々は対立して、人間同士で戦いをする羽目になると思うわ。だから、この戦いが終わるまでは絶対の秘密としておかなければならないの」


 「本当にそうかしら? 私が思うにみんな知ったとしても対立することはないと思う」


 「とにかく言ってはならないことなのよ。それじゃあ授業を始めましょう、まずは――」


 ローズはメリナがまだ納得していないのを無視して授業を開始した。


 最初の三日間で、六大元素の性質と派生元素について習った。


 その後の五日間で、自分の特性に合った元素を探して基礎的な魔法を習得した。


 この五日間でメリナの得意元素は風だということが分かったけど、僕は依然として得意元素が見つからず、既に使っている魔法を上達させることにした。


 そして最後の十日間で、魔物と戦うための実践を繰り返した。


 全ての日程を終えた僕たちは一か月前と比べて確実に強くなっているのを実感している。


 最終日、僕たちはウェインたちも見守る中で魔物と一騎打ちすることになった。


 まずはメリナから。メリナの相手は巨大な昆虫の魔物だった。


 「ねー! キモイから別の相手じゃいけない?」


 「ダメっ、苦手意識を持った相手と戦って克服できればアナタはもっと強くなれるわ! 今まで習ってきたことをぶつけなさい!!」


 先生から喝を貰ったメリナは仕方なく魔物に向かって構える。


 不快な羽音を周囲に響き渡らせ俊敏な動きでメリナに襲いかかった。


 「やるじゃねぇかメリナの奴。この前まで自分でタンクしてたのによぉ。ほらメリナぁ! 右だ右ィッ! もっと近寄れぇえ!!」


 アレスは酒瓶片手にメリナたちの戦いを肴の代わりとして楽しんでいた。

 

 「……っうるさいわね。どっから湧いてきたのかしらあの酔っ払いは……。いけない! もっと戦いに集中しないと!」


 酔っ払いの声に一瞬気を取られてしまったものの、すぐに立て直して魔物の攻撃を避けながら敵の姿や動きを観察することに集中した


 「確か昆虫の飛行型の魔物は、素早い動きで動き回って身動きが取れないよう手足を優先に狙うのだったかしら」


 座学で学んだ魔物の特性を思い出して、メリナは立ち止まり右手を魔物に向けて差し出した。


 「さあ遠慮なくかかってきなさい」


 「どうしたのかなメリナ。あれじゃあ腕を捨てるようなもんじゃないか」


 「メリナのことだ。何か考えがあってのことだろう。お前もアイツの戦いをよく見て考えろよロード」


 兄さんの言う通り、僕もメリナが易々と自分の右腕を差し出すようなことはないとは思う。でも、無防備に立っているだけで、魔法を使う姿勢を見せないからハラハラして見ていられない。


 魔物は首を何度か傾げる仕草をした後、メリナめがけて一直線に向かって行った。


 「今だ! 風斬撃(クラリス)ッ!!」


 鋭い魔物牙がメリナの腕を捉えようと口を開けた瞬間、メリナは逆に自らの腕を開けた口の中に入れて魔法を放った。


 内側から風魔法をくらった魔物は爆発四散してあちこちに体が飛び散った。


 「ブスがダウンンッッ!!」


 勝った瞬間、僕たちは拍手と喝采をメリナに送った。僕たちは近づいて行って労いの言葉をかけた。


 「みんなありがとう。特にローズ、この勝利はアナタのおかげよ」


 「いいえアナタが頑張ったおかげよ、私の力じゃないわ。さて次はロードね。でも、魔物が見当たらないわねどうしようかしら……」


 「心配するな。こんなこともあろうかと、実は一匹俺の魔法で魔物を捕まえてある」


 兄さんはそう言って指を鳴らすと、空中に亀裂が入って中から全身棘だらけの人型の魔物が出てきた。


 「あわわわわ、なんかすっごく痛そう」


 「ほらビビるなロード。簡単なことだ奴に近づいてお前の攻撃をぶつければいい」


 「わかったよ! よし行くぞォオ!!」


 気合を入れなおして僕は魔物と直線上で対峙した。距離はおよそ十メートルほど、走れば三秒かからず魔物の懐に入れる近さだ。


 でも、僕はあえて魔物から距離を取った。


 あの体中に生えている鋭い棘が厄介だからだ。全て叩き壊さないと、僕の拳が本体に届かない可能性もある。だから、僕は最初に相手の動きを見ることにした。


 どう動く? 走って来るか、それとも相手も距離を取るか。いずれにせよ、僕は相手が動くまで動くつもりはない。


 すると、考えている最中に魔物が体中を震わせた。


 「ッ!? 何だろう、一体何をするつもりだ?」


 その時、魔物の棘が体からあらゆる方向に勢いよく発射された。


 僕は急いで顔を手で覆って防御したけど、数本の棘が体に深く突き刺さった。


 「ふええええええ!! 痛いよぉお! 痛いよぉお!」


 僕はあまりの痛さに号泣した。


 「おいリード! 大丈夫かアイツ、すっげえ泣き叫んでるぞ」


 「痛いだろうな。でも、これくらいでやられてはカオスの遺子を倒すなんて笑い話になってしまう。お前らもただ見ていろ、アイツがこの境地をどう抜け出すか」


 みんな僕を心配して助けに向かおうとしたけど、兄さんがみんなを制止させた。


 「このままでは死んでしまうわ!」とメリナに言われても、兄さんは助ける素振りを見せない。


 そんな中、魔物は既に棘を再生させて二発目の発射に備えてまた体を震わせた。


 「来るわよロード!」


 メリナが叫んでくれたおかげで僕は身を地面に伏せて棘の攻撃をくらわずに済んだ。


 ホッと胸を撫でおろして魔物を見るが、魔物は棘を再生している途中だった。

 

 再生が早すぎてこれでは攻撃どころか近づくことすらできない。魔物は一歩もその場から動いていないのに、一方的に僕がやられている。


 どうにかして近づくために思考を張り巡らせるが、時間間隔で飛んでくる棘の前では気が散って十分な思考を繰り出すことはできない。


 それに体を動かすたび、その振動で棘が動いて棘がより深く刺さって強烈な痛みがこみ上げてくる。


 何もできないので諦めかけた時、僕はある変化に気が付いた。


 それは棘の再生時間が回数を重ねるごとに長くなっていることだった。普段ならこんなこと絶対に気がつかないはずなのに、生への執着心から勝負を決定づける重要なことに気がつけた。


 僕は立ち上がって魔物に向かって走りだした。


 「ぐぅ! 痛い、痛いけどここで走らなかったら終わりだ」


 痛みを精神で押さえつけながら僕は走った。

 

 そして、五メートルほどまで近づいた頃、魔物は棘を再生し終えていた。


 この距離で棘をもらうのはマズい。辺りを見渡して隠れる場所を探すが、そんな都合のいいことはない。地面に伏せてもこの距離なら確実に棘の射程範囲内に入っている。

 

 僕は覚悟を決めた。魔物が体を震わせても魔物に向かって走り続けた。


 次の瞬間に棘が発射されると、腕で隠している顔以外の体全体に棘が刺さり身が千切れるほどの痛みが全身を包み込む。


 「うおおおおおおお!! くらえええええ!!」


 それでもなお、僕は雄叫びをあげながら魔物に向かって魔法陣を展開した右腕で体に触れることができた。


 光に包まれた魔物は最後の絶叫をあげながら地面に倒れ込んだ。


 興奮した状態が一気に覚めて、僕は痛みのあまり気を失った。


 目が覚めると、そこは宿舎のベッドの上だった。


 包帯が体全身をグルグル巻きにされていて、ミイラのような風貌だった。


 「おっ、起きたかロード。すげぇ根性だったなお前。これでお前もメリナも明日から一緒に戦えるってわけだ」


 「そうか…一緒に戦えるんだ、ハハハハハ! 戦える! 僕は戦えることを自分で証明したんだ!!」


 体中を幸せな空気が流れていく。明日から本当の兵士としての生活が始まる。

 

 この夜は、その喜びから笑みが寝るまで絶えることはなかった。

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