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忍び寄る黒影

クアドとラヤンとイトゥサの性格が出てるシーンです。


 ジョラスの商隊は東の山脈のふもとにあるトゥメニヒへ向かう為に翌朝早くに出立した。

別れはいつも人々を寂しくさせ、特に人懐っこいジョラス達が去った後はまるで火の消えた暖炉のようなもの悲しさだった。

村の人々はいつもの静かな生活へ戻ろうとしていた‥。

その時、見知った顔の青年が頭や肩から血を流してフラフラと広場へ戻ってきた。

「テオラロ!ジョラスの商隊が襲われた!!戻って来た若いもんが広場で倒れとる!」

「守衛当番のヤツは槍と盾を持って俺と向かうぞ!」

「ラフェロスや長老達は女、子供を任せた!」


「トゥムク!子供達がいない!!!」

妻ラサの悲鳴を聞いてトゥムクは槍と盾を持って飛び出して行った。

10歳になるクアドのテーブルに、

「グアネラのお祝いを買うのを忘れていたので、3人でジョラスに会いに行ってきます。夕方までには帰ります。」という書き置きが残されていた。

ラサは泣きながらグアネラのいるテオの家へ走った。



「なんで昨日買っておかなかったのさ~!」

今年5歳になったばかりのラヤンはイトゥサの頭を小突きながらまるで自分の方が年上かのように威張って言った。

「昨日は皆忙しかったんだよ。イトゥサだって皆の邪魔しないように我慢していたら寝ちゃったんだよ。仕方ないさ。」いちばん年上のクアドは優しくイトゥサの頭をなでた。

「イトゥサの買いたい物、父さんに頼んでおけば良かったね。」ラヤンが気を利かせて言い直した。

「二人とも付いてきてくれてありがとう。」

イトゥサは頼もしい二人の従兄弟を笑顔で見つめた。


以前春の雪解けの頃にも3人でジョラスの商隊の後を追って付いていったことがあった。

あの時はクアドとラヤンの母ラサの誕生祝いにスカーフを買いに走ったのだ。

昼前にはトゥメニヒへ向かう吊り橋の前でジョラス達と合流し、3人の為に特別に沢山のスカーフを見せてもらった。ジョラスは大人の客に売り込むように3人の子供達にスカーフの柄を丁寧に説明して見せた。商隊の者達も3人を赤ん坊の頃から知っていたので、誰もかれもが貴重な甘味を使った飴や保存のきく菓子を3人にプレゼントしてくれて、3人は夢心地で村へ帰って行った。


「またあのお菓子貰えるかな~?」ラヤンが思い出しながらニヤけて言った。

クアドが急に立ち止まり、ラヤンもイトゥサもその背中に顔をぶつけて立ち止まった。

「クアドどうしたの?」「シッ!静かに!」

3人が耳を澄ますと剣戟の音が森の中から聞こえてくる。

「ジョラス達?助けなきゃ!」「僕達じゃ足手まといだから、村から大人を呼んでこよう!」クアドがラヤンとイトゥサを振り返るとその後ろには黒布を纏った男が音も無く佇んでいた。


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