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ご主人様♥

「ちょ、ちょっと待ってくれ、いきなり何を言い出すんだよ!!」


祐介が驚くのも無理はない。

何故なら、今日あったばかりの人に馬乗りになりながらいきなり訳の分からないことを言われたのだ。それが普通の人なら何が何だか頭が混乱するだろう。それは祐介も同じことだ。

いや、今の祐介はもっと混乱していた。

何故なら、この学校の制服は女子はスカートをはくのが校則だからだ。

そして彼女は寝ている祐介の上に馬乗りになっている。

祐介は彼女の顔を見ようものなら視界には思春期の男子には刺激が強い世界が広がっていた。

そんなことを気にする様子もなく彼女は話を進めていく。


「あなたが初めてでした。あんな人前で堂々とあんなことをする人はいるとは思いませんでしたよ。想像の中でしかいないと思っていましたから。それがまさか高校入学式にこんなことになるなんて。私はあの時思いました、これは運命なのだと。もう二度とあなたのような人には会えないでしょう。だから私のご主人様になってください。お願いします。」


彼女は一人で早口にそう語る。

頬を赤く染め恥じらいながら。

しかし祐介はそんな彼女の顔を見ることはできなかった。


「頼むから、そこをどいてくれー-!!!」


祐介は馬乗りになる彼女に叫んだ。

その声は、部屋に収まらず。校舎の外まで響いた。

まだ学校の敷地内にいる生徒はどこからか聞こえてきた声を探したという。


2人は一度落ち着いて一つの机に面と向かって座り、なぜこうなったのか整理した。


「もう一度聞かせてほしいんですけど。」


「はい、ご主人様♥」


「あなたの名前は ゆばり 愛深まなみ

俺と同じ1年生で初めて祐介とあった場所は1年専用玄関下駄箱前でそこでえーと、俺が、君の、そのー、」


「はい、私の胸を人前で鷲掴みにしたんです♥最初はいきなりだったので驚いてあんなことしてしまって本当にすいません。」


祐介はまだどこか落ち着かない様子だったが愛深は祐介に夢中だった。

愛深は本来人前では物静かな性格で自分から積極的に話しかけることは殆どあり得ない。


「そのことについては、本当に申し訳なかったよ。ただ、自分の靴を探してただけなんだ。」


祐介は愛深の胸を掴んだことを謝り、誤解を解こうとした。


「ふふ、またそんなこと言って。いくら何でも靴と間違えて私の胸をもむなんてありえないですよ♥」


しかし、愛深は信じなかった。


「本当は私がいたことに気が付いていたんでしょ♥それで、靴を取るふりをして私の胸をもんだんでしょ♥さすが私の運命の人です♥」


むしろ、愛深は人の話を全く聞いてはいなかった。

運命のご主人様に会えたことで愛深は頭の中でいっぱいいっぱいだった。

愛深は悩ましげな表情で甘い吐息を漏らしながら両手で赤く染まった頬を押さえていた。体も時折くねくねと捩らせながら。


「でも、最初に触られたときは驚きはしましたけど、とてもドキドキしました♥あの時の幸福感と言ったら他に類を見ないものでした♥やっぱり自分で触るのと他の人が触るのでは全くの別物でした♥お願いです、もっと私の胸をいいえ、私の体を好きにしてください♥!あれ?」


愛深が祐介がいたところを見るとそこに祐介の姿は無かった。

部屋の扉は開いていて机の上に部屋までの案内図の紙が置かれていた。

その紙には

「ごめんなさい。」

そう一言書かれていた。


「そんな。」


紙を見て愛深は落ち込み、祐介が逃げたことで諦めた

かと思ったが


「もう、恥ずかしがりのご主人様なんだから♥」


そんなことはなく、むしろ火に油を注いだことになったことを祐介は知ることはなかった。


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