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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

課金中毒者異世界でも課金する〜課金は娯楽のためにするのではない、生き延びるためにする物だ〜

作者: ネリムZ

 俺はいつものように買い物に出ていた。


「帰りにいつもの買っとくか」


 いつものとは課金するための物だ。

 いつも買い物帰りのコンビニで勝っている。

 特にゲームで引きたいガチャなどないが、ただ課金とゆう娯楽に使いたいのだ。

 課金はするまでは楽しいのだが、した後はあんまり使ってはいない。

 嫁に無駄だと言われている。

 だが、嫁は専業主婦で俺が稼いでいるお陰で軽い注意しかない。

 娘も1人いて順風満帆な人生を送っていた。


 しかし、この人生の中でも面倒臭い事が1つある。

 それは会社の後輩だ。

 俺の嫁が浮気しているとか、そんな根拠も無いくだらない事を言ってくる。

 その後輩は女性で俺が仕事を教えているのだが、とても嫌いである。

 どうして俺の最愛の嫁が浮気していると嘘をずっと言ってくるし、偽画像も見せてくる。

 仕事なので仕事内なら話しているが、時々お茶などに誘われてうんざりしている。


 娘も元気で高校に行っている。

 遺産は⋯⋯まあ、今は特に準備している訳では無い。


「ぬ?おいおいやばいだろ!」


 青信号を渡っている女の子が居るのに、赤信号が見えてないのかスピードを落としていないトラックが女の子に向かって進んでいる。


 俺は無意識に駆け出していた。


 女の子を抱えて反対側の路地に走ってジャンプスライディングで何とか逃れる。

 向こうでトラックと車がぶつかっている。


「大丈夫か?」

「あ、ああり、あり、ありが」


 俺は女の子の頭を撫でてから買い物に戻る。

 あのトラック運転手と車の運転手にはご冥福をお祈りします。

 ま、普通に車から出てきて警察読んでるけどね。


 さて、そろそろスーパーに着く頃だろ⋯⋯閉まってたよ。

 まさか今日は休みの日だった。


「はぁ〜こっから近くのスーパーでもそこそこ遠いんだよな。市場にするか」


 狭い裏路地を通って行けば数分で到着する筈である。


 と、ここら辺は今工事しているマンションが会ったんだな。

 まあ、関係なく裏路地を使いますがね。


 そう、俺は工事現場を離れるべきだったのだ。


「危ない!」

「え」


 声がした方に、上に顔を向けると鉄棒が落ちて来ていた。


 ガランガラン


 地面と鉄棒がある音が響いた。

 後、骨が潰れた音だろうか。


 ◆


「と、ゆう訳で貴方は死にました」

「いや、どう言う訳ですか?貴方は?」

「私は大地の神であり、貴方に3つのチートをあげて異世界に転生させるガイアと申します」

「はぁ?異世界だと?せめて日本にしてくれよ!そもそもあんたの手違いで俺は死んだのか?」

「いえ、手違いではありません。なるべくしてなったのです」

「よく分からん!まあ、100っ歩譲って異世界だとしても、嫁と娘の近況や俺が死んだ後どうなったか教えてくれよ!」


 ガイアさんはとても気まずそうに宇田慣れてから点を仰ぎ、語り出す。


「まず、貴方の葬式は貴方の家族によって行われています。兄家族ですね」

「兄貴が?嫁ではなく?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯貴方の葬式で娘さんは化粧がぐちゃぐちゃに成程に泣いて悲しんでいました」

「よ、嫁は?」

「知ってましたか?娘さんに彼氏がいて、その彼氏も葬式に来てました。挨拶出来なかったって泣いてましたよ」

「他人に泣ける彼氏とは安心⋯⋯てか娘に彼氏が⋯⋯で、嫁は?」

「貴方の会社の人も来ていましたね。特に後輩さんが泣いてましたよ。貴方の嫌いな、貴方を心底特別な存在に思っていた後輩さんがね」

「はあ?後輩が俺を特別な存在?そんな要素どこにあったし?最愛の嫁の浮気の偽装とかすごく俺に嫌がれせをして来たじゃない⋯⋯で、⋯⋯まさか!」

「⋯⋯はい、とても言いづらいのですが、貴方の嫁さんは貴方の葬式にタバコを吸っていました。娘さんに対しても素っ気ない態度で」

「ま、ままま、ままま、まさか!まさか!そんなどうして!きちんと家事も手伝っていたし!幼稚園の送り迎えも行きは俺がやってたし!俺が休みの日には1週間分の買い物や家事全て俺がやってたやん!どうして、どうして不倫なんかするんだよぉぉぉ!」


 涙が止まらない。


「だ、誰ですか!その間男は誰ですか!」

「⋯⋯普通に稼いで普通に優しい性格で貴方の嫁さんが結婚しているとは思っていなくてきちんと家事も手伝ってくれる人ですね。大まかにまとめると貴方の課金中毒を抜いた存在です」

「なっ!」

「そして、貴方の遺産は貴方の家族が頑張って娘さんに4分の3は行きました。娘さんは貴方にとても感謝してましたね。母親には怒りの感情しかありませんね。娘さんは今は彼氏の家に住んでますね。初夜もしてませんのでとても清潔なお付き合いをしております」

「うぅ、どうして、どうして、⋯⋯そ、そうだ!む、娘の彼氏はどんな人ですか!」

「見た目はチャラい、行動もチャラいが、他人にも優しく、困っている人がいると自ら助けに行くタイプで、娘さんを幸せにする為に勉強も頑張っている真面目なタイプですね」

「そうですか、⋯⋯俺は日本には転生出来ないのですか?」

「無理ですね。きちんと理由があります」

「理由だと?」


「はい、その理由は⋯⋯その異世界では色々な神が色々な人を送り混んでいるのでいるのです。その異世界で転生者が有名に成れば間接的でよく分からん理論で転生させた神に信仰が溜まります。神々はその信仰を欲してます。それがその神の力になるからです。私の転生者は皆、寿命を全う出来ておりません」

「え」

「ですが、貴方なら私は生を謳歌出来ると信じております」

「その心は?」

「それが、私の渡すチートスキルの3つですね。私から決めるのではなく、貴方に決めて貰います。なんでも良いので3つお願いします。これが貴方の異世界生活を左右する物だと思ってください」

「ふむふむ、他の転生者は何を望んでいたのですか?」

「ああ、大抵は『成長速度上昇』『無限魔力』『万能アイテムボックス』『鑑定』ちなみに武器も貰えますよ。チートスキルの1枠を武器にする人もいます」

「鑑定がチート?」

「相手の弱点その他諸々が分かるのですよ」

「その異世界はステータスと呼ばれる物があるのですか?」

「そんなゲームみたいな物ある訳ないでしょう。あ、それを求める人もいますね」

「そうですか⋯⋯そろそろ言っても良いですか」

「はい」

「俺が望むチートは『ガチャ、課金あり』『叡智』全てのアイテムや装備を完璧に扱える『ウェポンマスター』ですかね?」

「ふむふむ、ガチャに叡智にアイテム類を完璧に扱える力ですか、叡智はどのような設定に?」

「記憶能力とかが高く、理解力が高い。それと、その世界や他世界の得られるありとあらゆる知識を好きなタイミングで分かる事が出来て、その違う知識と他の知識の情報を合わせて違う物に変化出るような力ですね!」


「長い長い分からない!要約するに鉄の知識と酸素の知識を合わせると酸化鉄に出来る知識を得られる的な?」

「だいたいそんな感じですね」

「あと、様々な知識を好きなタイミングで得られる力ですね。記憶能力と理解力も込で、あと、ガチャはなんでも出るガチャにしますか?」

「お願いします!」

「そうですか、ではそのガチャの初期マニュアル的な物も叡智に入れと来ますね」

「ありがとうございます」

「あと、アイテム類を完全に扱えるのは誰かの武術を入れますか?それとも努力で身に付くような力技ですか?」

「ん〜力技で」


 変に武術とかあると偏りが生まれる気がする。


「ガチャで出たアイテム類も完全に使えるようにした力でも良いですよね」

「その方がありがたいですね」

「分かりました!では、人生はだのようなルートを歩みたいですか?」

「普通に平凡的な感じで良いです。あ、日本に居た時はだいぶ都会に居ましたので自然に囲まれた村の方が良いです」

「⋯⋯珍しいタイプですね」

「え?」

「いや、村人を選ぶ人はいますよ。でも、大抵は成り上がりハーレムを選ぶ人が多いので⋯⋯異世界ではチーハー大抵転生者ですしね」

「は、はあ」

「それでは、そろそろ転生に移りますか」

「あ、待ってください!せめて、せめて最後に嫁も娘の顔を見せてください」

「⋯⋯不倫していた嫁さんの顔がみたいのですか?」

「⋯⋯、ですが、それでも最後に顔はみたいです」

「そうですか」


 ガイアさんが右手を掲げるとそこに円形のモヤが現れる。

 そこに嫁の顔と見知らぬ男が居た。

 とても幸せそうな顔をした嫁の顔を見て、何らかの踏ん切りは付いた。


 次に娘の映像が出てくる。

 俺の墓なるものに彼氏と思われる人と手を合わせて、そして号泣して彼氏に抱き着いている娘の姿が居た。


「元気で、生活してくれよ」

「⋯⋯今の私にはそこまで影響力はないと思いますが、加護を授けておきますね」

「ありがとう、ございます」

「それでは転生の門を出しますね。その門を潜ればここから出て、貴方は転生しています。どうか、第2の人生を楽しんでください」

「はい」

「それと、きちんと人を信じてあげてください。貴方の後輩さんみたいな人を増やさないように」

「はは、それは今でも信じれませんね。後輩は24ですよ?俺なんか40近くだったのに」

「恋に年、身分は関係ないと私は思ってます。それでは、さようなら」

「はい」


 俺はガイアさんが出してくれた門に足を踏み入れる。


「まさか、本当に不倫しているとはな」


 俺では不満だったのかな。


 ◆


 ガラスのない窓枠、いや木の窓だった。

 俺は、本当に転生したようだな。


「@#.eux#!@mxjai/!@a」

「!~/nsk@」


 おっふ、もう一度おなしゃす。

 俺の顔を覗き込んでいるであろうそばかすの目立つ女性と平凡、イケメンでもブサイクでも、かと言って特徴的な物もない平凡な顔立ちをした男だった。

 そばかすを除けば顔立ちが整っており、全体図は分からないが、だがスタイルも良いのかもしれない。

 顔立ちが良いのに体がダメなことは無いだろう。


 俺的にはブサイクでも美男美女とかあまり気にしないけどね。


 さて、今困った事がある。

 言葉が分からない。

 まあ、とりあえずは赤ちゃんの真似事でもしようかね。


「おぎゃ」


 ふむ、これは自分で言わなくてもこんな感じの鳴き声のような声になってしまうな。

 叡智はどうやったら起動出来るだろうか?

 意識を集中させれば出来るのかな?


 集中、集中、叡智!


 なんも起こんねぇ〜

 もしかして、叡智の使い方を教えてくれ!

 叡智カモン!叡智!俺の叡智!ガイアさんから持った3種のチートの1つ叡智!叡智様ァ!叡智の野郎!おいゴラァ叡智!叡智叡智叡智!


「おぎゃ(叡智)」


 どうしたら良いんだよ!


 それから時は流れて感覚的に4ヶ月が経った。


「おーよちよsf」

「あなた、ちょっと#$いよ」


 最近ではだいぶ聞き取れるようになった。

 が、未だに言葉を発する事が出来ないでいた。

 よちよち歩きを習得した俺はこの家をひたすら歩き回った。

 すぐに疲れてその場で眠る。

 これが最近の俺だ。


 課金ガチャのだし方も、叡智の使い方も、ウェポンマスターはそもそもアイテムを握れない。

 父親が抱いて窓から見せてくれる景色が唯一俺に自然を、風景を教えてくれた。


 さらに時が流れて6ヶ月、あと2ヶ月で1年が経つかもしれない。

 いや、まあ俺の誕生日も分からないんだけどね。


「行ってくる」

「気を付けてね」


 叡智の理解力が上がっているからか、1年足らずで言語を理解出来た。

 お陰で父親が畑仕事に毎日行っている事、母親の名前がリシア、父親の名前がクロム、俺の名前がクロアだとわかった。

 クロア、父親のクロムのクロと母親のリシアのアを取って付けた名前だろう。


 それと、この生活での問題点は俺が寝たタイミングを見て、愛し合う事だ。

 別に悪い訳では無いし、寧ろ夫婦仲は良いだろう。

 良いのだが、その音が大きくて起きてしまう。


「いってらっしゃい」


 そしてこれは朗報だな。

 きちんと喋る事が出来るのだ!これは俺の人生を大きく動かしてくれるだろうと勝手な期待をしている。


 さて、そろそろ使うかここ何ヶ月も封印、使い方が分からなかった俺の3種のチート、その中でもダントツのチートスキル!


「えいち」

「なんか言った?」

「なにもいってないよ」


 どうしたら使えますか?誰か、ヒントをください!


 今では自分から窓の外の景色を見る事が可能になった。

 小さい範囲ではあるが外の情報が手に入る。

 だけど、そこに移るのはただの草原だけだ。

 木とかあればさらに情報を得られるだろうが、今の季節は正直分からない。

 暑さや寒さは感じるが、それでの区別が難しいのだ。

 子供の体温は常に高い状態にあるのでな!


「まじでおれのチートどうやったらつかえるん?」

「さっきからどうしたのよ?」

「なんでもないよ。ねぇねぇかあさんそとにいってはだめ?」

「ん〜1歳になるまでダーメ」

「いつになったらいっさいになるの?」

「それはね」


 分かった事がある。

 この世界は1年365日12ヶ月の周期で3月から春、6月から夏、9月から秋、12月から冬、夏は暑く冬は寒い、俺の誕生日は6月の30日だった。

 なので今は4月辺りだろう。


 うむ、日本と同じで分かりやすくて大いに結構!



 異世界感が全く感じられない!

 まあ、別に良いんだけどね。


 俺は中身は大人でも体が子供だからか、本当によく寝れる。


 それから2ヶ月、そして俺の誕生日になった。


「「お誕生日おめでとう!」」

「ありがとう」


 この世界でも誕生日は祝うようだが、ケーキが出る訳では無い。

 いつものと同じような料理が並んでいる。

 この家庭は裕福ではないのでケーキは出ない。

 この村では冬に狩りに出るのでこの夏は冬に狩っていた肉を干していた干し肉を戻してから使っている。

 ケーキを食べるのは国などに住んでいる平民か貴族らしい。

 村で細々と暮らしているよりも国の方が金を稼ぎやすいとかなんとか、よく分からない。

 農民と平民は地位は同じだ。

 いや、ほんと分かりにくい。


 その日の夜


 俺はウトウトとしていた。

 いや、本当は寝ていたのだが、いつものアレをやっている両親のせいで起きてしまったのだ。


『誕生日プレゼント〜叡智の力〜』


 そう、頭に流れ込んできた。

 いや、なんなん怖い!

 え、なになに。


『俺の体だと脳に負荷が掛かり良くない事が起こる可能性があったから1歳になるまで能力が使えなかったと、そして1歳になったので能力と能力の使い方を頭に直接流した』


 ふむふむ、やっと叡智が使えるのか。

 小声なら両親にも気付かれる事はないだろう。


「叡智、知恵の図書」


 俺の意識は違う空間に出る。

 ここは俺の意識の中、精神世界と言った方が分かりやすいか。

 さて、まずはこの世界の事に関する知識が欲しいな。


「世界史」


 適当に想像して適当に言うと、1冊の本が現れる。

 この中にいても外では時間が経っているが、きちんと寝ている扱いになっているのでこの世界から出たら起きた感覚に襲われる。

 さて、まずはこの世界の事に関する事を調べておこう。


 色々と分かった。

 まあ、この村で生活していく分だと正直要らない知識だったわ。

 持っと農業とか金に関する事を調べておくべきだった。


 さて、世界史を読むだけとも数時間が経っており、既にいつも起きる時間になっていたので叡智の知恵の図書から出る。


「おはようございます」

「おう、起きたか、ご飯が出来てるぞ」

「さあ、一緒に食べましょう」

「うん!ねぇねぇ母さん今日から外に出ていいんだよね?」

「そうね、一緒になら良いわよ」

「やったぁ!」


 これでこの村の見た目が分かる。

 まあ、叡智を使えばこの村の全体図が見えるけど、最初はこの目で見たい。


 俺は朝食を食べながら課金ガチャの事探る。

 使い方が分からない。後で叡智で確認しておこう。


「ごちそうさまでした」


 俺は父さんを見送ってから母さんと一緒に村を散歩する。

 扉を開けて外に出る。


「わぁあ」


 俺の世界が一気に広がった気がした。

 村の家は木製で所々に穴があったりもする家があった。

 ほとんどが畑になっている。

 人が住む所々を囲うように畑があり、道がある。

 案外変わった形をしている。


 散歩は村の中までしかダメだと言われたので隅から隅まで歩く事にした。


「よう、その子が言ってたクロアって子か?」

「そうよ、自慢の息子なんだから」

「おはようございます」


 べこりと挨拶をする。

 桑を肩に掛けて持っているので畑仕事に行くところだったのだろう。

 ザ、畑のおじさん風の見た目で麦わら帽子を被っていた。

 ⋯⋯麦わら帽子!


「おぉ、挨拶出来るのか?偉いねぇ」


 おじさんが俺の頭を撫でる。

 俺もいずれ畑仕事をするのかもしれない。

 畑では人参みたいな奴にジャガイモみたいな奴にさつまいも、大根、キャベツ、レタスなどに似た物を育てていた。


 その日の夜


 いつものアレをやっている両親、昨日したばっかではないですか?

 まあ、良いでしょう。寝れますので。


「叡智、知恵の図書」


 俺は知恵の図書に入る。

 今回は俺の3種のチートの1つ、課金ガチャ、正確にはガチャだろうけどね。


「ガチャ」


 そう言うと、薄い1冊の雑誌が現れる。

 それを手に持ってパラパラと開く。


「ふむふむ、これで行けるのか、ガチャオープン」


 ひとつのガチャ画面が現れる。

 画面の上の方に課金とゆう欄があった。

 そこをタップすると課金画面に変わる。


【銅貨100】【銀貨1000】【金貨10000】【白金貨10万】


 ふむふむ、知識では知っているが物の一つ一つの値段なんか調べると滅茶苦茶時間が掛かるので貨幣の価値は今の所分かっていない。

 さて、メインのガチャだな。


【1回100000】【10回900000】


 ふむ、くそ高ぇ。10回だと1回分が節約出来るのか。これは10回安定だな。


 それと、普段の生活などでもガチャポイントは手に入るようだ。

 しかし、課金よりも効率が悪い。

 今持っているポイントは【GP524】だった。

 ワオ、当分引くことは不可能だな。


 それから時が流れ


 ほんと、時が流れるのは速い。

 今の俺は4歳で、生後2ヶ月の妹がいる。

 なんと、妹の誕生日と俺の誕生日は一緒になった。

 4歳差の妹が家族に加わった。

 それと、学問に関する知識を調べて見たのだが、このように小さな村では学校に通う事すら難しい。

 なので、家の両親は文字の読み書きが出来ない。

 俺は叡智で可能となった。文字の読み書きで2年掛かったのは内緒の話だ。

 話を戻して、学校は15から18なのが一般的らしい。

 貴族だとさらに進級して上の学園に行くようだ。

 高校と大学だと思っておく。

 それと、この叡智は本当にチートすぎた。

 悪の組織的なところの場所は大まかな情報を手に入れる事が出来たのだ。

 まあ、それが分かるかと言っても何か出来る訳では無いけどね。


 4歳になった事で村の中なら自由に動いて良いと許可が降りた。

 そして、最近友達もできた。


「おはよう」

「よう来たクロア、今日は何して遊ぶ?」

「お、おはようございますクロア」


 筋肉質の男カイト、清楚系の少女ミア、この2人が友達だ。

 2人とも俺よりも1歳上である。

 カイトは陽気な友達で、ミアは俺と会うと顔を少し染めてくる。

 俺の事が好きなのかもしれない。

 別に好意を寄せられるのは嬉しいのだが、中身がおっさんの俺だとどうしてもミアの事を好きになれない。

 頼む、俺の勘違いであってくれ。


「なんでもいいぞ」

「よし!ならチャンバラだ!」

「わ、私チャンバラ苦手だなぁ」

「なら、見学でも良いよ。ミアの分も俺がカイトとやるよ」

「う、うん、私見学しておくね。頑張ってクロア君!」

「おいおい俺の応援は無しかよ。いくらクロアが好⋯⋯」

「ダメダメ」


 カイトの口を必死に塞ぐミア、俺の勝手な独りよがりの勘違いではないのかもしれない。


「よし、木の枝だ」

「ども」


 木の枝、これを握るだけでウェポンマスターが発動して扱い方が頭に入る。

 しかし、それを完全にやれるかと言われたら不可だ。

 俺の身体だと完璧に扱えない。

 まあ、木の枝なんだけどね。筋トレしようかな。


「よーい初め!」


 ミアが合図を出すとカイトは俺に向かって走り出す。

 カイトは木の枝を両手で握って思いっきり振り下ろす。

 俺はそれを枝を横にして防御する。


「そうだカイト、このチャンバラに負けたら勉強な」

「なっ!」

「はい隙あり」


 俺は木の枝をズラして攻撃を流してカイトの首元に木の枝を刺す。


「ぐぬぬ」

「睨んでもダメだぞ。勉強は将来役に立つぞ。ミアはどうする?」

「私は勉強の方が好きだな。文字を覚えて両親に自慢するの好き」

「なら勉強するか」

「ちくしょう」


 カイトも諦めたようだ。

 俺は叡智の知覚能力をフル活用して文字をカイトとミアに覚えさせていく。

 村で生活していくのに文字よりも計算の方が大切だ。

 時々商人がこの村に来るのでそこで買い物や食物を売っているのだ。

 なので計算の方が大切だ。

 それでも最低限の読み書きは覚えさせていく。


「やっぱ俺はこんなみみちぃことは向いてねぇ!」

「それでもやるぞ〜」


 カイトの文句はサラリと流しておく。

 俺は地面に色々な言葉を書いておく。


「では、カイト読んでみろ」

「むむ、わ、分かんねぇ」

「はぁ〜ミア分かる?」

「うん、え〜と、課金は娯楽、課金は課金するまでが至福、わーい課金最高ー」

「はい正解。ミアはカイトと違って賢いね」

「え、えへへ」

「おい、俺を馬鹿だと言ってんのか!」

「僕ら基準だとね。まあ、村全体で比べたら賢いかもね」

「ほ、ほら、俺は賢いんだよ!」

「それは誰のお陰かな?そもそももっと上をみなよ」

「ぐぬぬ」

「あははは」


 カイトは悔しいそうに、ミアは笑っていた。

 こんなほのぼのとした生活はいつまで続くのだろうか。

 俺はこの世界でも課金したい。

 しかし、金を稼ぐのが難しいのが現状だ。

 だから俺はいずれこの村を出て騎士に志願する。

 騎士だとここよりも良い給料が安定して手に入る。

 昇進すれば金貨も楽に稼げるようになるだろう。

 だが、ここでの生活が嫌いな訳では無い。寧ろ好きだ。

 互いに尊重し、共に協力しながら暮らして行くこの村が。


「そろそろ昼時だね」

「お、そうだな帰るか!」

「そうだね」


 俺達は各々の家に帰って昼食を取る事にした。


 それから時が流れて


 俺は9歳になった。

 妹は5歳で最近では俺にベッタリだ。

 今日も一緒に外に出ている。


「カイト、ミア、ロム、おはよう」


 ロム、去年から友達になった鍛冶屋の息子だ。


「おう、来たか」

「おはようございますクロア君」

「おはよう」

「ほら、クリアも挨拶して」

「お、おはようございます」

「クリアおはよう」

「クリアちゃん、おはよう」

「クリアおはよう」


 よしよしだいぶ打ち解けて来たな。

 クリアは人見知りなところがあるので色々な人と会って打ち解けてくれるとありがたいな。


「そうだ、親父が店に来いって」

「む?なんで?」

「さあ?」


 とりあえず行ってくるか。


 ロムの父親の店は少し立派な建物になっている。

 中にはあると武具もあるが、基本は桑が多い。


「連れてきたよ」

「おじゃましております」

「お、おじゃましております」


 俺の真似をしてクリアがぺこりと挨拶をする。

 他のみんなも各々のやり方で挨拶を済まし、ロムの父親が短剣やら剣を取り出す。


「お前達にはさすがに速いと思ったが、最近は魔物の噂が多い。だから護身用に持っておけ。クロアとカイトは筋力があるから長剣な」

「ありがとうございます」

「おお!ありがとうロムの親父さん!」


 俺は護身用の剣を手に入れた。

 最近魔物が増えているのは風の噂で聞いている。

 この村まで来ないと良いな。


「よし、これでチャンバラを⋯⋯」

「カイト」

「な、なんだよ」


 俺は声のトーンを下げて忠告する。


「こんな殺傷能力の高い物でチャンバラはしない。怪我でもしてみろ、それで悲しむのは誰だ?これで遊べなくなるのは嫌だろ?それに、これは人に向けるものでは無い。身を守るため、いずれ来るかもしれない魔物に向ける物だ。まあ、訓練くらいはした方が良いだろうが普段は人に向けてはならない」

「わ、分かったよ。む?普段は?」

「ああ、もしも守りたい者が人に襲われた時は人に剣を向けるって意味だよ。他にも向ける時はある。だが、遊びでは向けてはダメって事だな」

「ああ、分かった。じゃ、素振りしようぜ!魔物が来ても返り討ちに出来るくらいに強くなってやる!」

「魔物、怖い」

「クリア大丈夫だよ。お兄ちゃんが守ってやるからな」

「うん!お兄ちゃんがいるから魔物も怖くない!」


 やばい、俺は妹離れが出来ないかもしれない。


 それからも時が流れる。


 楽しく遊び、時には勉強を教え、そして俺が14歳、クリアが10歳の時にそれは起こった。

 最悪で災厄の災害が起こった。

 大量の魔物が押し寄せて来たのだ。


「母さん逃げようよ!」


 魔物は近くまで来ている。

 なぜ、どうしてもこんな状態になったんだ!

 村は畑を荒らされ、家は潰れ人は死に、阿鼻叫喚だった。

 まさに天変地異。


「貴方!」


 父親が剣を持ち出して戦いに行くようだ。

 無理だ。無謀だ。

 様々な魔物が居る。


「あなた、私も行くは」

「ダメだ!クロア達を守ってくれ!」

「父ちゃん、俺は大丈夫だ」

「ぐぬぬ」

「クロア、クリアよく聞いて、特にクロア」

「なに母さん」

「生きて、そして逃げて、家の金も全部持ち出して逃げて!急いで」

「うん!」

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!やだよ!どうして!お母さん!」


 ごめん、ごめん、俺にはどうする事も出来ない。

 妹を抱いて家に戻って金と剣を持ち出して村の外を目指す事しか出来ない。

 父さんと母さんは分かっているんだ。

 兵士のいない農民か鍛冶屋の人くらいしかいない戦闘と不向きな生き方をしていた俺達に魔物を倒せても1人一体が限界。

 それすら無理かもしれない。

 俺は母さんにクリアを任された。

 父さんと母さんは命を掛けて俺達を生かそうとしている。

 俺はなにも聞かず、妹の制止も無視して、振り返らずに走る。

 目の前に狼のような魔物が飛び出てくる。


「クロア逃げろ!」

「⋯⋯ッ!いきて、生きてください」


 ロムの父さんが狼の相手をしてくれている。


「ぐああ!」

「いや、いやああああ!」

「⋯⋯」


 ロムの父さんが狼に噛みつかれ、その血が飛び散り妹に当たり妹は気絶する。

 俺は黙って必死に声を殺して、泣いている暇なんてないと考えてひたすら走る。

 ごめん。

 弱くて、守れなくて、ごめん。


「いややや」

「ぐるああ」

「く、くるなあああ」

「子供達を逃がせぇええ」


 あちこちから聞こえる声を俺は聞かないふりをした。

 俺は、どうしたら良いのだろうか?

 俺に出来ることは逃げる事しか出来ない。


「クロア!急げ!」


 目の前にカイト、ミア、ロムがいた。


「ロム⋯⋯」

「いい!何も、何も言わないでくれ」

「ああ、逃げるぞ」


 こんな状況で半分冷静でいられるのは叡智のお陰かもしれない。

 父さん、母さん。

 村のみんな。

 暖かいご飯を作ってくれた母さん、毎日必死に農業に冬には狩りに出てくれた父さん、武器をくれたロムの父さん、優しくしてくれた村のみんな。

 俺達はその全てに目を背けた。


「村のみんなが時間を稼いでくれている。その間に逃げるぞ」


 俺はクリアをおんぶして必死に走る。

 正面に三体のゴブリンが現れる。


「クッソ!」

「⋯⋯クロア!みんなを連れて、逃げてくれ」

「カイト?何言ってんだよ!一緒に、一緒に逃げるぞ!」

「言ってる場合かッ!」


 俺はカイトに顔面を殴られた。


「お前がこの場でいなくなるのが1番ダメだ!俺が、道を作り時間を稼ぐ、伊達に訓練してた訳では無いぞ!」

「⋯⋯クロア」

「クロア君」

「生きて、くれ」


 俺は歯をかみながら走る。

 ゴブリンが迫ってくるがカイトが相手をしてくれる。


「お前らの相手はこの俺だあああ!」

「逃げ切るぞぉ!」

「クロア、生きてくれ」


 最後のカイトの呟きを聞きながら俺は必死に走る。

 何もかもを見捨てて逃げる。

 どうして、どうしてこうなった!どうして魔物が村に一気に来るんだよ!どうなってんだよ!


「ぐああああ!ま、まだまだ!」


 クソ!クソクソクソ!


 目の前から一体のオークが現れる。

 何倍もの体格を持っている。

 反応に遅れた俺にオークは鉈を振り下ろす。


「ダメぇぇえ!」

「ミア⋯⋯」


 ミアが俺を庇って鉈に切られる。


「クロア、す⋯⋯」

「ミア⋯⋯」

「ここは俺が!クロアは逃げて、この事をどこかの国に!お前が1番地理に詳しい!お前が1番頭が良い!生きて得するのはお前だ!逃げろ!それと、この金を託す」

「ロム」


 ロムに金を渡される。

 嫌だ、辞めてくれ!俺が、俺が戦うから!やめろ!


「やめろぉぉおお!」

「クソ魔物めええ!俺が相手になる!」


 俺は、ロムの覚悟を見て、これ以上何も言えずに走り出す。


「どうして!どうしてこんな事になるんだよぉぉぉぉ!」


 ◆


 村が焼け野原になっていく。


 俺はかなり離れた森の中にいる。


「ごめん、ごめん、ごめん、ごめん」


 俺は泣いて謝る事しか出来なかった。

 どうして、どうしてこんな事に父さん、母さん、カイト、ミア、ロム、みんな、みんなみんな死んだ。


「ああ、もう、涙も出ねぇよ」


 もう、終わりかな。


「⋯⋯」


 クリアが倒れてくる。起きたのかもしれない。


「く、くり⋯⋯あ」


 クリアの目は虚ろで焦点が合っていなかった。


『生きて』


 みんなの顔が、みんなの願いが、俺の頭の中には入ってくる。


「生きる。クリアと共に」


 生きてやる!みんなが託してくれたこの思い、願い、その全てを背負って!


「生きる、生き延びる!みんなが生かしてくれたのだから!」


 終わり?死のう?そんなはダメだ!そんな事したら、なんのためにみんなが戦った?村を守る為でもあるだろうが、家族を守る為もあるだろう。


 父さんや母さんは俺とクリアを、ロムの父さんは俺を狼から、カイトは俺達を生かしてくれるために、ミアを俺を庇って、ロムは覚悟を決めていた。

 みんなも覚悟を持っていた。


「なら、俺もだ」


 俺も覚悟を決めろ!生きる、生き延びる!

 何があっても!


 俺はクリアの額に手を当てる。


「叡智、森羅万象」


 本来アイテム類のありとあらゆる情報を嘘偽り無く得られる叡智の力。

 しかし、今回は人が対象である。

 鑑定よりも情報量は少ないが、クリアの心が壊れているのは分かった。

 ショックで声も出せないクリア。


「ガチャオープン」


【GP949132】


 俺の14年間の人生で溜まったガチャポイント。

 前に見たよりもさらに増えている所を見ると命懸けの逃亡でさらに上がった可能性がある。

 人生初のガチャ、俺はこれに掛けるしかないのだ。


【10回900000】


 俺は決意と共にこのボタンをタップした。


 ガチャ画面が神々しい光を発しているが、なぜだか眩しさは感じなかった。

 銀、金、虹に変わっていく。

 そして、10枚のカードが順番に出てくる。

 銅に銀に金に虹のカード。

 銅が5枚銀が2枚金が2枚虹が1枚。

 まずは銅のカードに触れるとカードの内容が分かる。


【N:パン】【N:水】【N:パン】【N:敷布団】【N:パン】


 次に銀


【R:強化石(中)】【R:赤の進化石(中)】


 次に金


【SR:サバイバルナイフ】【SR:ライター】


 最後に虹⋯⋯


「なっ!」


 虹に触れるとさらにカード輝いて、虹の中に銀や金も入っている光になった。


「まさか、昇格!」


 この流れで言うと虹はSSRなはずだ。

 しかし、銀、金と上がっている。

 考えるならURかSUR、銅が無いと考えるとLRかもしれない。

 俺はカードを見る。


【SUR:オロチ】


「来たァ!」


 まずは落ち着こう。

 まず、ガチャのレア度は『N(ノーマル)R(レア)SR(スーパーレア)SSRスペシャルスーパーレアUR(ウルトラレア)SUR(スーパーウルトラレア)LRエジェンドレア』この順だ。

 カードのキャラなどを育成する事によって進化出来る。

 LRの上は1つだけある。

 進化の方法は特定の進化石を使う事だ。

 強化には魔物を倒させたり強化石を使ったり、ガチャポイントを使ったりする必要がある。

 進化の基準はカードのキャラなどに森羅万象をする事で『進化可能』とゆうのが分かる。

 それまでひたすら強化だ。

 進化の材料も森羅万象を使う事で分かる。


「SURなら一体で村を滅ぼせる程の力」


 キャラによってはこれでも過小評価していると思う。


「生きるためには食料が必要だ」


 そのためにもオロチには協力してほひい。

 もしも、俺を攻撃してくるなら⋯⋯カードに戻すしかない。

 そう、このガチャカードのキャラ等はカードに再び戻す事が可能だ。

 パンや水、ライターは戻せない。

 諸費系は戻せないのかもしれない。


「頼む、生きるために、生き延びるために、力を貸してくれ、解放、オロチ」


 木々をへし折り、木よりも大きな8つの頭を持っている龍が現れる。


『力を貸してほしいと聞こえた気がしたが、ソナタか?』

「⋯⋯ッ!あ、ああ」


 デカい、思っていた以上にデカい。

 しかも、一斉に喋るのでそこそこうるさい。

 しかし、それを分かってくれたのか白色の鱗を持った頭が話掛けて来る。


『どうして我々の力を借りたい?』

「生きるため。クリア、妹と生き延びる為」

『我々をどのように使う?』

「⋯⋯友として、貸してほしい」

『まあ、今はそれでも良かろう。しかし、我々を失望させたら、分かっているな?』

「分かった。その時は俺に何をしても良い!だが、クリアは見逃してくれ!」

『貸してもらう立場で要件か?まあ、いいだろう。久しぶりの外だ。解放してくれた礼だと思え』

「ああ」


 俺はオロチの背に乗せてもらう。

 オロチの首が生えているところの身体は蛇のように動くようだ。

 亀の甲羅のようになっていて乗り心地は良くないが、移動には調度良かった。


「助かるよ」

『我々はまだソナタを友として認めた訳では無い。せいぜい我々にソナタの意思を見せてみよ』

「ああ」


 俺はクリアとオロチと共に近くの国を目指して進む。

 道中パンがつきて狼を見つけた。

 ロムの父さんと退治した狼に似た魔物だろう。


「俺が、倒す」


 俺が、俺自身がどこまでやれるか試して見ることにする。

 死にそうになったらオロチに助けて貰う予定だ。


「ぐるあ!」

「⋯⋯」


 俺は剣を使いながら相手の噛みつきを躱して横腹を切り裂く。


「うっぷ」

『全く』


 狼は結局オロチの一頭が顔を噛み砕いて絶命させた。

 俺の剣に狼の血がべっとりと付いている。

 気持ち悪い。

 肉を切り裂いた感触、血が、生暖かい血が剣を伝った俺の手に触れる。


「おぇえ」


 怖い気持ち悪い。

 命を奪った。


「ごめん、 生きるためだからと言っても⋯⋯」


 せめて、きちんと肉を取って骨は埋めておこう。


「くぅーん」

「なっ!」

「くぅーん」

「うぅ、ごめん、本当にごめん」


 俺は無力だ。

 この狼の子供だと思われる小さな狼が狼の死体に鼻を向けている。

 家族を奪われる苦しみは分かっている筈だ。

 いくら魔物せいで俺の家族や友が、仲間が死んだかと言っても、命を奪う事は許される行為では無い。


「ごめん」

「グルグル」

『はぁ〜』

「⋯⋯ッ!どうして子供の狼を?」

『ソナタに敵意を持っていたからな。いい加減しっかりしろ!この世は弱肉強食。生きるためには命を奪う事は必要なのだ』

「だからって⋯⋯」

『ソナタは肉を食った事があるだろう?あれも生命だ』

「知っている」

『誰かが取った物なら関係ないと言っているのだぞ、お前は』

「ハッ!」


 図星だった。

 父さんが、日本では業者が、肉を持ってきてくれた。

 持ってきてくれた肉に関して俺は命を奪われたとゆう考えをしていなかった。

 自ら命を奪った事にしか罪悪感を感じてなかった。


『お前は妹を助けたいのだろう?生き延びるのだろう?なら、少しは耐えてみろ』

「ああ、そうだな」


 この世に完全な平和はない。

 殺すか殺されるか、食われるか食うか、弱肉強食。

 弱い者は到達され、強い者が生き残る。

 生き延びると誓った。みんなに、誓った。


「俺は、生き延びる。みんなの為にも。その為に、俺は、俺は、もう、迷わない」


 人間味を捨てる気は無い。

 しかし、考えの、俺の甘さを捨てる。


「肉を焼いて食べてから行こう。クリアを下ろしてくれ」

『あいよ』


 オロチの頭は8つ、中央の会話をしている白色の鱗の頭が回復魔法を使うようだ。

 オロチから見て左から、青色の水魔法を使う頭、赤色の炎魔法を使う頭、緑色の風魔法を使う頭、白色の回復魔法を使う頭、茶色の土魔法を使う頭、黒色の闇魔法を使う頭、水色の氷魔法を使う頭、黄色の光魔法を使う頭だ。


 それから魔物を倒しながら進み続ける事3週間。

 ついに国に着いた。


「行こうか、あの国に」


 俺達は生き延びて見せるよ、みんな。

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