少年ジャンプかよ
激クサだけど、実際に聞いた時これ泣いた
「俺は浩司。照田浩司。お前の兄だ。覚えてないか?母方に行った兄だ。」侵入者は腰を据え僕に伝える。髪は金髪オールバックで白い特攻服でを着ていて黒いブーツを履いたまま土足で部屋に入ってきていた。「お前いじめられてたんだってな。だから転校して引きこもってるんだってな。いいから走ろうぜ!俺の仲間良い奴ばかりだ。」そう言うと立ち上がり僕を見下ろした。待った。僕が承諾し立ち上がるのをひたすら。なんだか分からないが僕も立ち上がった
。着替えようと思ったが、良いだろ別にと言われ僕はパジャマのまま手を引かれ外へ出た。日差しはそんなに眩しくなくドルンドルンとバイクをふかす者、談笑する者、タバコを吸う者。様々な行動をする者がいたが、みんな一様に楽しそうだった。
「遅かったなコージ」「それがお前の大事な大事な弟かよ」皆が兄に手を握られた弟、僕を見ながらそう叫ぶ。兄はそれを聞いて「うるせーうるせーとりあえずラーメン屋行こうぜ」と言う。僕が今まで誰の表情でも見た事ないような楽しそうな表情だ。生返事とともに皆バイクに乗る。急に手を離し走り出す兄、座席を開けヘルメットを取り出し僕に投げる「お前のだ。柄が好みじゃ無いかもしれないが我慢してくれ」渡されたヘルメットは黒地に白のラインが入っており左側に金字で川宮高也と僕の名前が彫ってあった。「えっ」と漏らすと横にいた特攻服の人が「コージこのヘルメット出来たんか、何や弟にやるためにこの間から徹夜で作ってたんかよ!」と叫ぶと周りも「おいブラコン」「弟にメロメロだな!」とふざけながら兄をいじる。「うるせー!いいんだよ別によ!」と顔を真っ赤にしながら叫ぶ。「とりあえずバイク乗れよ高也行くぞラーメン」複雑な心境だったがヘルメットを被りバイクにまたがる。しっかり掴まってろよとひと言叫ぶと地を蹴って発進する。スピードは早くはなかった。車より少し遅くゆっくり走っていた。数分走らせラーメン屋に到着する。僕の胸はドキドキでいっぱいだった。自分が靴下も履かずかかとを踏んだ靴で、パジャマであることを忘れるほどに頭は爽やかで胸はドキドキでいっぱいだった。興奮したままラーメン屋に入り入口近くのテーブルに座りメニューを兄が見て僕に渡す。「好きな物食べていいぞ。俺のおごりだぜ」そうにこやかに兄が言ったので鶏塩ラーメンを1杯注文する。次々に注文をし無言のままラーメンを待つ。数分後ラーメンが到着し、また無言のままラーメンを食べる。正直味はわからなかった。ただただ美味しいとしか思わなかった。僕が食べ終わるのをじっと無言でみんなが見守る。食べ終わり、勘定を済ませると兄が「寒いけど海行こ海海」と言いバイクに乗った。僕も後からヘルメットを被りつつバイクにまたがる。しっかり掴まってろよの声に答えるように兄の背中に抱きつく。出発してから15分ほどで海岸へ着いた。少し冷たい風が頬と髪を撫で、消える。静かな波の音を聞いていた。浅瀬で浮かぶ海藻はまるで僕のようだなと心の中で嘲笑しつつ兄のアクションを待った。気がつけば兄の仲間達はいなくなっていた。不意に兄は歩き出すと近くのコンクリート塀の上に座った。あとに続くように僕も座った。兄の方を見ると兄は真剣な表情で海を見ていた。何を考えているのだろうと考えていると重たそうに兄が口を開いた。
「お前いじめられて学校行かなくなったんだってな。わざわざ転校したのにな」
その言葉はなぜか鋭く冷たく重く痛い衝撃だった。ついさっきまで笑っていた兄の顔が嘘みたいに感じるほど恐ろしく怖い表情をしていた。黙って俯いていると、こっちを見ろと低い声で言われる。正直怖かった。だが見なくてはいけないという思いに駆られ顔をあげる。すると兄は「人生辛くて逃げ出したい時もあるさ、いじめられて辛かっただろうし逃げたい気持ちもある。逃げることは負けじゃないし、勝ち負けなんてないさ。お前は弱いかもしれない。ただ自分が弱いと諦めても良くはないだろ。本当に強い者は力がある人でも頭がいい人でもない。弱い人に寄り添い同じ立場で一緒に歩けるような人が本当に強い人なんだよ。逃げ続けてもいつかは壁が、越えなければ行けない壁が来る。その壁を越える時1人かもしれない、1人じゃ越えられない壁なのに誰も助けてくれないかもしれない。そんな時は俺らを頼ればいいさ。いつでも助けになるからさ、もし逃げる必要が無くなって前に歩き出した時に周りが見えるようになるだろう。その時に困っている人がいたら手を差し伸べて欲しい。寄り添って欲しい。それがお前の生まれてきた意味だと思う。今が辛い理由だと思う。頑張れ、っていう言葉は間違ってるかもしれないけど応援してるからさ少しでもいいから前向いて歩こうぜ、な?」そうゆっくりとした口調で僕を諭すように言ってくれた。涙が止まらなかった。嗚咽が止まらず中々返事出来ない僕を見て兄は笑いながら僕のヘルメットを小突き、行こうぜ。と言いバイクに跨った。僕はそれに対して大きく頷き鼻水と涙でグチャグチャの顔をパジャマで拭いて兄のバイクへ走り共に跨った。
「正直あの時の言葉はすぐには理解できませんでした。でも、ただただ心に刺さりました、すみません」そう断ると川宮くんは僕に背を向け涙を拭いた。再びこっちを向いた時は笑顔だった。「失礼かもしれないんですが、先輩を見た時僕と同じ境遇かなって思ったんです。だから気さくに話しかけようと思って話しかけたんですよ。応援してますよ!高校行くんでしょう。先輩なら出来ますって僕にも出来たことが先輩に出来ないはずはないです。」
正直なところいまいち噛み砕けていなかった自分がいた。ただ学校に明日も行こうって、川宮くんとまた会おうかなと考えていた。