不登校は辛いぜ
ここまんま筆者
目が覚める。前がぼやけてほとんど見えないが声はする。何だろう、安心のする声だ。その声を聞きながら私は寝た。
僕は田山 負け組だ。行先行先で虐めに遭い、虐められる度に精神疾患がプラスされていくおまけ付きだ。ADHDを患っている。診断されたのは小6の頃だった。小学生の頃はただの落ち着きのない子供だったのだが、中学高校と行くにつれ周りは僕の異変に気づきはじめていた。忘れ物は多い、人の話を最後まで聞けない、急に立ち上がる、怒ると暴れる。徐々に周りは離れ、やがて敬遠から迫害へと切り替わった。暴行、恐喝、罵詈雑言、罪の擦り付け、挙句の果てには僕ともう1人のいじめられっ子で闘技場を開かれたこともある。
辛い。鬱になった僕は中学校へ行くことをやめた。死んでしまいたかった。どうして僕だけが、障害を持っているだけなのに、ただじっと出来ないだけなのに何で僕だけ?ずっとこんなことを考えていたと思う。
そんなある時だった。奴が家に来たのは。不登校になり2年目、周りはすっかり受験モードになっていた頃だろう。インターホンが鳴り響く、誰だと思っていると主は勝手に入ってき。他人の家に、あっここで僕の人生は終わりだな。と悟ると同時に2年間出てこなかった笑みが零れた。こんなことを言うのもなんだが、死にたかったが自殺はしたくなかった。消えたかった。スッとこの世の誰にも認識されることは無く消えてしまいたかった。
僕を殺してくれるだろうお客さんは僕の部屋のドアを勢いよく開けた。鍵はかけていなかった。ドアの前に立っていたのは僕と同じくらいの年齢の女の子だった。僕は彼女を覚えている。小学生の頃よく遊んでいたが、中学に上がる前に虐めに遭い不登校になっていた「アキ」だった。僕は彼女を救おうとはしなかった。自分はいじめられまいと遠巻きに見ていただけだった。そんな彼女がなぜ家に来たのかが分からない。「元気?元気じゃないよね!」と1人で完結しカラコロと笑い出す彼女。ここ座るね、と部屋の物をどけ勝手に座る。女の子が部屋に来るのは久しぶりだ、だが別にどうだってよかった。殺してくれるだろうと期待していたのだが、明らかに殺しに来たのではない救いに来ている彼女をアキを見て涙をこぼす。何故泣いたのかは分からない。ただただ胸におしよせる波と零れ落ちる涙を必死に耐えていた。
彼女は別に何かをする訳でもない。ただただ部屋にきてアニメを見たり、ゲームをしたり、本を持ってきて読んだりするだけだ。会話の内容も非常に薄い物だった。このキャラクター可愛いや、ここのシーンは前のこのシーンがフラグだったんだよね。等の本当に他愛もない話だった。
この頃だろう。僕が学校へ行こうと思ったのは、親とはたまに話していたし僕が引きこもっていることについて責め立てるような態度ではなかったから「学校へ行こうと思うんだ」と伝えると少し驚いた表情をしたが直ぐに顔をほころばせて良いんじゃない?と背中を押してくれた。
3年生の秋、夏休みが終わって始業式の日に学校へ行った。周りは日に焼け肌は浅黒く髪の色も黒とは言えないくすんだ黒の髪の人達が校門を通るなか、病的に色白く白髪混じりの僕は通る。目が痛かった、涙が鼻水が止まらなかった。吐き気を催し何度も足が止まりその度に足がすくみ帰ろうと思ったが彼女に、アキにいち早く会いたかった少しでも長く話をしたかった。それだけを活力に重い足を引きずるように校門を通り過ぎる。怒鳴り合ってる教師と生徒の横を通り過ぎようとした時に生徒がこちらを不意に振り向く。目が合う。鼓動が早くなった。もしかして僕を笑ってるんじゃないのか、胸のバッヂは2つ下の1年生だ。僕のことは知らないはずだが、一度早くなった鼓動は止まらなかった。もしかしてもしかして良くない考えが頭を巡る。日光に当たりすぎたからか、鼓動が早くなりすぎたからか目の前が白くぼやけはじめた。耐えきれずに膝をつく。怒鳴り合ってた教師が僕の異変に気付き近付いてくる。生徒の方はだるそうな態度でこちらを見てニヤリと笑い去っていった。吐き気が止まらない。嘔吐するが出てくるのは変な匂いの胃液だった。鼻の奥がツンとして涙が出てくる。胸が痛い。何だって僕がこんな目に遭うんだ、
目を覚ます。爽やかな風が頬を撫でる。薬品臭い部屋にいた。頭がぼうっとしていて、ここが保健室であることに気が付くのに時間を要したが直ぐに身体を起こし周りを見渡す。
「田山くん大丈夫?」見ると保健室の先生がドアの前に立っていた。「ええまぁ、大丈夫です。」何とかそう返事する。「良かった。ごめんね、始業式で貧血や熱中症で倒れる人が多くて席外してたの」 「あいえ大丈夫です。」少しの間が空く。「僕、帰ります。」そう呟くと先生はカバンを持ってきてくれた。「今なら大丈夫よ、人もいないよ。」僕は軽く首を縦に振りカバンを受け取りドアの前に立つ。何か言おうと思ったが声に出ず、失礼しましたと掠れた声で呟き保健室を出た。保健室を出ると丁度担任の先生とあった。「田山大丈夫か?」なんて冷たい声をかけてきたが頷きそばを通りすぎた。担任は何も言わなかった。少し何か言ってくれると思ったのだが。校舎から出ようと職員玄関の前に立った時に後ろの職員室から怒鳴り声が聞こえた。少し気になりポスターの隙間から窓を覗くと、朝校門の前に立っていた教師が偉そうな先生に怒られていた。「大変だな」と呟き校舎をあとにした。
周りを見ながら校門から外へ出て歩いて数分経った頃、バイクが横につけてきて声をかけられた。怖かったから正直無視をしようと思ったがあまりにもしつこいから横に目をやると、朝校門で怒られていた生徒がバイクに乗っていた。「やっぱり朝の人だ!朝はありがとよ。おかげで指導免れたぜ」と
気さくに話しかけられるが咄嗟に返せず呻きにも似た声で「あぁ」とひと言返す。「俺は川宮。名前は?」「た、田山」 ふーん。といった表情で僕の体を見た。唐突にあっ!と叫ぶキョトンとしていると「ごめんなさい!3年生だったんですね!てっきり1年生かと思ってました。」正直ビックリした。3年生と知ってての態度で、舐められてるんだなと思っていた。「いやいいよ、敬語使わなくても」そう返すと「いやそれは、悪いです。歳上は敬語じゃないとダメじゃないですか、ところで先輩タバコいります?1本どうぞ」そういい僕にタバコを1本差し出す。吸ったこともないし悪いことだと思ったが断ったら悪いなと思い「ありがと」と言い差し出されたタバコをくわえる。川宮くんが差し出したライターで火をつけようと思うが火がつかない。先端が少し焦げ付くだけでタバコには火がつかない。チラリと川宮くんの方を見ると笑いながら「先輩、吸いながらじゃないと火つかないですよ。」と教えてくれた。教えてくれた通りにやると今度は火がついた。無言の時間が続く。煙を吸って吐いての繰り返しだった。川宮くんがタバコを揉み消しケースに吸殻を入れ「タバコを吸う時はですね、1度吸って煙を口の中に溜めて息を吸うとふかさず、肺に入れることができますよ。ふかしは嫌われるので気をつけた方がいいですよ」と笑顔で教えてくれた。やってみると喉がチリチリと焼けるような感覚に襲われ思わずむせる。横で川宮くんはニコニコにしながら僕が吸い終わるのを待っていた。フィルターに火がたどり着いた時火は消えた。川宮くんがケースを差し出したからそこに吸殻を入れ「ありがと」と伝えた。「いいですよ。先輩は引きこもりなんですか?」と聞かれた。面食らったが隠すことでもなかったから正直に話した。ADHDのことは伏せたまま。黙って僕が話し終わるまで真剣に聞いてくれていた。話し終わった時少し間があき、川宮くんは実は僕もとポツリポツリと告白してくれた。「僕も、いじめられていたんです。小学生の頃。先輩のように落ち着きがなくてよく騒いでました。先生から嫌われ生徒から嫌われいじめられていました。それで僕は小学校を転校し、この近くへ引っ越してきたんです。引っ越しても学校へ行きませんでした。学校からの電話も居留守です。家は片親で放任主義なんです。僕が学校へ行かなくても何も言いませんでした。ある日、家でゲームをしていたらインターホンが鳴って見てみると家の前に10台ぐらいのバイクと特攻服を着た人たちがいました。しばらく見ていると突然僕の名前を叫び出したんです。怖くて怖くて部屋の隅で丸くなっていると急にドアを開けて1人が入ってきました。鍵は掛けていなかったんですよ。入ってきた人は丸くなっている僕に兄だと伝えてきたんです。」