1.彼は弱かった
小説を書いたのは三作目で初の連載になります。
勢いで書いたら長くなったので連載にしてみました。
その為、誤字、脱字、物足りないところが多くて修正してます。
12/6構成等も変更。採点とブックマークしてくれた方々ありがとうございます!
「ウェアハハアハハハァーー!!!」
心の奥底から楽しそうに叫びに近い笑い声が周囲に響く。
それを見た他のプレイヤーからは半笑いしつつ戦慄し、観戦者から歓声が届く。
「ひでえ殺し方をしやがるw」
プレイヤー名、時雨シグト(ときさめしぐと)。
eスポーツも盛んになったこの時代、注目を集めているプレイヤーの一人だ。
半年前の話。
このゲームを始めた頃はただの初心者であり、
敵を倒す事もままならない程の下手くそでもあり、
雑魚狩りの中級者に狩られるだけの存在であった。
だが、プレイして3ヵ月程たったある日に目覚める事となる。
どんなゲームのプレイヤーでも良くある事だ。
突然、勝てるコツがわかった。
ただそれだけだ。
彼のプレイしているゲームは新型VRゲーム最新作「アームド・ウォリアー Σ(シグマ)」。
50vs50の100人で戦うリスポーンありの大人数対戦ゲームだ。
ルールは先に敵の戦力ゲージを減らした方が勝ちのデスマッチ。
制限時間内に拠点を奪いつつ互いに倒し合うコンクエスト。
最後の一人まで戦い抜くサバイバル等いくつかある。
戦闘は格闘から銃撃戦の他、様々なガジェットを使用して戦うSF戦争ものである。
キャラクターの武装や見た目を好きなようにカスタマイズし、独自のキャラクターで遊ぶ事が可能だ。
キャラの見た目や世界観は基本的にミリタリー+SF的なスーツやアーマーだが、
強引にパーツを組み合わせてファンタジー風にも出来る。
また、ストーリーでは敵側のデザインである、人型ではあるがモンスター系にも可能。
当然、ゲームのプレイ進行状況によって使用出来るパーツも増える。
ランクアップやトロフィーの獲得等、
条件を満たせば様々な見た目のパーツを獲得しカスタマイズ出来る幅も増えるのだ。
シグトがしがない雑魚プレイヤーから今の彼になったのはきっかけがあった。
最初は勝てないあまりにネットで見た情報を鵜呑みにし、
ほぼゲーム開始から所持しているものや買えるも物である、
"初心者ならこれを使っとけ!"と言う装備でプレイしていた。
初心者に扱いやすい武器や装備の数々。
それは初心者にとっては良いのかも知れない。
でも、使ってみると本当に使いやすいのか?
他の尖った装備は使った事があるのか?
ない。
ないならわからない。
彼はその初心者装備ををやめた。
何故ならいくらやっても勝てないからだ。
50vs50による対戦。
固定チームではなく、ランダムで集められた100人が50人同士で戦い合う。
皆が上手い訳ではない。
実質、上位20人くらいの頑張りでチーム自体は勝つだろう。
でも本人は敵に倒されてばかりではチームにとってはお荷物であろう。
初心者から抜けなければいけない。
しかし、初心者用の装備では勝てなかった。
彼はなぜ勝てないのか分からなかっただけだ。
彼はある日、テンプレートの初心者装備とジョブをやめたのだ。
大人数の対戦ゲームなら良くある事だが、
まともに敵を倒せないプレイヤーはいつも狩られてばかりだ。
狩られない為にはとにかく逃げ、自分よりうまい味方に守って貰うか
それらをサポートしながら味方に付いていけばいい。
だが初心者や下手なプレイヤーはそれすらせずに特攻をする。
残念だがどのゲームにも一定以上いるのだが、
学習能力が無かったり、つい癖で敵陣に突っ込んでしまうと言うプレイヤーは多い。
シグトの初期の戦績は1ゲーム約30分間に1~3キル程度に20以上のデスと言う、
極めて下位ランクの弱小プレイヤーそのものであった。
彼はこのシリーズ初期からのプレイヤーではあるが、
この最新作である新型VR機での「アームド・ウォリアー Σ(シグマ)」ではとても弱かった。
開始当初はシリーズを通しての経験からか、
大人数化したマルチプレイでも勝てる自信はそこそこあったが、
初の大人数対戦となった事に加え、新型VRによる脳波による思考操作ともなると、
まともに動かす事もままならず、敵の多さもあってか突っ込んでは死に、
逃げ隠れも味方の支援すら上手く出来ずにボコボコにされていた。
「くそう…自分こんなに弱かったのか…下手過ぎるだろ…」
初期シリーズからのプレイヤーとしては情けない事この上ない。
彼が今の彼になるまでは弱かった。
採点してくれた方、ブックマークをしてくれた方達ありがとうございます。