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ミコト=主従+九尾

「ミ、ミコトお前いきなり何を・・・!?」


 主従契約の最後に、いきなりキスをしてきたミコトに驚いた俺は顔から火が出そうなくらい熱くなる。


「ち、誓いの証じゃ。人間の間では男女が何か契約を結ぶ時は誓いの証として、キ、キスを・・する、のじゃろぅ・・?」


(た、確かに結婚式の時に誓いのキスはするけど、あれって主従の契約にも適応されるもの?昔の中世の騎士が姫の手の甲にキスをする風習があったような?でもミコトは何百年も封印されてた訳だし昔はそうだったのかも・・・)等と考えている俺に対してミコトは、まるで捨てられた犬のように(いや、だから犬じゃなくて狐なんだけどね)尻尾と耳の先がペタァ~と下を向き、浮かない表情をしていた。


「嫌・・じゃったか?妾みたいな者とでは・・」


 どうやら俺が難しい顔をしていた事で誤解をさせてしまったようであった。

 俺はミコトの頭の上に手を乗せる。


「ごめん。誤解させちゃったみたいだね。初めてのキスだったから驚いちゃっただけだよ。ミコトからされたのが嫌だった訳じゃないよ」


 ミコトは俺の言葉に反応して顔を上げる。


「本当か!?」


「本当だよ。むしろ逆に嬉しかったくらいだよ」


「そっちではない!」


「えっ?」


「妾が聞きたいのはゆきとが『キスをしたのが初めて』と言う所じゃ!」


「えっ?そっち!?」


「当たり前じゃ!それ以外に何があるのだ!?だって、ゆきとの初めてのキスの相手が妾という事になるんじゃろ!?」


「えっと、そうなるかな」


 ミコトは、その言葉を聞くと先ほど迄の様子が嘘のように耳の先はピンッ!となり尻尾も上を向きながら左右に振り始める。


「そうか!そうか!ゆきとの初めての相手は妾かぁ~・・・」


(な、なんか誤解を招きそうな言い方だけど機嫌も直ったみたいだし良しとするか。それにしても、こうやって見てると年相応の女の子にしか見えないけど、俺や姉さんよりも何百倍も生きてる九尾だなんて、今でも信じられないよなぁ・・・ん?そういえば、姉さんは?)


 ふと忘れていた姉さんの存在を思いだし振り向いた瞬間ガラスが割れたような音がした。


「やっと打ち破れたわ。雪兎!無事!?」


「姉さん!?打ち破れたって?」


 状況を理解出来ない俺の横からミコトの声がする。


「なんじゃ?思ったより早かったのぉ。もう少し時間を稼げると思ったのじゃが」


「一体どうゆう・・?」


「妾の障壁じゃ。邪魔をされたくなかったのでのぉ、少し前に張らせてもらったのじゃ」


(い、いつの間に・・・?)


「さぁ、早く雪兎から離れなさい!」


「ふぅむ、残念ながらそれは聞けぬ頼みじゃな」


「だったら力ずくでもっ!て・・・九尾・・その首の模様って・・・まさか・・!?」


 俺は姉さんの言葉で初めてミコトの首にある黄色の首輪のような模様に気がついた。


「うむ、そのまさかじゃ。この模様はゆきとと主従の契約を結んだ証【従者の首輪】じゃ。よって主である雪兎の側から離れる訳にはゆかぬ」


「そんな、まさか・・・ゆ、雪兎!腕を見せて!?」


「腕?」


 俺は姉さんの言う通りに服の袖をまくり上げ腕を見せる。


「なにこれっ!?腕に変な模様がっ!」


 俺の腕の模様を見た姉さんは唖然として声も出ないようであった。


「これで分かってもらえたじゃろ?ゆきとの腕にある黄色の模様は【主君の腕輪】、妾の主である証じゃ」


「・・そんな・・・」


 その状況に姉さんは肩を落とし落胆した様子だった。


「姉さん・・・」


「・・・・・・・・・・・」


「こ・・・つ・・が・・・」


 姉さんは何かひとり言のように呟いていた。


「ん?あのぉ・・姉さ・・」


「このっ!女狐がぁぁぁ!!」


「えっ!?」


 姉さんの怒号と突風のような気が辺り一面に吹き荒れる。


「私の大事な弟を・・・立派な男になれるように大切に育ててきた雪兎を、あんたみたいな女狐なんかに!!」


(ヒィィ!!お、お姉様、ご、ご、ご乱心!!??)


 突然の姉さんの豹変に俺は驚きを隠せずにいた。

 そんな中ミコトは俺の前に立ち、姉さんの気から守るように障壁を張っていた。

 先程まで感覚的にしか感じられなかった障壁がうっすらとだか見えることに気が付いた。


(もしかしてミコトとの契約で?)


「人の身でこれほど力強い気を出せるとは、なかなかの魔力じゃなぁ。しかし、加減をせぬと大事な弟にケガをさせてしまうぞ。」


「黙りなさい!余裕で受け止めてるような人に言われても嬉しくないわよ!それに私の弟は、これくらいの事でケガをするほど柔じゃないわ!」


「ほぉ、ずいぶんと自分の弟を買っておるのぉ。まぁ、妾が主として認めた男じゃからなぁ。当然と言えば当然じゃな。カッハッハッ!」


 ミコトはそう言いながらどこか誇らしげに笑っていた。


(なんか俺を誉めてるのか自分を誉めてるのかわかりゃしないなぁ~)


「だ、誰があんたの主よっ!!」


 姉さんがミコト目掛けて竹刀で突進攻撃をした衝撃波と音が鳴り響く。


「雪兎は、あんたの主なんかじゃない!!」


 姉さんは攻撃の手を緩めることなく続ける。


「雪兎はっ!雪兎はっ!!」


 姉さんの攻撃は回数を重ねる毎に激しく、速くなっていく。


(ムッ!?障壁にヒビが・・・竹刀に纏わせている気が強くなっておる)


「雪兎は、この世で何よりも大事な大事な私のっ・・・弟なのよぉぉぉぉ!!!」


 姉さんの渾身の一撃により強烈な衝撃音と共に障壁は割れ砂ぼこりが辺り一面に広がっていき視界が悪くなっていく。


「くっ、視界がっ!ミコトっ!姉さん!」


 読んでも返事が無い二人が無事なのか心配になってくる。

 だが、少しずつ視界が晴れてゆく砂ぼこりの中から俺を呼ぶ姉さんの声が聞こえてきた。


「雪兎っ!無事!?」


「姉さんこそ無事だったんだね。良かった」


「当たり前でしょ。か、可愛い弟の前で姉が無様な姿なんて見せられないわよ」


 少し安心したから、それとも姉さんに言われた事が嬉しかったのか、俺は自然と笑みを溢していた。


「ごめん姉さん。てっきり姉さんは俺の事オモチャ代わりにして楽しんでるのかなぁなんて思ってた。ありがとう」


「だ、だから当たり前の事だって言ってるでしょ。弟の事を姉が大事に思うのは当たり前なのっ!べ、別に感謝なんて―」


 なんだかんだ言いながらも照れを隠しきれてない姉さんは少し顔を赤くしながら俺の気持ちを受け入れてくれてるようだった。


「ところで姉さん、ミコ―じゃなくて、九尾はどうなったの?」


「ふんっ、さぁね。あの女狐ならさっきの一撃でどこかに吹き飛んでるんじゃないの?と言うか吹き飛んでいてほしいわね。私の弟に変なちょっかいを出した報いよ」


「そんな・・・」



「誰が吹き飛んでいる・・と?」


(えっ!?)


 突然、風が渦のように舞い辺りを覆っていた砂ぼこりを巻き上げ視界を広げた。


(今の声・・もしかして・・)


「やれやれじゃな。妾としたことが永き封印のせいか力が衰えたかのぉ?イヤ・・・それだけで障壁を打ち破られた訳ではないか。妾が娘の事を甘く見すぎていた事も原因じゃな」


 声のする方へと目をやると、そこには袴の袖や裾のホコリを払い風に(なび)く黄金色の髪を手櫛で整えていたミコトの姿だった。


(良かった。無事だったのか!)


 ミコトの姿を確認した俺は安堵の表情を浮かべていた。


「なんじゃ?妾の事を見るなり安心したような顔をしおって、もしかして心配してくれておったのか!?」


「い、一応・・な」


「うむっ!うむっ!可愛い主様じゃな!妾は大丈夫じゃ。あの程度で倒される妾ではない。ましてや・・・」


 ミコトは目線を僕から姉さんの方へと移す。


「吹き飛ばされる事など・・のぉ」


 そう言いながら不敵な笑みを浮かべるミコトに対して姉さんは、如何にも不満そうな顔をしていた。


「少しはダメージを受けてると思ったけど、まさか無傷なんてね。さすがは九尾と言ったところかしらね」


「娘よ、妾はもう九尾などと言う名ではない」


「ぇ?・・・どうゆう?」


「妾の名はミコト!それが主であるゆきとからもらった新しい名じゃ!」


「雪兎から?・・・もらった!?」


 姉さんはミコトの言葉に動揺し困惑や怒りの色を浮かべながら俺へと目線を向け聞いてくる。


「ゆぅきぃとぉ~、どういう事かなぁ?」


 俺の体は反射的に背筋を伸ばし直立不動の姿勢になってしまった。


「イ、イヤッ、あの・・・そのですね。なんと言いますか・・・は、話しの流れで・・ですね」


 俺は姉さんの怒りの色を映した目にびくつき、まるで蛇に睨まれた蛙のように汗だくになりながらたどたどしい返事をしていた。


「はぁ~・・・まぁいいわ。弁明は後で聞いてあげる。あの女狐に雪兎との契約を解除させてからゆぅ~っくりと、ね」


 そう言うと姉さんは竹刀をミコトの方へと向ける構える。

そんな姉さんにミコトは少しダルそうにしなかがら口を開く。


「なんじゃ、まだやる気なのかぁ?力の差は明確であろうに懲りないのぉ~」


「黙りなさい!あんたみたいな女狐を雪兎の側になんて置いておけないのよっ!」


「ムッ!!娘よ、先程も言うたと思うが妾の名はミコトじゃ。ミ・コ・トッ!ゆきとに付けてもらった大事な名じゃ!九尾でも女狐でもないわっ!」


「フンッ、私の弟に不埒(ふらち)な真似を働くような()()()()・には()()()()・という呼び方で充分よっ!」


 そんな姉さんの対応の仕方にミコトは肩を震わせながら怒りを(あらわ)にしていた。


「・・・ゆきとの姉であるからと遠慮していたが、ここまで愚弄(ぐろう)されては致し方ないないのぉ・・・」


 まるで地響きでも起こっているかのような音を立てながらミコトの体から出た妖気は天高く雲を貫く光線のように放たれていた。

 魔力が見えるようになった俺は実際に自分の目と肌で感じたミコトの九尾としての力の強大さに愕然(がくぜん)として声も出ず息苦しささえ感じる―

はずだった。


(・・・・・・・・・・)


(えっとぉ~、なんでこうなったんだっけ・・・?確か・・姉さんがミコトを怒らせて、地響きと間違うような妖気の放出をしてぇ~、その強大な力に俺が愕然として・・・そうだそうだ!思い出した。でっ!?そんな流れで、なんでこんな展開に?なってるんだぁぁぁ!!?)


 ミコトは満面の笑みを浮かべていた。

 しかし、その手には何故か競走馬等に使う短い鞭が握られていた。


「娘よ。おぬしには目上に対する礼儀という物が少々欠けておると判断した。よってここはひとつ主様の姉君であると言う自覚と礼儀を持ってもらう為にも妾が、あ・え・て!心を鬼にして愛の鞭を振るってやろぉ。妾もヤりたくは無い。ヤりたくは無いのじゃが、これもおぬし延いては主様の為なのじゃ。なぁに姉君であるおぬしの命まで取ったりはせぬ。取ったりはせぬが、少しばかり手荒な(しつけ)になってしまうかもしれぬが許せ。カッハッハッ!」


 対して姉さんも、やはり満面の笑みを浮かべる。

 しかも、姉さんの手にはSの女王様御用達!!?みたいな本格的な鞭が握られていた。


「これはこれは、ご配慮痛み入ります。ですが、私には人間以外に対する礼儀は持ち合わせておりません。特に人様の大事な弟に変なお節介を焼こう等とする女狐さんにはね。ですので、私に礼儀の教鞭は勿論の事、雪兎の姉であるという自覚も品位も持ち合わせていると自負しておりますので大変心苦しいのですが丁重に御断りさせていただきます。その代わりと言っては何ですが私があなたを色々な意味で躾て差し上げてもよろしいですわよ。め・ぎ・つ・ね・さん♪フフフっ」


 ミコトと姉さんの間には近寄りがたい異様な空気が漂っていた。


(こ、恐い。ミコトも姉さんも表情は笑顔なのに纏っている気がまるで鬼の形相だ。それに二人とも表情と発言がまるで合ってない。と言うか、最早真逆!!・・・なんだけど、なんだろう?この二人、意外に息が合っているような・・・)


 そんな事を考えながら二人を見守る俺の耳に、どこか物寂しい音が聞こえてきた。


〈・・リン・・〉


ご愛読ありがとうございます。

久しぶりの投稿となり嬉しくも反省している次第でございます。

ですが、挫けずに次回作も投稿出来るように頑張りたいと思います。

最後に今回のラストではかなり脱線したような感じにはなりましたが、そこはご愛嬌と言うことで多目にみていただけたら幸いです。

では、また次回作で。

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