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6 イメージについて

 イメージできないとさんざん愚痴ったけれど、イメージは大切だと思う。想像できないことを現実にするのは、かなり難しい。

 うわっ、すごいタイプ! って異性に出会っても、デートしているところもキスするところも想像できず、ましてや今夜のおかずにもならない場合には、たぶん付き合えないと思う。こんなひとと一緒だったら楽しいだろうなぁレベルじゃだめ。具体的に、精密に想像できなければ。いざそうなって、想像と違うのは仕方ないけど。

 ところでイメージの持ち方というのは、みんな同じなんでしょうか。それが違うらしい。

 昨日生まれてはじめてキャビアを食べました。それをちょっと自慢したくて、幼稚園児のチビちゃんに、

「昨日キャビア食べちゃってさぁ」と鼻高々に言ってみたところ、チビちゃんは、

「キャビアってなぁに?」と、納得いく答えをもらうまで絶対に離さないぞ、という興味津々の顔で、目をらんらんと輝かせこっちを見つめています。さあ、あなたはなんと答えるでしょう。

 という本を読んだ。シチュエーションはちょっと違うんだけど、そのまんま書くのもなんなので、だいたいこんなかんじってことで。キャビア食べたことない、なら今まで一番誰も食べたことないだろうと思われるもので考えてみてください。「うざい」といって逃げるとかはなしね。あとそのもの持って来るとかも。

 私なら、

「黒くてさぁ、こんなちっちゃい粒粒で……噛むと口の中でぷちぷちって音がするんだ。しょっぱいんだけど、おいしんだよ。チョウザメって鮫の卵で、すっごくお高いのさ」

 というような説明するんだけど、この順番がイメージにつながるらしい。

『黒くて小さい』は視覚的イメージ。『ぷちぷち』は聴覚的イメージ。『しょっぱい』は触覚的イメージ。ということらしい。このイメージの方法が違う人とはコミュニケーションがとりにくいというのだ。なるほど。

 話の中にやたらと擬音が入る人がいる。

「だーっと行って、ぱっとやって、ぷちゅってなったんだよね」

 私には全くわからないのに、

「へぇ〜。それはふぁんふぁんふぁんふぁんふあーんだね」

 と理解している人もいる。私には会話が成り立っているほうが「へぇ〜」だ。きっと聴覚的イメージ同士なのだろう。

 かたや私は、ギターを弾いている人に、

「もうちょっと緑色っぽいコードがいい」と言って、イメージどおりの音を出してもらったことがある。お互い視覚的イメージ派だったのだろう。近くにいた人は目が点になっていた。

 洋服を選ぶときに何を優先するかでもわかるらしい。色や形の人は視覚的イメージ派。似合うといってもらえるかどうかが最優先なら聴覚、着心地や肌触りなら触覚というわけだ。

 どれがいいとか悪いとかではない。相手が一番ピンとくる方法をとれば伝わりやすいということ。そこでふと思った。対一人だった場合には相手に合わせればいいだろうけれど、相手が不特定多数の場合はどうするべきだろう。まさにたった今のような場合。

 私は真っ白い原稿(視覚)を前に悩んでいた。どんなふうに伝えればいいのか、思い浮かばない。冷蔵庫のジーっという(聴覚)動作音ばかりが耳につく。あまりのふがいなさに背中にはじっとりと汗をかいていた(触覚)。

 てなところか。すべての要素を含むと伝えたいことがより多くの人に伝わるようになるのかな。まぁ、私は主に視覚的イメージを持つ人間なので、情景描写が美しい作品に惹かれ、心の動きも視覚的に表現されている作品は読みやすいな、と感じる傾向にある。

 うまく話が通じないなぁと思う人に出会ったら、キャビアの説明をしてもらってみてはどうかな、と思う。

 ちなみに、全く話の通じない母にやってみたところ、

「え! 知らないのぉ? 世界三大珍味っていわれる高級食材の一つでさ、チョウザメの卵でね。あ、あとの二つは知ってる?」

 ……とりあえず薀蓄を聞かされました。こういうタイプは聴覚イメージだそうです。

 その前に、話の冒頭でカチンと来ることを言うと、その後の話はたいてい『おう、かかってこいよ』とファイティングポーズで聞かれるはめになることをこのくそばばにどうやって伝えようか――ぱくぱくと違うことまでまくしたて動いている口元を、腕組みをした指で綿のシャツの感触を確かめつつ聞きながら、ちっと心の中で舌打ちをした私でした……うっ、この表現はくどいな、無念。

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