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22 ダイエットと禁煙

「スタイルいいですよね」

 とよく言われる。ほぼ毎日四十分のエクササイズをして、四十分風呂に入り、エスカレーターは使わず、一日二食、お菓子は食べない。炊きたてのご飯の味ももう思い出せないくらい食べていない。それで太っていたら私がかわいそうだろう。私は現役の夜の蝶でもあるので『身体を整えること』と『若く見せること』は仕事の一部だと思っている。涙ぐましい努力をしてやっと維持しているのだが、寄る年波には勝てず、やはりあちこちのお肉は重力に負けつつある。こうなったら鍛えに鍛えて、腹筋をシックスパックに割ってやろうかと思ったが、店長に、

「あんまり鍛えすぎてボディービルダーみたいな胸になるのはやめてね。ただでさえ小っちゃいんだから」といわれてしまった。いつか泣かしてやると心に誓った。

 産後太りで困っていると相談を受けた。が、答えてあげられなかった。私は産後の肥立ちがものすごく悪かった。娘は粉ミルクを一切飲んでくれず、娘がすくすくと育つにつれ私はどんどんやせ細った。だいたい半年で元の体重に戻すものなのだが、半年後には私は元の体重よりも十キロも痩せていて、寝ていても座っていても自分の骨で体が痛いほどだった。骸骨のように痩せてしまった私は、毎日ドラキュラよけかと思われるほどニンニクを食べていたのだけれど、それが逆効果だったようで、さらに痩せた。それから十五年あまりたった今は毎日の臭いのせいで弟がニンニクを食べられなくなった以外は、すっかり元に戻り、日々ダイエットにいそしんでいる。

 仕事上、というのが最大の理由ではあるけれど、もうひとつ理由がある。あるミュージシャンがテレビで、

「四十歳のときの体がその後の一生の体らしい」

 という話をしているのを聞いた。ということは四十歳のときに素晴らしいプロポーションを保てていれば、その後も美しくいられることか。私が四十歳だと娘は二十歳だ。

「よし、第二の青春!」てな、具合でそこまではがんばろうと決意した。

 大人になってからのダイエットに失敗したことがないのは自慢なんだけれど、禁煙には見事に挫折した。今の世の中、喫煙者は肩身が狭い。身体にもよくないし、爪も黄色くなる。四十歳のときに素敵でいるためにもやめてしまおうと思ったが、やはり十八年間慣れ親しんだニコチンには勝てなかった。やめていた間は頭がぼんやりして、ずっと酔っ払っているようだった。口寂しいのでパイポをがじがじ噛んでいたが、ずっと煙草のことが頭から離れない。

「十年後にも同じだけの音域を保つためだ」とか、

「お金がもったいない」とか、一生懸命考えるのだけれど、お酒を飲んだり、食事をしたりするとどうしても吸いたくなる。結局、一本だけ、と手を出したのが最後、リバウンドのように吸い始めてしまった。まだ喫煙者でない方には、絶対に吸わないことをお勧めする。母は、

「離婚は結婚の三倍大変」と言っていたが、私は、

「禁煙は喫煙の一千倍は大変」だと思う。何事もはじめるのは簡単だけれど、終わりにするのには相当の労力を使うということか。

 また誕生日から禁煙を始めようと思っている。きっと私は頑張れる子だ。一度くらいの挫折で負けてはいられない。なぜ、禁煙をするのかという理由をきちんと持つと達成しやすいとご助言を承った。よし。今度の私の理由は、

「煙草吸わない人とキスするときに気にしないでいられるように」にしよう。

 とっても不純で素敵な動機でしょ?

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