21 露出魔の撃退法
これ書いたらなぁ……また怒られるよなぁ……
私はときどき職場から歩いて帰る。そんな人はたくさんいるだろうけれど、私が帰るのは真夜中すぎである。送りも完備されているのだが、ひとりになりたかったり、ちょっと歩きたかったりするときがある。警察署の前も通るし、地元だしと四十分あまりの道のりを、ほろ酔いに任せて歩き出してしまう。
ついこの間も、ちょっと悩んでいることがあり、てくてくと歩いて帰った。そして、その次の日も歩いて帰り、事件は起きた。
最初、声をかけてきた人は、本当に人のよさそうな男性だった。
「結構歩いてるみたいだから、よかったら送りましょうか?」
非常に紳士的である。『ナンパしてくる相手は外国人』アベレージ九割を超える私は、めずらしく日本人に声をかけられ、その紳士的な態度に、にっこりしながら、
「ウォーキングをかねているし、もうすぐなので結構です。ありがとうございます」
と九センチのヒールの上であと二十分ほどの道のりを残し、丁寧にお断りした。
そしてまた歩いていると、声をかけてくる男性がいた。結構歩いたし、ちょっと暗い道だからさっきの人が気をつかってくれているのかな、とふりかえると――さっきの紳士的な方とは全く違う、露出魔がそこには立っていて、私はがっくりと肩を落とした。
というのも、私、ものすごく露出魔に好かれるのである。それは今に始まったことではなく、小さい頃からで、しかも昼夜、街中、道端、駅構内関係なく被害にあうのである。これも今年二回目。正直なれてしまっていた。
いつもの撃退法を始める。がっくりと肩を落とす(これは本当に本気)。そして「きゃー」とも「きー」とも「おりゃ!」とも言わず、現実を直視する。しっかり観察して差し上げて(というふりをして)、感想を述べる。
「ふっ(思い切り鼻で笑う)、たいしたもんじゃないなぁ……ほめてもらえるほどのものじゃないから、しまっとき(ものすごく気の毒そうに、関西弁で)」
露出魔の心の中で「ボキッ!」と何かが音を立てて折れる。そして、すごすごと退散していく。決して走り去ることはなく、すごすごと、その背中には哀愁さえ漂わせながら。その背中をしばし見送ってから私もその場を立ち去るのである。今までのところ、この方法は百パーセントの割合で成功しているし、かなりの割合で再発防止にも役立っている気がする。
私はチカンにはほとんどあったことがない。さわるに値しないスレンダーなボディーのせいか、裏拳でもとんできそうな雰囲気でもかもし出しているのか定かではないけれど、思い出せない。でも、そういうことって本当は、心が通じ合って、または心を通じ合わせるためにすることであって、一方的では何の意味もないことを知ってほしいと思う。
ま、夜道を一人で歩いているのも悪いんだけどね。ごめんなさい、ちゃんと送りで帰ります。