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いつもそこにいる、式神さま  作者: かくわ詩
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第7話 飛び降り未遂事件

 「・・なんか、完全に心霊体験だね」

 マコがそうコメントする。

 「だよな。1回なら偶然ってこともあるけど、何回も目撃となるとな」

 「なんか、あれかな?急に霊的な何かを見る能力をもった、とか」

 「そうそう、そんな感じ。「俺の左手があっ、うずく!」、とかな」

 「右目が熱くておさえた手の隙間から、赤目が光る的な、あれかな」

 「そうそう」

 好き勝手にしゃべる二人。 

 なんか、嫌な予感がする。

 「「厨二病」」

 「うっさいわ!」

 俺は、ノブの足を靴の上から、思いっきり踏んづけてやった。

 「痛ってぇっ!つか、何でいっつも俺ばっかなんだよ!」

 「いつもたまたま近くにいるのがお前だからだ」

 ノブにそう、うそぶく俺。

 「いやー、よかったね、才能が開花してさ。トウシが人生に落ち込んでいたら「大丈夫だ、トウシは大器晩成型だ」って言おうと思っていたけど、それも無しになったね」

 「マコ、大器晩成型の人は、ほんの一握りで大半は、凡人で人生終わりだ」

 「だからこそ言うのさ。晩成は、死ぬ直前までそうかもしれないし、希望が持てるでしょ?」

 「優しい慰めのようで、ジワジワ刺さるな。お前だって凡人かもしれないんだぞ」

 「僕は、自分の事、初めから凡人だと思っているから~」

 言いたい放題言いやがって。朝からビクッ、ぞくっ、のしっぱなしだったんだぞ。でも、2人が笑い話にしてくれたおかげで、少し心が軽くなった。

 だいぶ話したのか、もう授業が始まる時間が近づいていた。

 

 放課後。

 授業も終わり、夕方のあの物悲しい校庭の土埃の匂いが、窓から風に乗ってくる。遠くで吹奏楽部がもう練習を始めているようだ。そして、もう数分と経たないうちに、野球部の掛け声やバットの乾いた金属音がしてくるのだろう、と思いながら、ボーっと外を眺めていた。夕方とはいえ、真夏が近いこの季節は西日が肌に突き刺さってじりじりとする。

 「おーい、帰ろ」

 マコが声をかけてきた。

 「おう、帰る帰る」

 よし、と、机を立とうとした。

 あれ?

 「ノブは?」

 「あそこ」

 マコが指を指した先を見ると、窓のわきに立って、手のひらをひたすら見つめているノブがいた。

 「おい、・・あいつ大丈夫か」

 「うーん、多分、君に触発されたのかな」

 「どういう事だ?」

 「厨二病的に」

 「そう言う話じゃねぇから」

 冗談めかして言うマコに多少、イラつく。

 「え、そうじゃないの?」

 「どう見ても、違うだろ」

 「え、何が」

 やっぱり、マコは気づいていない。

 俺には、ノブの肩の上に、黒い靄のようなものが見えていた。朝話したときには、少なくともそんなものはなかった。

 見ているだけで不安や焦燥感に駆り立てられる。気味が悪いもの、触ってもいけないし、近づいてもならないものであると、肌がピリピリ感じて、そう警鐘を鳴らす。

 それでもノブが心配だったから、ちょっと気合いをいれて近づこうとしたとき、

 「・・」

 ノブは無言で、窓枠に手をかけ、そこを乗り越えようとした。

 「おいおいおい!!」

 「なにやってんの、ノブ!」

 慌てて、二人でノブを止める。

 だが、ノブを引っ張って廊下に引きずり降ろそうとしても、ビクともしない。2人がかりなのに、凄い力だ。ノブは無表情のままで、とてもこんな力を出しているように思えない。

 「なにこれ!?凄いバカ力!ノブ!しっかりして!!ノブ!!!」

 「このままじゃ俺たちも一緒に・・」

 その時、俺は本能的にこの黒い靄が原因じゃないか、と直感した。そのモヤを掴めるか自信はなかったが、形だけでもとモヤに右手を伸ばし力を込め、引きはがす格好をとる。

 ―――ぐっ

 剥ぎ取りに成功したか分からなかったが、急にノブの力が抜けた。俺たちは、思いっきり引っ張っていた反動で勢い余って廊下にひっくり返った。

 ノブは、はっと我に返ったようだったが、力が抜けて床にペタンと座り込んでいた。

毎日16:00頃、更新しています。

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