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いつもそこにいる、式神さま  作者: かくわ詩
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第20話 休日のひととき

 「・・あっち。汗だくじゃんか」

 ベットの上で、俺は玉のような汗をかいて、寝ていた。

 時刻は、午前六時半。既に外は、明るい。ちょうど起きる時間にはいいんだけど。

 「あーもー。なんだよ」

 寝起きとしては最悪だ。身体中がべとべとするし、頭もボーっとするし、不快感が半端ない。

 そして、何より、夢の内容が気になった。

 「あんなこと、あったっけ?」

 覚えているような、無いような。大切だった何かを、誰か、を忘れているような・・。

 今思い返しても、幼少期の頃の記憶って、結構あいまいだ。

 どうしてか、すごく気になった。

 思い出せなくて何か困ることがあるかと聞かれれば、ないが。

 今日は、土曜日だ。俺は適当にシャツと半ズボンに着替えて、リビングに向かう。

 「はよー」

 「おう、お早う」

 「おはよう」

 両親は、既に起きていて、もう朝食を食べていた。

 「パン?ごはん?」

 母が聞いてくる。

 「あー、パン」

 冷凍庫から、凍ったパンを取り出し、トースターで焼き始める母。うちの母は、結構家事全般が適当な感じで、一応料理も作ってくれるのだが、ただ焼いて醤油かけただけ等かなり雑だ。ごそごそと冷凍のハッシュドポテトをフライパンに放り入れる。

 「あのさ」

 「ん?なんだ」

 親父に、話しかける。夢の内容を聞いてみようと思ったからだ。

 「むかしさ、ばあちゃんちでさ」

 ・・かくかくしかじか。

 「あー、あれか。おうおう」

 そう言いながら、親父はタブレットで仕事のメールを開いている。

 「聞いてる?」

 「おう、聞いてるぞ。そんなことあったな」

 「それから?」

 中途半端な夢だったから、余計に俺は気になっている。

 「そう、あの時な。えーと」

 タブレットから顔を上げてこちらに視線を向ける。

 「石像に頭をぶつけたらしくて、お前の頭と石像に血がついてたよ。それで、お前はその下の田んぼの土手に転がっていて、もうちょっとで水路で溺れるところだったんだぞ」

 「そうそう、それで大騒ぎになって。近所の人にも総出で探してもらって、次の日に見つかったのよ。あの時は、もうダメかと思ったわ」

 「そうだったな。でも、見つかった場所って何故かもう探し済みのところだったんだよな」

 「不思議よね。だから誘拐とも疑ったわ」

 俺の前に、パンとハッシュドポテトを置きながら母が話に混ざってくる。その目は、涙で少し潤んでいた。

 「あ、焦げてるから」

 「・・見ればわかる」

 うーん。見事に焦げたな。なんで、パンを毎日焼いてるのに焦がすんだよ。まあ、いいけど。がりがりと、焦げた部分をスプーンで削り取りながら、マーガリンを塗りたくる。

 「いただきます。それで、どうなった?」

 「うーん。どうだっけ」

 「なに、忘れたの?」

 母は親父を半ば呆れるように見ている。

 母の話から要約すると、俺は脳震盪で気を失っていた。一緒に連れていったばあちゃんが自分をすごく責めていた。私が目を離したから、と。

 そのばあちゃんは、今でも現役で畑仕事を元気でこなしている。

 それからすぐに医者に連れて行ったけど、特に頭の中身的には何事もなく、でも切れている箇所が大きかったため、二針縫ったらしい。

 「あ、これか」

 頭の左側。こめかみより少し前のところに、約2センチ程の傷跡がある。

 怪我をした場所が頭、ということもあって、結構出血も酷かったらしい。

 うーん・・、そんなことあったのか。全く覚えていない。両親からの話で昨日の夢が昔の現実にあったことだったのは分かったけれど、まだ何か抜け落ちている気がした。

 ちなみに、ハッシュドポテトは、中の方が冷たかった。生焼けだよ。

 たまにあることだったので、俺は母に文句も言う事もなく、レンジに持って行き温める。

 「あ、時間大丈夫?」

 「今日は、土曜で休み」

 母は、「あ、そうだった」、という顔をした。

 親父は、今日も仕事だ。いつもは、会社が近いから、俺より家を出るのが遅い。

 今日は、なにすっかなぁ。やっぱ、バイクで峠のカーブの練習をするか、それとも、メンテしてやるか。バイクのことになると寝起きの頭もだんだんと冴えてくるのが分かった。

 休日は、思いっきりバイク三昧で充実したときを過ごした。

毎日16:00頃、更新しています。

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