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いつもそこにいる、式神さま  作者: かくわ詩
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第2話 男だらけのキモダメシ

 「今時、キモダメシなんてやるなよ・・」

 お察しの通り、肝試しの最中だ。

 さっきまで、俺たちはクラスメイト達とキャンプファイヤーを囲みながら、みんなでわいわい駄弁っていた。皆、友人たちと夜過ごすという特別感からか浮ついていた。その上、キャンプファイヤーなどという一生で何回遭遇できるか、というレアイベントも重なり、高揚感でいっぱいだった。まあ、燃える炎をずっと見ていると何だか不思議な気持ちになるから、分からないでもない。そうしていたら、担任が「サプライズだ!肝試しをやろう」、となんて言い出した。女子はお約束のように「えー、やだー」だの、「こわいー」などと反対していたが、それも口だけで、明らかにやりたい感がにじみ出ていた。既にコースやイベントをやるメンバーはスタンバっていた。

 なんだよ、この初めから計画していました感。

 女子は女子で、「用意してたんじゃ仕方ないよね」という感じで渋々、承諾する体裁をとって、肝試しを始めようということになった。うーん・・女って面倒くせぇな。

 そして、俺たちは4組目。何の嫌がらせだろうか、女子がいない。厄介だと思いつつも、女子にいてほしい俺も面倒な奴だと思う。しかし、男子と女子、人数は半々なのに不思議だ。

 どういうわけか、俺は事あるごとに女子と縁がない。運動会から体育のバディ組むのもいっつも余って男と組むことになる。呪われているとしか思えない。うう、女の子がいて欲しいんですけど。

 だが、女子がいない肝試しなんてやる意味あるのか?オバケや怪物が出たら、「きゃー」て、野郎に飛びつけばいいのか?・・余計に寒いわ!!

 時々、虫の音が一斉にやむ瞬間がある。いや、マジで怖い。ぞくっとする。

 こういうの苦手なんだよ。肝試しなんて、小学生以来だと思う。もう、驚いた拍子にその場に居合わせた熊に抱き付いちゃったりしたらどうするんだよ。いや、マジでこういうとこ、いるからシャレになんねぇよ。世の中、テディベアみたいな熊が溢れているが、とんでもない。あいつら筋肉の塊だから鉄砲の玉も貫通しねぇし。

 「あー、取りあえずゆっくりめで行ってくれ」

 俺の顔をちらっと覗き込んだノブは、突っ立っている俺に先を行こうと促してくる。

 「もー、ノブはわかってないな。ここは!怖がりのトウシをイジって眺めて遊んで喜ばなきゃ」

 「悪趣味すぎるぞ、おい!」

 とんでもないことを言いだすマコに、とりあえず突っ込む。

 マコは、口調は柔らかだが、結構キツイこと言う。童顔の、女子が言うところのカワイイ顔をして非情なことを言う、そのギャップがまたエグイ。

 「まあ、もう勘弁してやれよ。ここまでの道のり、お前も結構堪能したろ?」

 そう言うノブに対して、

 「そうだけどね。もうちょっと、からかえるかなぁー、とか」

 意地の悪いマコの返事。

 うーん、やっぱりバレていた。暗所恐怖症とはいかないまでも、暗い場所が怖い。さして何があるという訳でもないのに、勝手にゾクゾクするが、化け物とか見たことないし、霊感は、別にないと思う。あーもー帰ろうぜ。早く早く。はりーはりー。

 「・・あーこりゃ、もうちょっと遊びたい気持ちがわかる」

 「でしょ?」

 俺が怯えているのを見て、好き勝手いう二人。女子がいれば、もうちょっと頑張れるんだがな。現実いねぇし!もう、うんざりだ!

 恐怖と軽い苛立ちを紛らわせようと、ノブにタックルしようと構えたときだ。

 今までにないほど、ゾクゾクゾク・・・・と寒気が一気に背筋を駆け抜けた。

 慌てて、がばっと反射的に左側を向くと、さっきまで無かった倒木があった。道にはみ出して、足元の近くまで伸びている。倒木自体は山の中だし、あって当然のものだ。

 しかし、それはあらぬ方向に向いていた。不思議に思い、懐中電灯で照らしよくよく辿って見ると倒木ではなかった。具体的に言うと、まだ生きている木が上下左右に不自然に捻じれていて、あたかも倒木のように見えたのだ。

 くねくねくねくね。

 まるで粘土で曲げたように自然の法則を無視して自由自在に曲がっている。気持ちが悪い。

 ・・なんだこれ?

 寒気がしたのは一瞬で、もうさっきの凍り付く感じはしない。強引に悪いものが取り払われた感じさえする。少しの間、俺はこの現象を理解するのに時間がかかり、ぼけっ、としていたと思う。

 その間に、あの二人はどんどん先に進んでいた。こんな気色悪い木に気づかないなんて、信じられん。

毎日16:00頃、更新しています。

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