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いつもそこにいる、式神さま  作者: かくわ詩
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第17話 集団追いかけっこ

 顔がヒクつくのがわかる。

 逃げようと、振り向いたが、俺の教室のある方からもこっちに向かって歩いてきていた。

 これは、本気でまずい。

 逃げることを最優先にして、人のいない場所をくぐり抜けながら走り抜ける。

 今のうちに、人数削れるだけ、削っといたほうがいいかもしれない。とっさにそんな考えが浮かんだ。 東側4階の屋上へ続く階段は、確か荷物が置いてあって、その上、元から幅が狭い。俺は、すぐさま東階段に向かい、3段飛ばしで階段を駆け上がる。息が上がるも、屋上手前の階段で振り返って靄集団を待ち受ける。

 来た!

 「これでも、食らいやがれっ!」

 俺は、階段に積んであるワックス缶やら資料が入った段ボールやらを片っ端から集団向かって蹴り落とす。面白いくらいヒットし、追ってきた奴らがバタバタと倒れていく。下の踊り場では足の踏み場もない。俺は、そのまま屋上に上がり、今度は西側の階段を下りる。

 「うわっ!」

 そのまま西階段を1階まで駆け下りようと思っていたが、もう廊下の向こうからも階段の下からも追手が迫ってきていた。こうなると後残ってる道は・・。

 「っぐ」

 逃げ道を考えていると一番先頭の女が俺めがけて蹴りを繰り出す。咄嗟に、腕でガードするが、思ったより重い衝撃に身体を後方に飛ばされる。

 「・・」

 信じられない。今までいろいろな奴の蹴りを体験してきたが、今のは男並みの威力だった。防御した腕にも鈍い痛みが残る。これもあの靄の所為なのか。こんなのが何十人と束になって来るとしたら・・。

 「冗談じゃねぇ・・」

 俺は近くの教室に飛び込んだ。中にいた奴らが何事かと動揺する騒めきが聞こえるが、俺は気にする余裕もなく教室の窓に足を乗り上げ、そのまま躊躇なく3階から飛び降りた。

 落ちた。

 ただし、木の上に、である。

 「ふ~。危ねぇ危ねぇ・・」

 この教室の窓の脇には、背の高い木があることを知っていた。咄嗟の判断だったが、俺の頭にしては上出来だ。このまま、木を下りれば、そのまま校外へ行ける。ひとまず、額の汗をぬぐう。

 うー、腹減った。せめてパンだけでも食わせろ。

 つーか、なんで俺!?

 

 

 唯一の救いが、追いかけて来る奴らが、俺が親しくしていた人たちではなかったことだ。

 俺は、バカで迷惑を振りまいているかも知れないが、恨まれることは、してはいないはずだ。まあ、その人の受け取り方次第だからなんとも言えないところもあるが。これは、そういった次元を超えている。

 頭の中が疑問だらけになりながら、俺は逃げ続けていた。

 しかし、そんなに広くない校舎だから、いずれ追い込まれてしまうだろう。

 ここは、思い切って学校外に出てみることにした。

 もうこの時点で、息が上がってきている。

 うー、運動不足かな。口の中にイカのような、鉄のような味がする。

 だが追いつかれるわけには行かないので死ぬ気で走って、道を挟んだ向かいの県の森公園に急ぐ。

 ふう、ここまでくれば・・、と考えたのが間違いだったのかもしれない。

 もう、視界の先には黒い靄軍団の姿が見え始めた。

 「あー、くそ!」

 もう少し休ませろよ。

 そのまま逃げようと、行先を考える。とりあえずアスレチックやらのある方角に逃げることにする。

 あれ?

 そこでやっと、違和感に気が付いた。周囲に誰もいない。

 いくら平日とはいえ、そこそこ大きな公園だし、親子で遊ぶ人たちや、散歩している人くらいはいるはずだ。自動車の走る音や、遠くから聞こえる風の音、いつも気にしていない周囲の様々な雑音が、ここの空間だけ切り取られたかのようにない。歩く音さえも、どこまでも反響していきそうな静けさだ。

 そんなことより、まずは逃げる方が先決だ。いい加減、足が上がらなくなってきて走れなくなりそうな感じがしてきた。う、足が重い。

 振り返ると、もう五メートル先に黒靄軍団がいた。はや!

 また逃げようとするが、走ろうとした先にも既にその集団はいた。

 囲まれた。

毎日16:00頃、更新しています。

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