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いつもそこにいる、式神さま  作者: かくわ詩
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第11話 霊感ある人はつらいよ

 翌日。

 30分だけ寝る予定だったが、思った以上に深い眠りに就いてしまい、良くあることでそのまま翌日まで寝てしまった。ふっ、と、朝五時くらいに目が覚め、飛び起きて、それから何とか英語の予習を片づけた。久しぶりに、8時間近くぐっすり眠ったので、妙に調子がいい。

 外を見ると、日の出前の静かな灰色の景色が見える。窓を開けると、まだ夏本番になっていない7月の涼しい風を微かに感じる。少しひんやりとした草の甘い匂いのする空気が気持ちいい。これだったら、勉強を朝方にするのもありかな、なんて思った。

 そんな清々しい気持ちの中でも、夕べのあの、おかっぱ美少女オバケ事件は、ずっと頭の中にあった。この世のものでない美しいものと、醜悪なものを同時に見るということは、振れ幅が大きすぎて、自分の中にだけ留めておくのは、怖い。別に誰かに話したからどうにかなる、という問題でもないけれど、やはりそうすることで相手が自分を心配してくれたり、気にかけてくれるだけで、心強いものだ。

 まあ、あれを相談できる人なんていないけどな。これをノブやマコに言ったら、絶対にまた厨二病扱いするだろうし。両親という選択肢もあるけど、無理だ。両親は、揃って心霊現象など、ソッチ方面は信じていない。超常現象のテレビ特番を見ていても、「全ての現象は、科学で証明できる」、と豪語するナントカ教授の言うことに、「そうだそうだ」、と二人して言っていた。信じていないなら、そういうの見るなよ、と俺は思う。そんなだから、下手に相談したら、近くの病院に連れて行かれそうな気がする。

 ネットでも色々検索してみたが、昨日の事件が、どういうことを意味するのか、何かの前触れなのか、少しでも傾向を探りたかったが、さっぱりわからない。どうしても検索で突き詰めていくと、極端なオカルト方面に行ってしまうため、余計に複雑な気分になってきた。関連リンクに飛ぶと、知らないうちに微妙としか言いようのない動画サイトに行きついてしまう。それを参考程度に閲覧するが、苦笑すら出てきてしまうくらいにパチモン臭い。そんなことをしていて気づけば、外はすっかり明るくなっていた。


 その日は、霊現象は特に何もなく、週一のバイトがあったくらいで、呆気ないくらいだった。

 まあ、多少変なことはあったっけか?

 いつも通りの朝礼前の話だ。

 「おう、マコ。昨日あれからノブどうだった?」

 「え?・・ああ!ちゃんと送っていったよ」

 「そうじゃなくて。また変な行動起こさなかったか?」

 「あ!あーそっか。大丈夫だったよ、全然」

 ・・?何かおかしい。なにかを隠しているような気がする。

 「マコ、ノブとケンカでもした?」

 「してないよ!便秘解消のためにヨーグルトまで口に押し込んでやったんだから」

 それって一体どういう状況なんだ!想像したくない。

 「なに揉めてんだ?」

 後ろから、話の主役がやってきた。

 「お、ノブ。マコが、昨日お前にヨーグルト食わせてやった、とか言うから何があったのかと思ってさ」

 「あ・・ああ、あれか」

 あれ?ノブの反応も同じだ。

 「なんだよ、聞かせろよ」

 「まぁ、なんだ。その話題はもういいだろ・・」

 俺は、いつもからかわれていることをちょっとだけ根に持っていたから、ノブの肩に手を回して、ここぞとばかりに突っ込んでしまった。

 「ノブくぅん、何隠しているのぉ?教えてよぉ」

 「ちょっといい加減にしなよ!」

 何故かマコが突然怒り出した。

 「言いたくないことを根掘り葉掘り聞こうだなんて最低だよ!!」

 「え?・・あ、すんませんでした」

 マコのあまりの剣幕に俺の口は、自動的に謝っていた。

 「マコ、俺は大丈夫だから」

 「でも・・」

 視線を送り合う2人。それが昨日までと違って、距離が近い。

 ・・これ以上は、触れない方がよさそうだ。

 まったく!何で俺が怒られなければならないんだ。意味が分からない。だいたい、ノブに憑りついた霊を俺が引き受けたようなもんだ。感謝されこそすれ、キレられる筋合いはない。

 2人が仲良しの傍ら、俺はぼんやりと昨日のあの着物の少女のことを思い浮かべる。

 「また、会いてぇなぁ・・」

毎日16:00頃、更新しています。

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