三津傘ヨコオは絶望する。
最初は、ひとりだけだった。
一番仲のよかった友達が、僕のことを無視し始めたんだ。
でも、それだけだった。
それだけで終わると思ってた。
だんだん、僕を無視する人数が増えてきた。
最終的には、クラスの全員が、僕のことをいないものとして扱うようになっていた。
このクラスに、僕の居場所は無くなった。
だから僕は教室を飛び出て、屋上に向かった。
この学校の屋上は、誰でも、いつでも、自由に出入り出来るようになっている。
フェンスなんて物も付いていない。
生徒がいつでも飛び降りられるようにと、先生達の配慮だそうだ。
僕は屋上の縁に立って、空を見た。
青くて綺麗な空だった。
「君、死ぬのー?」
後ろから声をかけられた。
失礼な、僕はここから飛び降りるだけだ。
振り返ると、真稚貝ナオが立っていた。
クラスは違うが、学校内で唯一髪を金髪に染めていて目立つ奴だから、僕も名前は知っている。
「死なないよ」
僕は無愛想に答えて、また空を見た。
さっきよりも、少し曇った気がする。
「そっかー、そうだよねー、だって君――」
真稚貝はにやけた声でまだ何か喋っていたけど、僕はそれ以上聞く気が無かったので飛び降りた。
空がどんどん遠ざかる。
空がどんどん青くなる。
最後にこんな綺麗な空を見れるなんて、幸せだ。
だけど、それでも――
それでも僕らは絶望する。