実家一人暮らしのはずが…。
「じゃあしばらく家をよろしくな、1年くらいしたら一回家戻ってくるし。」
「つーくん、あんまり散らかさないようにね?ご飯もしっかり食べるんやで?」
「ああ、気ぃ付けてな」
朝方の4時に夏といえど肌寒さ感じながら、両親が世界旅行に旅立つため家の玄関で最後の挨拶を交わす。
つーくんとは俺のことで本名は谷村嗣。
いーかげん19歳になったんやからこの呼び方は勘弁してほしいわ、母さん。
そんなこんな別れの挨拶が終わると両親はフェラーリに乗って颯爽に家を出て行った。
「今日から念願の一人暮らしか…めっちゃ楽しみや!」
この事を聞いたのは、昨日の夜のことや。
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「は!?」
昨日の18時頃家族で夕飯を食べてたら、親父が急にアホなことを言い出した。
「いや、だからな?もうお前の孫まで面倒見れるほど金が貯まったから陶芸やめて世界旅行に行ってくるゆーてんねん。」
父親は代々続く谷村陶器の7代目当主で陶芸界ではかなりの有名人や…この世界では谷村祥明って名前を知らんもんはいいひん。
全体的に陶器が売れんようになったんがここ10年ぐらいからやけど親父の陶器はここ数年注文が止まらんほど人気なんや。
まあなんせ早いし上手いし資産価値あるしまぁまぁ安いし、売れんわけがない。
まぁなんつってもこの資産価値というのが大きい。
親父の陶器は値段が下がらんどころか上がるものまである。
「そらそうやろうけど…。てか急すぎや、弟子の櫻子さんとたんまり溜まってる注文はどうすんねん!」
「櫻子ちゃんは俺がおらんくてもやっていけるし大丈夫や!このまま残ってもらってもいいし自立するのもいいし、あの子に任せるわ!
…まぁ、自立はせんやろうけどな。」
「注文のことはもう大丈夫や、5年先の注文も全部キャンセルしたし。」
適当すぎるわ親父…。
「いや、櫻子さんは師匠の親父がおらんかったらここにいる意味はないやろ、強いて言うたらうちに居たら安い値段で土が買えるってぐらいやし」
「ほんまお前はわかってへんな…まあええわ、櫻子ちゃんも大変やなー」
「何がやねん…こんないい加減な師匠もったことが難儀やわ…」
親父が何か俺に問題があるみたくゆーてくるのがマジでうざかった…。